「ファッションだけでなくライフスタイルの映画であると同時にビジネスの映画でもある」映画『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』監督インタビュー

  by ときたたかし  Tags :  

ファッションブランド「ピエール・カルダン」を築き上げ、98歳の今も現役で活躍するレジェンドの、スキャンダラスな天才デザイナーのチャーミングな素顔と輝かしいレガシーを鮮やかに描いた映画、『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』が公開になりました。本作の監督をしたP.デビッド・エバーソールさん、トッド・ヒューズさんにオンラインで取材をしたところ、波乱万丈でカラフルな人生を謳歌しているピエール・カルダンさんの言動には<気づき>があることがわかりました。楽しく生きたいすべての贈るドキュメンタリーについて、いろいろお話をうかがいました。

●ピエール・カルダンさんについての作品ということで興味深く拝見しましたが、たとえばレストラン「マキシム・ド・パリ」の買収劇などすごく面白かったです!

P.デビッド・エバーソール:僕たちも彼がオーナーだということは知っていたけれど、まさかバックストーリーがあったとはね(笑)!しかも彼は嬉々として説明するから、聞いていてもすごく面白かったよ。

トッド・ヒューズ:初めて彼と会った場所も店の喫茶のエリアで、それも運命的だよね!

●ほかに驚いたエピソードはありますか?

P.デビッド・エバーソール:実は僕たちも詳しくはカルダンさんのことは知らなかった。もちろんデザインのファンではあったけれども、そのバックストーリーや『美女と野獣』の衣装を作っていたとか、エピソードが多いよね。

トッド・ヒューズ:ジャンヌ・モローとの恋愛も知らなかった!ランウェイでファッションショーのモデルさんたちにもダイバーシティーをもたらしたことも知らなかった。

P.デビッド・エバーソール:なんて最高の人だろうと思ったよ。さまざまなことを成し遂げた人だから、彼のデザイナーとしての成功は表面的なことにすぎないよね。

●今回の映画は、どういう経緯で制作が決まったのですか?

P.デビッド・エバーソール:いろいろな人たちの協力を得ながらカルダンさんに会うことになったのだけれど、その時点でカルダンさんにはドキュメンタリーを撮る人たちというこが伝わっていたので、すでにご本人も自分のドキュメンタリーを撮るものだと思っていた。

トッド・ヒューズ:実際にお会いしたら「いつから?どういう風に撮る?」と聞かれて、僕たちは目を合わせて「映画を作ることになっているようだね」ってうなずいたよ(笑)。

P.デビッド・エバーソール:帰り道はシャンゼリゼを踊りながら帰ったよね!!

●奇跡のような展開ですね!

P.デビッド・エバーソール:本当にそのとおりさ!まさにカルダンっぽい始まり方でね。彼は自分が好きなことを追っていくタイプなので、そこからすべてが始まるのさ!

●ご本人はもう完成した映画を観ていますか?

トッド・ヒューズ:僕たちもすごくナーバスになっていたよ。初めて彼の作品を撮ることになって。撮影当時97歳、現在98歳でやり直しが効くお年ではないのでね。最初マキシムで作品を観ていたそうだけれど、連絡が来て「すごく気に入った!全部真実だ!」と言ってくれた。ベネチアで去年の9月にプレミアをした際も一緒に来てくださって、すごくスリリングだったよ。彼は来ているゲストに「この作品を愛している。よく計算され、アーティスティックだし、全部真実だよ!」とおっしゃってくださって、これはもう、アカデミー賞をもらうよりもうれしかったよ。

●今回、同じクリエーターとして、ピエール・カルダンさんから得た最大の学びはなんでしょうか?

トッド・ヒューズ:賞味切れはない、ということかな。人はキャリアをいくつから始めてもいいし、明日から学んでもいいけれど、とにかくまず始めなければいけない。カルダンさんの哲学はアイデアが浮かんだら「やらない理由がないじゃないか!」ということ。それで失敗しても、別なアイデアを形にすればいいだけだからね。

P.デビッド・エバーソール:劇中で本人が言っているけれど、永遠の命の秘訣は「仕事、仕事、仕事、そしてハッピーでいること!」これかな(笑)。

●今日はありがとうございました!日本の映画ファンにメッセージをお願いいたします!

トッド・ヒューズ:これはファッションだけの映画ではないということだね。映画を観た人の中には、「素晴らしい人物だ!」と言ってくれる人が多くてね。あとは日本のマーケティングのセンス、「ライフ・イズ・カラフル!」というタイトルが、ファッションだけではないことをきちんと伝えているよね。

フランスだと有名で誰もが知っているからストレートなキャンペーンをしていたそうだけれど、アメリカでは40歳以下はまったく彼を知らないそうだ。90年代以降、アメリカでは活動を展開していないからね。だからポップで楽しい宣伝を展開しているそうだよ。

P.デビッド・エバーソール:彼は優秀なビジネスマンであることが、映画を観ているとよくわかると思う。ビジネスをサクセスする例としても、すごく興味深いのではないかな。だから世界では、ビジネス系の媒体にすごく取り上げられることが多いよね。デザインだけでなくライフスタイルの映画であると同時にビジネスの映画でもある。そこもポイントだよ。

公開中

『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』
Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開!
(C)House of Cardin – The Ebersole Hughes Company
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:colorful-cardin.com

監督:P.デビッド・エバーソール&トッド・ヒューズ
出演:ピエール・カルダン、ジャン=ポール・ゴルチエ、シャロン・ストーン、ナオミ・キャンベル、森英恵、高田賢三、桂由美

2019年/アメリカ・フランス/101分/ビスタ/5.1ch/原題:HOUSE OF CARDIN /日本語字幕:古田由紀子/後援:在日フランス大使館 アンスティチュ・フランセ日本/提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo