文字ラジオ『ゆりがたり』第三回・ブラッディ・ロマンスの射手 結野ちり

  by 小雨  Tags :  

百合の作品は限定された場所だけの存在でなく様々な媒体を通じて手に入るようになりました。
漫画、小説に限らず、演劇や音楽、ゲームやアニメーションなど、多くの場所で私たちはそれを見出すことができます。

一方、SNSだけでは、広大な百合関連の作品の情報から発信者のメッセージを隅々まで拾い上げることが困難です。

また、読み手は、多くの話題作に紛れて、『自分にみあった百合』を見逃してしまっている可能性もあります。
『もう少し、届けたい』『もう少し、知りたい』。『ゆりがたり』は、百合の創り手と受け取り手の『もう少し』をつなげるために生まれたシンプルなインタビューマガジンです。

とりとめなく話す雰囲気を伝えるためにwebマガジンではなく『文字ラジオ』と称することにしました。

どうぞ、よろしくお願いします。

☆この記事はnoteに掲載していた記事の再掲です。

☆最初に『スカーレット』を見て思ったのが「絵がきれい」なんですよね。美しい、画力がずばぬけているじゃないですか。漫画家さんにとっては基本的なことで伝えづらい点かなあと思っていたんですがSNS上で、もっと言ってくれていいのよと仰っていたので。
「ああー! 書きました」

☆それを見て「あ、言っていいんだ」って思ったんです。実際絵がすごい綺麗だと思って。
「そう言っていただけると本当にある意味話を褒めていただけるよりも嬉しいんですよ。絵にわりとコンプレックスっぽいものがあったので。絵に色気が足りないとか。結構なんとか見てもらえるようにもってこれたので。そう言ってもらえると安心して描けます」

☆そうなんですか。色気が足りないとは感じないです。
「ありがとうございます。少女漫画的な絵などに惹かれる部分があるのでそう言っていただけるのは嬉しいです」

☆『スカーレット』は画力の高さがずば抜けているなと感じて、…後から元は青年向けの漫画を描いていたと知り、なるほど、と。『百合姫』でここまでの画力の方が出てくるんだ、と驚きもひとつあったんです。
「本当にありがとうございます」

☆びっくりしたんです。“君臨”と感じました。
「本当に『百合姫』がすごい大好きで、コダマナオコ先生とかサブロウタ先生とか未幡先生とかみんな大好きなんですけど『百合姫』で描くつもりは最初はなかったんです。もともと『ヤングガンガン』や『ドラゴンエイジ』で読みきりの形式で描いていたので、そこでそのまま描いていくんだろうなと思ってたんですが、ありがたいことに『百合姫』さんから連載のオファーをいただきましてよかったなと思います」

☆私の場合、結野先生の作品は『百合姫』ありきで知ったのでそこの情報は遅かったんですが、もともと百合が好きだったんだと伝わってくる部分がありました。『スカーレット』は設定が凝っていると思いまして、一話ずつ伺いたいんですが…インタビュー前の事前確認で一話の見所はアイリスとフィーネの契約シーン、最初に浮かんだ場面と伺いました。
「そうですね。二人の関係ありきで始まったので屋敷が燃え盛って人が血まみれのなかで、二人で命をかけて誓う場面なんですね」

☆切迫していて命がけで言ってしまえば重いかもしれないんですけれども、そこから始まるのはいいなと。この話は連載の第一話ですが、それ以前から百合に関する短編を描かれていてそれが第一話にいい感じであらわれていると感じたんです。短編だとそこで終わるところが、そこから始まるのでここからどうやって二人は生きていくんだろうと感じて。フィーネがすごく好きで。アイリスも好きなんですけれど女性でフィーネ好きな人多いと思うんです。
「そういうイメージをしていました。フィーネは『男装の麗人』というか…『赤ずきんの殺し方』を『ヤングガンガン』の担当さんとつくったんですが宝塚のようなかっこいい女性にしてみようと…戦える女性というか力のある女性が好きなので」

☆『赤ずきんの殺し方』の頃から男装の麗人っぽくしようとモデルが固まっていたんですね。
「『赤ずきんの殺し方』以外にもう一個未発表のお話があって、フィーネとアイリスがそこでも主人公なんですがそこでもう固まっていましたね」

☆なるほど…。アイリスが先にできたのかなと思ったんです。赤ずきんが好きとおっしゃっていたのでその好みが先にきているのかなと。
「その通りです。先にできたのがアイリスで相方を考えていったときにフィーネが生まれた。最初に考えるときにとにかく百合を描こうと思って赤ずきんを出して。メルヘンな雰囲気だけでは足りないから薬物要素を出したりと、その過程で生まれたのがフィーネなのかなと。戦える象徴としての女性です」

☆アイリスありきのフィーネなんですね。
「最初は狼が赤ずきんを食べるというところが最初に決まっていて、そのヒロインを補完する形でうまれたのかなと…今思いました

☆今思ったんですか(笑) 童話をモチーフにした百合は一時期短編で出ていたり、自分もたまにモチーフにすることがあるんですが、赤ずきんに特に惹かれる理由はあったのでしょうか? 白雪姫や人魚姫など、童話のお姫様はたくさんいるじゃないですか。
「それはですね。人魚姫とかヘンデルとグレーテルは設定が強固な気がするんです。もとから完成されている。赤ずきんも当然完成されてはいるんですけれど想像する余地が残されている気がするんです。赤ずきんと狼とおばあちゃんがいれば、いろんな想像する余地があるかなと」

☆ 言われてみれば出てくる登場人物が少なくて関係性がかっちり決まっている。けれど演出のしがいがあるといえばありますね。

スカーレット/アイリスとフィーネの旅路

第一話~第五話についてそれぞれの回の場面的な見所を事前に伺いました。事前に送らせて頂いたインタビューシートの回答とあわせて掲載します。

☆一話の見所

「アイリスフィーネの契約シーン。今作を始めるにあたり最初に浮かんだ場面です。ただ、設定が多い分構成に手間取ってしまい、第一話の難しさを痛感しました」【インタビューシートより】

☆第一話について設定が多い分構成に手間取るというのが、わかるなと…自分も未熟なんですが最初の一話って難しいのかなと。
「作り手さんはわかるんですね。最初はアイリスと狼って出さないつもりだったんですよ。アイリスは謎の少女としてフィーネにつき従うというのを考えていたんですけど、一話からアイリスの正体を出した方がいいんじゃないかと担当さんのアドバイスをもらってこういう形に。今となっては最初から明かしてよかったと思います。まとめるのがやっぱり難しかったですね」

☆第一話でアイリスはこういう子でフィーネはこういう子で、過去にこういうことがあってという流れを一話でおさめるのは情報量が多く大変なのかなと思います。
「一話のなかで過去と現在を行ったり来たりするというのは本来避けたいんですよね」

☆回想場面はなるべく避けたいという話はよくありますね。
「漫画だとへたをするととっちらかったイメージになってしまうことがあるので…大変でしたね」

☆ ちゃんと第一話でこういう二人がいてこういう町に着いて、かわいそうなお姉さんと女の子がいて。最初のうちから回想が入ってくるのは情報量が多いんですがきれいにおさまっていると思います。個人的には二人の日課の場面が…。えっ? 日課? 日課ってこれなの? と。どきどきする日課が一番印象に残っているので… 
「ともするとシュールな笑いになってしまうんです」

☆日課とは何かというシュールな笑いに(笑)
「そんな、そこまでするのっていう」

☆吸うなら普通に吸えばいいじゃないかと(笑) いやでもやっぱりここは毎日、こう…毎日吸ってほしいですね。私個人はここが印象に残っていますし。そうなんだ、そういう二人なんだ、と…。契約の場面もぐっときました。

☆二話の見所

「 アイリスがフィーネの暴走を止めるシーン。今作のハイライトだと思います」【インタビューシートより】

☆今作のハイライトと伺いましたが、二話で急展開というか…。結野先生が単行本のあとがきでこの話浮くよと仰っていたようにダークでハードな展開になっていきますよね。
「そうですね。アイリスがフィーネの暴走をとめるシーンが、今作の耽美的な見せ場としても一番で。ここまでが本当は一話までの予定だったんです」

☆あ! なるほど。ここまで詰め込む予定だったけれども二話に及んでいるという。
「そうですね。やっぱり詰め切れなかったなというか…」

☆ そういうことはありますね…。二話のラストの方に裸の女の人にいっぱい囲まれて、だんだん段階を踏んで過激になっていく…。フィーネが悩んでいるんだなと、苦しみが出てくるとともに、それに対するアイリスの女王様な統制っぷりが出てきますね…。ここで出てくるモイラという監視官が好きでして。
「ありがとうございます」

☆アイリスとフィーネの過激な二人に対しヴァイオレンスな感じなのかなと思ったら、かわいい子が出てきて…いいな、と。
「一番まともな人間なんですよね。一番女の子らしい、見た目ありきというか。最初マスコットな感じで描いたんですがだんだんキャラクターとしても自我を探す子として重要なキャラクターになります」

☆アイリスとの駆け引き感が出てきていて気になるんですが、展開を楽しみにしています。二話でアイリスとフィーネの関係性が強調されて、色気がある。扉絵もすごく好きです。
「ありがとうございます」

☆二話の扉絵ですが、絵がうまいです。この構図…空間をうまく使って立体感がありうまいなあと。かわいらしさとかも。きちっとした絵できちんと扉を飾る始まりで…もちろん絵がうまい方はたくさんいらっしゃるんですけれども何かが違うなあと二話の扉で感じました。日常の一幕だと思うんですが、扉絵ひとつで二人の関係性も表情も出ているしかわいいと思いました。
「扉絵は一番力をいれるところではあるんですよ。一枚に二日くらいかける勢いで描いて。クオリティーの話をすると、なかなか全ページに全力投球できないのが歯がゆいところで。もともと描くのがそんなに早くないんですけれど理想だけは一丁前に高いので。『ドラゴンエイジ』に描いた読みきりに一ヶ月以上かけて描いているので、なかなかその読みきりレベルに描けないのが歯がゆいところではあるんです」

☆月刊ですもんね。そんな不安を抱えているなんて…。
「絵にはいつも不安を抱えているのでうまいなと言ってもらえると救われます」

☆ 変な話なんですけど、漫画は結局絵を見るもので絵がうまいとか綺麗って重要な要素だと思っているんです。シンプルな言い方ですが得した気分になりますし、同じ漫画でも綺麗に越したことはない。描き込みが伝わってきます。『スカーレット』を通じて百合を描いていただいている、そこまでこだわっている。やっぱり理想があるんだなと伝わります。

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結野ちり先生:作品リスト
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