
ニューヨークの街は未だコロナ禍から立ち直っていないと感じる。それはコロナ下で閉業したレストランの店舗がそのままであることだ。また、レストランに限らず、またコロナ禍とも関係なく ”時代遅れ的なビジネス” の店舗もポツリポツリ『閉店セール』の張り紙を出す。
我が家の近所で長い年月営業をしていたカードショップが閉業した。カードショップはカードだけ扱うのではなく、雑貨やギフト商品、お土産物もあるので、それなりの顧客は確保できていたが、このカードショップの閉業はマンハッタンのミッドタウンでもかなり多く、逆に生き残った店舗が思い出せない程だ。
それでもアメリカはカード文化が残っている。今やカードを使用する人たちはドラッグストアーの一角にあるカード売り場で買い求める。これはなんとも寂しいことだが、自分自身に置き換えてもカード自体を買わなくなった。以前なら友人の誕生日にはカードを選ぶこと自体も楽しかったが、カードの需要が減ったせいカード自体がかなり高く、カード一枚に日本円で千円近くもするし、ちょっと気の利いたものであれば更に高くなる。これじゃ、追い打ちをかけてカード文化は廃るわけだ。
考えてみればカードショップの衰退と共に郵便局も数は確実に減ってきている。以前は公共料金の支払いは小切手を郵送がお決まりだったが、今や銀行自動引き落としや、また、ポイントの溜まるクレジットカードの自動決済が主流なので、郵便自体を使う回数が激減している。これもまた寂しいハナシである。
かつては郵便局員は安定した仕事だったのに、郵便局が閉鎖されたり、郵便配達員のリストラ等で郵便事業の雲行きも怪しい。かつての郵便局は順番待ちが長かった。今も確かに長いが、窓口の局員の数がその分減らされているので、なんとも心もとない局員数の窓口対応である。
ところで店舗を失うホールマークのビジネスを憂いて、ホームページを検索してみて多少の安心があった。
Cards
Home & Gifts
Ornaments
Wrap & Bags
Personalized
当たり前と言えば当たり前だけど、オンラインでの販売は健在でビジネスは勿論続行中だが、かつてあれだけあったカードショップが見事になくなり、春たけなわの今、秋風を感じるようだ。
ホールマークの衰退について検索してみると、意外なニュースを見つけた。それは1994年に宇宙飛行士だったニール・アームストロングに、氏に許可なく名言の使用をしたとのことだ。
ニール・アームストロングは1994年、ホールマーク・カード社が彼の名前と「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ」という名言の録音を許可なくクリスマスオーナメントに使用したとして訴訟を起こした。この訴訟は示談で和解し、アームストロングはそれをパデュー大学に寄付した。この事件をきっかけに、アームストロングとNASAは宇宙飛行士の名前、写真、録音の使用、そして誰に許可を与えたかについて、より慎重になるようになった。非営利団体や政府の公共広告については、通常は許可を与えていた。
こういう詰めの甘さは約30年前のこととしても恥ずかしい。2007年には、後に和解はしたもののパリス・ヒルトンにも訴訟を起こされた。こちらもパリス・ヒルトンに許可なく彼女の流行らせた『That’s hot』をカードに使用したためだ。
まぁ、企業として有名人から訴訟を起こされるのは残念なことだったが、それにしても2025年現在、ホールマークの店舗を調べてみるとマンハッタンには一店舗もなく、隣のニュージャージー州には20店舗程見つけられた。しかし、なんとも侘しいカードビジネスの現状である。