「みんな、我慢しようぜ!」 Charが45周年ライブでコロナ禍生き抜く誓い

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今年デビュー45周年を迎えたCharが、4月10日にライブ「〜Char 45th anniversary concert #1〜 SHININ’ YOU SHININ’ DAY」を東京・日比谷野外音楽堂にて開催した。

1976年のデビュー以来、日本ロックギタリスト界のトップを走り続けているChar。本来であれば45周年を記念した全国ツアーを行う予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響でほとんどの公演がキャンセルとなってしまう。そんな中、「思い入れのある日比谷野音でどうしても音楽を届けたい」というChar本人の強い意向によって本公演が実現した。以下、このステージの模様をレポートする。

ほぼ定刻通りにCharとバンドメンバーがステージに姿を現すと、客席は大きな拍手でこれを迎え入れる。バーガンディミストのストラトキャスターを抱えたCharは、開口一番「ただいま!」と挨拶。かと思えばすぐさま「寒いね」と愚痴をこぼして笑いを誘い、「寒いし、最初から立つ?」と客席を気遣ってみせる。「その言葉を待ってました」とばかりに次々と立ち上がるオーディエンスを横目に、バンドはさっそく演奏をスタートさせた。

澤田浩史(B)、小島良喜(Key)、ZAX(Dr)との4人のみで鳴らされるソリッドなアンサンブルによって、まず『空模様のかげんが悪くなる前に』『かげろう』と、1stアルバム『Char』からのナンバーが立て続けに投下される。これらミディアムテンポのファンキーなポップナンバーが、あいにくの曇り空となった会場をリラックスした雰囲気に包み込んだ。続く3曲目も初期の楽曲から、シャッフルビートのブギーナンバー『TOKYO NIGHT』。イントロではブルースハープも交えつつ、終盤では歌詞の「Tokyo」を「Hibiya」に変えて歌う一幕も。「やっぱ日比谷はいいっすね!」と笑顔を見せるCharは、客席が温まってきたのを感じたのか「座ってください」と着席を促すも、すかさず「立っててもいいけど」と笑わせた。

ほとんどの聴衆が席に着くと、バンドは軽快なテイストの『スタイリスト』『YOU』、ファンキーなミディアムチューン『GACHA GACHA』を披露。その後、ライブは怒濤のPSYCHEDELIXナンバー連発ゾーンへ突入する。ジミ・ヘンドリックスのフレイバーをふんだんに香らせる『I’M HERE FOR YOU』に続き、ハーフタイムシャッフルのカッティングが心地よいグルーヴィーな『DAZED』では、日が沈み始めたタイミングに合わせてミラーボールによる演出も展開された。

あたりが次第に暗くなっていく中、次に届けられたのがメロウなインストナンバー『ENDLESS DREAM』だ。小島のピアノソロおよびCharのギターソロによる長尺のインプロビゼーションも交えながら、夕方は少しずつ、しかし確実に夜へと姿を変えていく。そしてオクターバーの掛かったギターが緊迫感のあるフレーズを奏で始めると、PSYCHEDELIXのインスト曲『BIEHMEN SIE SCHNELL』へと続いた。ヘビーな3連系ビートに乗せてアーミングを駆使した流麗な旋律が奏でられる、ジェフ・ベックを彷彿とさせるような鬼気迫る1曲だ。

さらにバンドは畳み掛けるように、これまたPSYCHEDELIXのブルースロックナンバー『STAND』をプレイ。とっぷりと暮れた夜空の下に真っ赤な照明が映え、サイケデリックな空間が形成される。続けてPINK CLOUDのハードロックナンバー『DRIVE ME NUTS』が始まると、いつの間にか客席は再び総立ちとなっていた。マスク着用で声の出せないオーディエンスたちは、会場を屋外ダンスフロアと化すことで熱狂を表現するほかない。

本編ラストに選ばれたのは、またしてもPSYCHEDELIXのナンバーである『RAINBOW SHOES』だ。虹色のライトがステージを照らし、エキゾチックな音階で構成されるインスト曲を華やかに彩っていく。スリリングなユニゾンプレイを多く含むこの1曲を演奏し終えると、Charはわざと震えるような声でステージ上の寒さをコミカルに強調しながらメンバー紹介を行い、ステージをあとにした。

アンコールに応えてバンドが再登場すると、Char名義の初期楽曲から『SHININ’ YOU SHININ’ DAY』『ICE CREAM』『SMOKY』と定番の人気ナンバーを惜しげもなく連発。彼の代名詞とも言うべき小気味よいカッティングと、絶妙なドライブサウンドによるリードプレイを存分に堪能した客席は猛然と拍手を贈る。するとCharは「もうちょっと行きますか? やっと温まってきた」と告げ、ジミ・ヘンドリックスの『Purple Haze』と自身の楽曲『からまわり』をメドレーで披露。曲中にジェフ・ベックの『Freeway Jam』を挟むアレンジで客席を狂喜させると、間髪入れずにPSYCHEDELIX『LIVIN’ IN TOKYO』へとなだれ込む。曲ラストでは『Tokyo city』という歌詞を「コロナシティ」に変えて歌い、「みんな我慢しようぜ! このコロナシティ、生きのびるぜ!」と力強いメッセージを発してみせた。

最後にCharは、ルイズルイス加部やティム・ボガート、ポール・ジャクソンら親交の深いベースプレイヤーたちが近年続けざまにこの世を去ってしまったことに触れ、「すべてのベーシストに敬意を込めて」と前置きしてからハービー・ハンコックの『Chameleon』をカバー。約2時間のステージに幕を下ろした。自身の45周年については言葉上まったく触れることなく終わったものの、セットリストや演奏によってそれを示すというミュージシャンシップあふれる記念ライブとなった。

なお、このライブの模様は現在FAVERにてアーカイブ配信が行われており、4月13日23時59分まで何度でも視聴可能となっている(配信URL:https://faver.tv/live/show/9)。視聴チケットは同日21時まで販売中だ。

(文/ナカニシキュウ、撮影/三浦麻旅子)

Char オフィシャルサイト
https://top.zicca.net

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