『アベンジャーズ』の女性スタントパフォーマーはハリウッドでどんなキャリアを思い描く? 映画『スタントウーマン』ハイディ・マニーメイカーインタビュー

  by 藤本 洋輔  Tags :  

Netflixほかで配信中の映画『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』は、ハリウッドをはじめとした様々な作品の中での活躍が際立つスタントパーソンの中でも、女性である“スタントウーマン”の存在に焦点を当てたドキュメンタリー映画だ。本作では、『トゥルーライズ』『ワイルド・スピード』『マトリックス リローデッド』といった作品に出演してきた女性スタントパフォーマーたちが最前線で活躍する姿を映し出すだけでなく、1960年代から男性中心のハリウッドで地位や権利を守るために戦ってきた歴史も語られている。製作総指揮・ナビゲーターを務めるのは、『ワイルド・スピード』シリーズなどで知られるミシェル・ロドリゲス。メガホンを、エイプリル・ライト監督がメガホンをとっている。

ガジェット通信では、本作に登場する数多くの“スタントウーマン”の中でも、『アベンジャーズ』シリーズなどでスカーレット・ヨハンソンのスタントダブル(吹き替え)を担当するなど、スタントパフォーマーとして第一線で活躍中のハイディ・マニーメイカーへメールインタビューを実施。パフォーマーとしての考えだけでなく、スタントコーディネーターやハリウッドでのキャリアについても語ってもらった。

――本作をご覧になっての感想を教えてください。

いつも出演している映画を観た時と似たような感覚です。実際に観るまでは監督や編集者がどのようにストーリーを伝えるのかわからないので、仕上がりを観るのはいつもちょっとしたサプライズです。

――これまでスタントを行った中で、最も苦労した作品は何ですか?

映画でも話している、『ザ・ホスト 美しき侵略者』での車の中で回転するスタントです。車両をひっくり返して、4回転させました。

『ザ・ホスト 美しき侵略者』カースタントシーン(YouTube)

――最もお気に入りの作品のアクションシーンは?

ザック・スナイダー監督の『エンジェル・ウォーズ』のシーンです。私は日本刀と、漢字とアニメのキャラクターが刻まれた鉄砲を巧みに操っていました。戦闘シーンはまるで私がアニメのキャラクターになったみたいで、とてもお気に入りです!

――スタントパフォーマーを志したきっかけは何だったのでしょう?

昔から運動が好きで、演じることも好きでした。いくつかの映画とテレビでスタントの仕事をする機会があり、それからはこの仕事の虜になりました。

――スタントを行う中で、つねに心がけていることは何ですか?

つねにファーストテイクで、完璧で正確なスタントや動作ができるように集中しています。なぜなら、時には自分が納得いくまでテイクを重ねられないこともあるからです。

――映画では、女性スタントパフォーマーが地位を確立するまでの歴史が描かれています。実際に、環境の変化は感じていますか? まだ課題があるとすれば、教えてください。

確実に、女性スタントパフォーマーが映画で活躍する機会は増えていると思います。私はつねにベストを尽くすことを心がけていますが、それは「自分にとってのベストを尽くす」ということであって、女性であることは関係ありません。しかし、この作品のような映画が、より多くの機会を切り開くための意識を高めることに役立っていると、強く思います。

――劇中では、スタントダブル(※俳優と同じルックでアクションを演じるスタントパフォーマー)について語られていますね。スタントダブルの仕事で重要だと思うことを教えてください。

スタントダブルは、アクション映画を作るうえで非常に重要な存在です。スタントダブルなしでは、俳優が怪我をして撮影が止まってしまうリスクを負うことになります。スタントダブルとは、俳優が役を演じる上で必ずしも持ち合わせていない技術=身体的なパフォーマンスを行うことができる“アスリート”だと私は考えています。

――本作では、男性が女性のスタントダブルを演じていた過去についても描かれていますね。

私は単に、当時はそれが当たり前のやり方だったんだと捉えています。私たち女性パフォーマーも男性同様に肉体を酷使したスタントができると証明するまで、随分と時間がかかりましたから。でも、今では男性以上にタフな女性スタントパフォーマーが沢山いますよ。

――多くのスタントウーマンを雇用した作品として『ゴーストバスターズ』(2016)と、その監督のポール・フェイグさんが登場しています。彼のような監督は多いのでしょうか?

はい。私が出演した作品の監督は、みな彼の様に(スタントウーマンに)協力的で、とても働きやすい人たちばかりです。

――コーディネーターの仕事を進めるうえでは、何を重要視されているのでしょうか?

何よりも安全が優先事項です。私がコーディネーターの仕事で好きなのは、パフォーマーたちに素晴らしい仕事を与えられるだけではなく、同業者のスキルを向上させる機会も与えられているからです。

――デヴィッド・リーチ(『デッドプール2』監督など)さんや、チャド・スタエルスキ(『ジョン・ウィック』シリーズ監督など)さん、サム・ハーグレイヴ(『タイラー・レイク -命の奪還-』監督など)さんのように、スタントパフォーマーからコーディネーターを経て、監督としても活躍する方が増えてきたように思います。彼らのようなキャリアを目指していらっしゃるのでしょうか?

もちろんです! 絶対に私も同じようなキャリアを積みたいと思っています。

――デビー・エヴァンスさんらベテランのスタントパフォーマーが、女性にとってスタントコーディネーターやアクション監督、あるいは2ndユニット監督になることの困難さを語っています。最近では『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でモニーク・ガンダートンさんがMCU初の女性スタントコーディネーターとして注目されましたが、彼女も機会に恵まれるには時間がかかるとおっしゃっていました。

そうですね。私世代より前の女性はそうだったと思います。この映画にも出演しているエヴァンス姉妹(デビー・エヴァンス、ドナ・エヴァンス)も実際そうだったと思いますが、彼女たちが扉を開け、私たちの世代に道を切り拓いてくれました。本当に彼女たちには感謝しています。

――日本では、まだまだスタントパフォーマーの権利がきちんと認められているとは言えません。つい最近まで労災保険も適用されない状況でした(※2021年4月1日から適用)。エンドロールに名前がクレジットされないケースもあります。こうした日本の状況について、どう思われますか? 

スタントパフォーマーは、アクション映画を制作するうえで、中心的存在であるべきと信じていますし、タフで謙虚で、仕事に対して忠実であるべきだとも考えています。ですが、労災保険は絶対に認められるべきだし、素晴らしいアクション映画を作るための重要な役割を担っていることは、もっと認識されるべきだと思います。

――最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

私は日本の大ファンです!!!! いつか日本を訪れる日を待ちきれません。私のインスピレーションの元になっているものの、いくつかは日本映画なんですよ。『るろうに剣心』とアニメの『アップルシード』、この2作品の影響を受けて、謙虚でいながら完璧であることをいつも目指しています。本当に感謝しています。

『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』はNetflixほかにて配信中。

【動画】映画『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』マニーメイカー姉妹本編映像
https://www.youtube.com/watch?v=q4LzLMcsiXQ

映画『スタントウーマン ハリウッドの知られざるヒーローたち』
(2020/アメリカ/84分)
原題:STUNTWOMEN THE UNTOLD HOLLYWOOD STORY
監督:エイプリル・ライト 製作総指揮:ミシェル・ロドリゲス
日本語字幕:岡田壯平
配給:イオンエンターテイメント 配給協力:REGENTS
公式ホームページ:http://stuntwomen-movie.com/
(C)STUNTWOMEN THE DOCUMENTARY LLC 2020

大阪生まれ京都育ち。映画館→アニメ映画制作会社→レンタルビデオショップ→WEB編集・ライター。アクション映画が専門分野。趣味はボルダリングとパルクール(休止中)。TRASH-UP!!( http://www.trash-up.com/ )などで主にアクション作品を紹介しています。ほか、SPICE( http://spice.eplus.jp/spicers/45/articles )でも。 執筆・などのご依頼は [email protected]

ウェブサイト: https://goo.gl/Apqatq https://goo.gl/dmUvAA

Twitter: @fujimonpro