ケンティに包まれる列車でSexy Trip(辛酸なめ子)

都心と成田国際空港を結ぶ京成スカイライナー。成田エクスプレス、アクセス特急、高速バスなど、成田空港に行くにはいくつか交通手段がありますが、女性として一番テンションが高まるのは今の時期、京成スカイライナー一択です。

「京成王子」こと、Sexy Zoneの中島健人さんをモチーフにした特別装飾車両「KENTY SKYLINER」が運行中です。先日、成田の先で取材する用事があったので、ずっと乗ってみたかった「KENTY SKYLINER」に乗車してみました。

青砥駅で待機していると、車両前面に王子様の冠と「KENTY SKYLINER」という文字が金色に刻印された、格調高い列車が入ってきました。側面にもケンティーのご尊顔や「お客様は、お姫様」という明朝体のキャッチコピーなどがプリント。

乗ろうとしたら、青砥停車時はドアが一部しか開かないことになっていて、遠く離れた8号車までダッシュする羽目に。途中でよろけても、「京成スカイライナー」のCMのようにケンティーがお姫様抱っこしてくれるはずはなく……。ただ自力で駅員のおじさん目指してホームを走って乗り込みました。

予約した席に座ろうとすると、予約なしで乗ってきた女性客が勝手に私の席に座っている、というハプニングが。王子様にたどり着く前には関門が多いです。

「KENTY SKYLINER」の特別仕様は、シートカバーに「KENTY SKYLINER」とプリントされているのがまず気品が漂っていて素敵です。

さらに前の席の背面に、ケンティが敬礼する写真が貼ってあり、車内のところどころにポスターが掲示されていました。モニターには繰り返し、ケンティ出演のCMが流れています。

車内でくつろいでいたら、普通の女性の声で「この電車はスカイライナー成田空港行きです。次は、空港第2ビルです」というアナウンスがありました。続いて外国人の声で「Next stop is…Thank you for your cooperation」というメッセージが。「Sexy Thank you」じゃないんだ……と内心残念がっていたら、ついにきました。ケンティのアナウンスが!

「ご利用ありがとうございます。京成王子こと、中島健人です。KENTY SKYLINERにご乗車のお姫様、これから始まる旅に備えて、車内でゆったりくつろいでね。もし眠ったら、夢の中で僕に会えるかも。本日は KENTY SKYLINERをご利用くださいまして、Sexy Thank you!」

「夢の中で!?」と、ときめいていたら、余韻に浸る間もなく数秒後に「本日は京成スカイライナーをご利用いただきありがとうございました。成田空港は9時7分の到着です」と車掌の太い声のアナウンスが……。「これより車掌が車内に参ります」と予告があり、ケンティが回ってきてくれるかも? と一瞬妄想しましたが、普通の堅実そうな車掌さんでした。

空港に近付くにつれ、スピードアップしてゆれが激しめになってきましたが、KENTY SKYLINERのロゴ入りシートがバックハグのように支えてくれて安心感が。

そして成田空港に停まる前にもケンティーのアナウンスが流れました。「ご利用、ありがとうございます。京成王子こと中島健人です。お姫様、ご乗車、お疲れ様でした。身の回りの手荷物と、KENTY SKYLINERでの思い出は車内に忘れないように、気をつけて。本日は、KENTY SKYLINERをご利用くださいまして、Sexy Thank you!」

また「Sexy Thank you!」いただきました。続いて英語と中国語のアナウンスと、車掌の最後の駅到着を告げる声が。ケンティのあとだと妙にイケオジVOICEに聞こえてきます。

KENTY SKYLINERを降りたあと、飛行機に乗るわけでもなく、空港の電光掲示板などを眺めました。デンパサール、ホノルル、パリ、ソウル、ロサンゼルスなど、異国の行き先が並んでいます。今、海外に行くと円安や燃油サーチャージの高騰、陰性証明などで莫大な金額がかかってしまいます……。都内と成田の行き来のSexy Tripでお姫様気分になれる体験が、現実逃避的に最もコスパが高いかもしれません。本当に大切なものはいつだって近くにあるのです……。

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト。東京生まれ、埼玉育ち。雑誌や新聞、ウェブなどに寄稿。 近著に「愛すべき音大生の生態」(PHP)「スピリチュアル系のトリセツ」(平凡社)、「電車のおじさん」(小学館)、「無心セラピー」(双葉社)、「新・人間関係のルール」(光文社新書)、「女子校礼讃」「辛酸なめ子の独断!流行大全」(中公新書ラクレ)など。