夏帆インタビュー「この作品は近年の三木聡作品とは一味違う」 オムニバス映画「緊急事態宣言」

  by ときたたかし  Tags :  

日本を代表する映画人たちが“緊急事態”をテーマに自由な発想で挑戦したオムニバス映画、「緊急事態宣言」がAmazon Prime Videoにて独占配信中です。その中の一編、『ボトルメール』に主演した夏帆さんにインタビュー。本作は三木聡監督による最新作でもあり、夏帆さん演じる不倫で芸能界を干された女優が、コロナ禍のとある日オーディションを受け、数奇な運命に巻き込まれていくというお話。「この不条理な笑いがわたしはすごく好きなタイプの作品でした」と語る夏帆さんに、かつては脱力系とも評された三木作品の魅力、現在の心境などについてうかがいました。

●とらえどころのない不思議な味わいでしたが、完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

わかるようなわからないようなというところもあったりはしつつ(笑)、この不条理な笑いがわたしはすごく好きなタイプの作品でした。ご覧になられる方がどんな反応をされるのか、気になるところでもあります。

●コメディーかと思ったら、ホラー要素もあり、多面的な作品ですね。

そうなんですよね。三木聡監督なので全体的に笑いが散りばめられてはいるのですが、ホラーなのかなんなのか、不思議な後味が残りますよね。そこに今の映画界の現状が垣間見れたりして、なんとも言葉にいい表せない作品になったのではないかと思います。こんな三木さんの作品を観たかった!と試写が終わったあとに、うれしくなりました。

●三木監督はギャグも多いですが、現場でひらめいて足されたりもあるのでしょうか?

基本的に台本通りです。セリフもすべてそのままですね。撮影前に監督も「台本通りに撮り進めていきます」とおっしゃっていましたが、ちょっとした仕草や動きなどは、現場で付け足されることもありました。

●バナナのシーンがすごく面白かったですが、個人的に気に入っているシーンはありますか?

ふせさんや長野さんとの共演シーンはとても印象に残っています。おふたりが登場する、最初のオーディションのシーンのインパクトは今でも忘れられません(笑)。おふたりのやりとりを見てるだけでも面白くて、ずっと現場でニヤニヤしていました。

●ふせえりさんは三木組の常連ですが、今回もブッ飛んでいましたね!

三木組でのふせさんをずっと観てきていたので、まさかふせさんとお芝居ができるなんて!と内心とても興奮していました(笑)。初日はひとりのシーンが多く、2日目からふせさんや、長野さん、麻生さんといった三木組の常連の方たちがいらっしゃって、とても心強かったのを覚えています。なにより、みなさんの中に自分も入ることができたのが、とてもうれしかったですし、これぞ三木組だと、舞い上がる気持ちを抑えながら、お芝居していました(笑)。

●不倫で干された女優役だから生活にも追われていて、リアルな生活感も見事に表現されていましたが、演じる上で心がけていることは?

役柄によっても変わってくるというか、生活感が要らない場合ももちろんあるんです。ただ、役に合わせて生活の匂いがちゃんとするお芝居ができるようになりたいと、常にそこを目指しています。具体的に何を意識しているのかというのは、言葉に言い表すのは難しいのですが、たとえば、相手の台詞をきちんと聞いて反応する、など、ごく基本的なことですが、忘れないように心がけています。

●コロナ禍を経て、みなさんエンタメの役割について自問自答することもあったかと思いますが、その点はいかがですか?

ステイホーム期間中は、家で映画を観ていたり、そこにすごく救われたこともあり、改めてすごくやりがいがある仕事だなと思いました。日々状況が変化していくので、今はっきりと何か答えみたいなものは簡単には出せないと思うのですが、自分にできることを探していきたいと思います。

●最後になりますが、三木作品の魅力について改めて教えてください。

三木さんにしか作れない世界観のなかで、出演されている役者さんたちが生き生きしていて、とてもチャーミングですよね。自分もこの世界観の中に身を置いてみたいとずっと思っていました。この『ボトルメール』は近年の三木作品とは一味違うものになってると思います。ぜひご覧いただけたらうれしいです!

■作品名:緊急事態宣言
■配信情報:Amazon Prime Videoにて独占配信中
■コピーライト表記:(C) 2020 Transformer, Inc.

Amazon Prime Video:www.amazon.co.jp/primevideo
オフィシャルTwitter:@KINKYU_JITAI

ときたたかし

映画とディズニー・パークスが専門のフリーライター。「映画生活(現:ぴあ映画生活)」の初代編集長を経て、現在は年間延べ250人ほどの俳優・監督へのインタビューと、世界のディズニーリゾートを追いかける日々。主な出演作として故・水野晴郎氏がライフワークとしていた反戦娯楽作『シベリア超特急5』(05)(本人役、“大滝功”名義でクレジット)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)など。instagram→@takashi.tokita_tokyo