もうすぐクリスマス。世界的に有名な、聖ニコラウスの残滓とも言える大妖怪サンタクロースが皆様の御宅に現れる日も近付いて来ました。しかし海外の妖怪にばかり気を取られていると、我らが日本の妖怪に足元を掬われかねません。そこで、クリスマスを迎える前に、もう一度要注意妖怪をおさらいしておきましょう。
火消婆(ひけしばばあ)
※上部画像。
クリスマスにケーキを食べる方も多いかと思います。せっかくケーキを買ったなら、どうしてもローソクを立てたくなるものです。そんな時、誰も息を吹きかけていないのに火が消えたーーそんな経験はありませんか? 正体はご存知火消婆。火消婆の息は、かなりの遠距離からも届き、かつ壁などもすり抜けてきます。これに対処するには、何よりも早期発見が大事。ローソクに火を灯す前に、必ず窓の外を見回して下さい。近場だけでなく、ビルの窓などにも目を凝らした方が確実です。また、火消婆は「陰」の気を好み、「陽」の気を嫌います。「陽」の気を無くすべく、火消婆は沸きます。故にクリスマスなどのおめでたい席でのローソクは特に狙われやすいのです。これを逆手に取り、暗い色の炎を灯すローソクに変える、という対処法も効果的です。
煙々羅(えんえんら)
妖怪サンタクロースを迎え入れるにあたり、古い習慣に倣い煙突を利用しようと思っている方も多いでしょう。けれども一度ご自宅の煙突をチェックしてみて下さい。煙々羅が住み着いてはいませんか?煙々羅は珍しい煙の妖怪ですが、忙しく配送作業に就いているサンタクロースも日本の妖怪が住み着いている煙突などからは入りたくないでしょう。対処法としては、単純にクリスマスの夜は煙が出るような事を避けるだけで効果があります。どうしてもそういうわけにもいかない方は、なるべく煙の出ない燃料を使用すると良いかも知れません。
鈴彦姫(すずひこひめ)
煌びやかで、賑やかなクリスマス。普段聞かない様々な喧騒に、心もうきうきしてきますよね。そんな街中で、もしかしたら鈴彦姫を目撃するかも知れません。ベルの音に紛れて解りにくいかも知れませんが、鈴彦姫を目撃してしまったらラッキーと思いましょう。鈴彦姫は害があるわけでもなく、むしろ神様を呼ぶ役目を担っている妖怪ですから、サンタクロースを呼んでいるかも知れないのです。日本の妖怪が、海外の妖怪とコラボレーション。クリスマスにしか見られない、とても貴重なシーンなのです。間違っても退治しようなどとは思わないでくださいね。
濡女(ぬれおんな)
最後の妖怪は濡女。これはクリスマスに限らず、年末になるとよく起きる『妖怪のフライング』現象です。去年末も、フライングした龍が中国で何匹も目撃されたようです。そして来年の干支は巳。細かく言えば癸巳(みずのとみ)です。この干支から予想し、水に塗れた蛇の妖怪である濡れ女がフライングして姿を現すのではないかと思われます。目撃した方は、優しく「ちょっとまだ早いですよ」と教えてあげると来年の運気も上昇するかも知れません。
――まだまだ細かく書けば注意すべき妖怪は沢山いますが、最低限上記の妖怪達を頭に入れておけばクリスマスは楽しく過ごせるでしょう。しっかりと国内の妖怪にも注意した上で、一年に一度しか訪れない大妖怪サンタクロースを迎え入れましょう。
※画像上から、鳥山石燕『今昔画図続百鬼』より「火消婆」、鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より「煙々羅」、鳥山石燕『百器徒然袋』より「鈴彦姫」、佐脇嵩之『百怪図巻』より「ぬれ女」。