松尾諭インタビュー「これは20代を経て退化していった男たちが、もう1回戻ったような映画です(笑)」映画『ヤウンペを探せ!』

  by ときたたかし  Tags :  

池内博之さん、宮川大輔さん、池田鉄洋さん、松尾諭さん、そしてヒロインの蓮佛美沙子さんなど、豪華キャストで贈るスラップスティック・コメディ『ヤウンペを探せ!』が公開になります。その「ヤウンペ」を探して哀愁漂うおっさんたちが奔走するストーリーですが、そもそもその「ヤウンペ」とは!?アタマの中が“はてな”で始まるかのような不思議な作品ですが、出演した松尾諭さんに本作についてうかがいました。

■ストーリー

売れない俳優のキンヤ(池内博之)、さえない中華レストラン店長のジュンペイ(宮川大輔)、教員試験を万年浪人中のタロウ(池田鉄洋)、ラブホオーナーのアッキー(松尾諭)の4人は、かつで大学で一緒に8mm映画を作っていた仲間。

さえない毎日を送っていた4人は、学生時代のいきつけの焼肉屋で、 20年前に作った映画のヒロイン・みさと(蓮佛美沙子)と再会。彼女が欲しがる「ヤウンペ」探しに、奔走することになるが・・・。

●この「ヤウンペって何?」から始まる一風変わった映画ですよね。

自分でも「ん?」ってなったことは覚えています。でも、難しく考える作品ではなくて、「ヤウンペって何?」ってなったんですけど、後から「そういうことか!」となったので、後は映画を観てください(笑)。

●宮川さんをはじめ、共演者の方々との姿を観ていると、どこか懐かしくもあり、これは観る人に伝わると思いました。

楽しかったです。息が合ったということとはまた違って、カメラ回ってない時もバカ話ばっかりしていて。カメラが回ってもその延長で、スッと世界に入っていけたのは、たぶんこの4人だったからだと思いますね。

●あの4人組は、世の中でよく見る風景というか、人間関係ですよね。

そうですね。監督の細かい説明はなかったのですが、その代わりおバカな設定はけっこうありました。肉を焼いていた煙が池田さんのほうばかりにいってしまうとか(笑)。でも、バカだなって思いつつも、ないことはないというか。すごくヘンな世界観でヘンな人たちばかりではあるけれど、意外にヘンだけでもない。説明難しいのですが、そんな気がしました。

●映画では主人公の2時間の成長神話がありがちですが、人間言うほど簡単に成長はしないはずなので、こういう映画のほうがリアルですよね。

僕にはわからないですけど、ただ、これは20代を経て、だんだん退化していった男たちが、もう1回戻ったような映画なんですよね(笑)。何をもって進化したか退化したかは議論がありますが、元に戻ったのか、その過程が成長だったのか、その期間が大事だったのか、それは人それぞれ歩んできた人生によって違うことでもありますが、僕は昔に戻ったことで何かを取り戻したような男たちの映画だと思っています。

●いずれにしても、どこか羨ましい関係性にも見えました。

僕も羨ましい関係だと思いました。生きていると辛いことも多いですが、40歳過ぎて集まってバカやって、これはちょっと羨ましいなって。だから撮影中、僕自身も楽しかったんですよ。セリフをちゃんと覚えて、ちゃんと芝居をしているのですが、各々が役を通じて何かを感じ取っていました。そこには40代のストレスと楽しさが共存していたと思うのですが、それがちょっと体感できたので楽しかったのだと思います。

●ストレス、ですか?

40歳を過ぎるとストレスがいろいろとあると思うんです。おそらく20代はストレスを感じていないだけで、とにかくバカなことをやっていたけれど、今だったら感じちゃうじゃないですか。だからあの時みたいにバカなことはできないなってなるけれど、にも関わらずあの4人は集まってしまうとバカなことができちゃう。

歳を取ると、ストレスのほうばかりに目が行きがちですが、アホなほうに目が行けば意外にストレスのほうはなんとでもなるかって。そうなかなかうまくいかないとは思いますが、そういうことを具現化している映画なのかなって思いました。そういう真面目な映画じゃないんですけど(笑)!

●この映画は、そういう意味付けをしたくなると思いました(笑)

本来であれば「これはこういう映画です!」なんて言いたくないんですよね(笑)。僕らおっさんが気づくこともあれば、それぞれの年代の方が気づくことがあるかもしれない。女性が観たら、蓮佛美沙子さんに共感するかもしれない。それが映画の楽しみだと思うんです。なので観ている人に、スーっとしみ込んでいけばいいなって思っています。

公開中

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo