『バイオハザード RE:4』レビュー:伝説のTPSが失ったホラー性を取り戻す神リメイク

リメイクであっても、やはり伝説の神ゲーは神ゲーだった……! それが、『バイオハザード RE:4』をプレイしての感想だ。結論から言ってしまえば、正直オススメなので「バイオハザード」シリーズのファンはもちろん、ホラーゲームファンは「買い」の一作だと思う。

神ゲー『バイオハザード4』を神リメイクするという偉業

『バイオハザード RE:4』は、『バイオハザード4』をリメイクしたサバイバルホラーゲーム。「バイオハザード」シリーズの最新作であるとともに、リメイクシリーズである『RE』シリーズの最新作でもある。

ところで、先ほど絶賛しておいてなんなんだが、筆者は本作にさほど期待をしていなかった。というのも本作が単なるシリーズ作のリメイクではなく、他でもない『バイオハザード4』のリメイク作だから。『バイオハザード4』はまごうことなき神ゲー、しかも歴史に名を残すレベルの超神ゲーだ。

(画像は『バイオハザード4』Nintendo Switch版)

「バイオハザード」シリーズ通してのファンならご存知とは思うが、最近シリーズに触れた人だと『バイオハザード4』未経験という人もいるかもしれない。なので『バイオハザード4』の何がそこまで凄いのか改めて説明しておこう。

『バイオハザード4』はそれまでのシリーズのシステムを大きく改変した。4までの「バイオハザード」シリーズのシステムは、一言でいえば「アイテム残量を管理しながらマップを探索するゲーム」といえる。

(画像は『バイオハザード HDリマスター』PS4版)

まず、敵を攻撃するための銃弾や回復用のハーブなどの獲得個数が制限されていて、無限に手に入るわけではない。なので銃弾や回復用のハーブの残量を常に確認し、今使うべきなのかどうか判断することになる。

一方で、「銃弾を使う」と判断して敵を攻撃した場合、基本的にその攻撃はヒットする。敵を上手く倒すテクニックより、アイテムを使うかどうかの判断の比重が重いのだ。

また、持ち歩けるアイテムの個数も制限されていたため、シナリオで必要となるアイテムを的確に持っていないと無駄なマップ移動が発生してしまう。マップ移動が増えればその分敵との接触回数も増えるので、銃弾や回復用のハーブを消費するリスクがアップ。この「アイテムを無駄に使えない」「アイテムを無駄に持てない」「マップを無駄に移動できない」という要素が恐怖をより高めていたのだ。

(画像は『バイオハザード4』Nintendo Switch版)

これに対して『バイオハザード4』は180°真逆と言える大きな変更を行った。銃弾や回復用のハーブなどの獲得個数を増やすことで、敵を倒すべきかどうかという判断を撤廃。無限ではないものの銃弾は手に入るのだから、敵を見たら倒せばいい。

ただし『バイオハザード4』では上手く狙わないと敵に銃弾が当たらない。一方で、的確に敵の急所を狙うことで「体術」というより強力な追撃を入れることができる。それまでのシリーズとは逆に、『バイオハザード4』では上手く倒すテクニックが重要なのだ。

(画像は『バイオハザード4』Nintendo Switch版)

そして、武器・銃弾・回復アイテムとシナリオ進行に必要なアイテムとを分けることで、マップの行き戻りをなくした。シナリオ進行に必要なアイテムは一度手に入れさえすれば持ち続けているかたちなので、取りに戻る必要はない。

こうした変更により『バイオハザード4』は、「敵と戦いながらマップを前へ進み続けるゲーム」となった。この『バイオハザード4』のゲームシステムが、現在の「TPS(サードパーソンシューティング)」の基礎を定着させたといっても過言でない。だからこそ『バイオハザード4』は、単なる神ゲーではなく、歴史に名を残すレベルの神ゲーといえるのだ。

このため筆者は、期待よりも不安の方が強かった。ここまでの神ゲーだと、ちょっとやそっとのリメイクだと逆に魅力を削いでしまうのではないか?

(画像は『バイオハザード RE:2』)

もちろん、「RE」シリーズのリメイクのクオリティは高い。だが、そうはいっても「RE」シリーズでリメイクされてきたのは、『バイオハザード2』や『バイオハザード3』といった初代プレイステーション世代の作品。粗く、カクカクしたゾンビが現代のリアルグラフィックでリメイクされるのだから、インパクトも強かった。

(画像は『バイオハザード4』Nintendo Switch版)

かたや『バイオハザード4』はゲームキューブ世代。現代のグラフィックと比べたらもちろんクオリティが低いと感じてしまうだろうが、それでも、今でも十分プレイできる品質。実際、『バイオハザード4』は2021年時点でVR機向け新作としてVR対応のものがリリースされている。

こうしたことからすると、『バイオハザード4』をリメイクしたとしても「ちょっとグラフィックがよくなっただけで、あまり変化のない作品」になってしまうのではないか? どうせリメイクするのなら、やっぱり初代『バイオハザード』の方がいいのでは……?

……な~んてことを思っていたのだが、まことに申し訳ありませんでした! 見事な神リメイク! 『バイオハザード RE:4』のチームは、神ゲーを再び降臨させる偉業を成し遂げた。

『バイオハザード4』をアクションからホラーへと帰還させた『バイオハザード RE:4』

リメイク作なので当然といえば当然かも知れないが、『バイオハザード RE:4』の基本的なゲーム内容は『バイオハザード4』を踏襲している。主人公は新人警察官からエージェントとなったレオン・S・ケネディ。何者かによって拉致された大統領の娘、アシュリー・グラハムを奪還すべく、ヨーロッパ辺境の村を訪れる。

敵として登場するのは、もちろんゾンビ……ではなく、「プラーガ」という寄生生物によって肉体を乗っ取られた人間「ガナード」。「ガナード」の外見は一見通常の人間同様。ゾンビと比較して知性を持っており、武器を投げたり火薬を扱ったりすることができる。

こうした「ガナード」たちと戦いつつ村の探索を進めていくわけだが、元となった『バイオハザード4』がそうであったように本作も、探索よりも戦闘がメイン。マップ的に同じ場所を訪れることもあるのだが、基本的に敵を倒しながら目的地へと進んでいけば必要なアイテムが手に入り、ストーリーも進行していく。ではリメイクにあたって変わった点はどこかというと、アクションに「ナイフパリィ」や「ステルスキル」が追加された。

「ナイフパリィ」は、敵の攻撃に合わせてタイミングよくボタンを押すことで敵の攻撃を弾き返せるというもの。敵の攻撃を弾き返すだけならある程度タイミングがズレていてもOK。ただジャストタイミングであれば、敵の攻撃を弾き返した上でひるませることまで可能。

「ステルスキル」は、背後からのナイフによる一撃で、敵を即死させられるというもの。ただし、敵に気づかれないよう背後まで接近しなければならない。

これら2つの新アクションはいずれもナイフと絡んでいるが、ナイフにも新要素として耐久力が追加されている。耐久力がゼロになるとナイフは壊れ、修理するか新たなナイフを手に入れるまで使えなくなってしまう。

さて、ここまで本作の新要素について書いてきたが、人によっては「新要素といっても、これまでのバイオハザードや別のホラーゲームでも似たような要素あったじゃん」と思うかもしれない。確かに「ナイフパリィ」は、『バイオハザード リベレーションズ』や『バイオハザード RE:3』の回避の延長線上にあるものと言えなくもないし、「ステルスキル」は『THE LAST OF US』や『サイコブレイク』などモダンなサバイバルホラーゲームで取り入れられている。ナイフの耐久度についても、『バイオハザード RE:2』で取り入れられていた。

じゃあ『バイオハザード RE:4』の新要素は既視感のあるものなのかというと、それは違う。筆者は本作をプレイして、今回のリメイクが『バイオハザード4』をアクションからホラーへと帰還させるための試みのように感じた。そしてこの「アクションからホラーへと帰還」という観点で見た時、「ナイフパリィ」「ステルスキル」「ナイフの耐久度」「REエンジンによるリアルなグラフィック」という要素がひとつに噛み合ってくるのだ。

「アクションからホラーへと帰還? 何を言ってんだ、『バイオハザード4』はもともとホラーじゃないか」と思わせたかもしれない。しかし『バイオハザード4』がアクション性を高めたことで、代わりに恐怖が薄まっていることはシリーズファンなら認識しているはず。

(画像は『バイオハザード4』Nintendo Switch版)

冒頭で記した通り、『バイオハザード4』以前は敵を倒すのか回避するのか悩む構成だったため、敵の脅威が大きかった。目の前のゾンビを銃で倒すことはできるが、でも倒すと銃弾不足でボスに負けるかもしれない……そんな不安感が、恐怖へと繋がっていたのだ。

しかし『バイオハザード4』では、「ガナード」が出てきたら倒していい。逆にいえば「ガナード」はプレイヤーによって倒されるために出てくる。プレイヤーはそれだけの強さを持っているので、その分恐怖感が軽減しているのだ。

これに対し本作は、戦闘における失敗のリスクを高めることで恐怖を増幅させてみせた。「ナイフパリィ」や「ステルスキル」はプレイヤーにとって有利にはたらく要素だが、一方で「ナイフパリィ」はタイミングをミスするかもしれないという不安感が、「ステルスキル」には接近中に敵が振り向くかもしれないという不安感がつきまとう。と同時にナイフの耐久度によって、「ナイフパリィ」や「ステルスキル」に頼りすぎるとナイフが使えなくなる……という不安感も生まれている。

こうしたシステム的な構造によって今作の「ガナード」は『バイオハザード4』のそれよりも確実に怖い。そして、これらの要素を繋ぎ合わせているのが「REエンジンによるリアルなグラフィック」だ。

グラフィックがリアルなら、よりリアルにクリーチャーを描くことができる。クリーチャーがリアルならより怖い……確かにそれはそれでひとつの事実だが、本作の場合クリーチャーよりもバイオレンス描写がリアルな点に注目したい。

筆者が本作で最初にバイオレンスを感じたのは、冒頭、村に向かう途中で見るハエのたかった牛の死体だ。ハエのたかりかたの過剰さ、そして牛の死体の損壊具合はグロさと同時に容赦のない暴力性を放っているように感じた。

次に感じたのはゲームオーバー時、レオンに対してガナードが斧をふるう描写。斧が深く深く突き刺さるのはレオンの顔面。カメラアングルによってダイレクトには描かれていないが、顔に斧が深く突き刺さるというのはショッキングだ。

一方で、レオン側の「ナイフパリィ」や「ステルスキル」も暴力性が強い。なにせ、初期状態の「ガナード」は見てくれが普通の人間なので、普通の人間をナイフで刺殺しているように見えるのだ。

こうしたバイオレンス表現を踏まえると、今回新要素で「ナイフ」という要素にスポットを当てているのも頷ける。殺傷力の強さという意味では銃やらロケットランチャーやらといった兵器の方が上だが、暴力性という観点で見ると、「ナイフ」の方がより暴力的と感じるのではないだろうか。なぜなら、「ナイフ」は自らの手で直接的に相手に刺さなければならないからだ。

もちろん、世の中には「ナイフ」がメイン武器というゲームはたくさんある。それらがすべて暴力的な恐怖を感じさせるわけではない。ではなぜ本作が肌で感じられるほどの圧倒的なバイオレンスを実現できたのかといえば、「REエンジンによるリアルなグラフィック」があるからだろう。

『バイオハザード4』はそれまでのシリーズのシステムから大きくシステムを変えることで、TPSのお手本となる歴史的なアクションゲームを作ってみせた。本作は『バイオハザード4』が持っていたアクションの楽しさはそのままに、「ナイフパリィ」「ステルスキル」「ナイフの耐久度」「REエンジンによるリアルなグラフィック」によって、かつて失った「恐怖」を追加。結果として、アクションと恐怖を併せ持つ神サバイバルホラーが生まれた……と筆者は感じている。

これまでまかれた種が花開いた! ファンなら絶対買いなシリーズ集大成

また、見方を変えると本作はこれまでのシリーズの集大成ともいえる。基本的なゲームシステムは『バイオハザード4』、ゲームエンジンはREエンジン、そして『バイオハザード リベレーションズ』や『バイオハザード RE:3』の回避システムの発展形といえる「ナイフパリィ」。この「ナイフパリィ」と「ステルスキル」を合わせて「ナイフの耐久度」というかたちで落とし込んだことについては、『バイオハザード RE:2』からの進化といえる。

そして、REエンジンを使用したバイオレンス的な恐怖という点では、『バイオハザード7 レジデント イービル』のジャック・ベイカーや『バイオハザードヴィレッジ』のライカンといった表現を洗練させたものと見ることができるだろう。こうした各要素を見ると、『バイオハザード4』でまかれた種がシリーズを経て『バイオハザード RE:4』で開花したようにも見える。

そういう意味でシリーズの集大成としての表現が味わえる、非常に完成度の高い作品なので、ホラーゲーム好きなら確実に楽しめることは間違いないが、「バイオハザード」ファンなら逃す手はない。「絶対買い」と断言できる一本だ。

文/田中一広

ガジェット通信ゲーム班

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