どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
あなたは、「給与ファクタリング」という新たな融資をご存知でしょうか?
新型コロナウイルス感染症で給与が下がってしまった会社勤めのサラリーマンたちが、こぞって金を借りにくると言われている金融の新形態が給与ファクタリングです。
今回は、最近問題視されているこの給与ファクタリングについて、綴っていこうと思います。
給与を売却するというシステム
給料ファクタリングというのは、まさに文字通り“勤務先から受け取っている給料”をファクタリング(※)を行っている会社に売り払い、給料日前に現金化してくれるサービスだといいます。
※ファクタリング/factoring:売掛債権買取の意味。もともとは入金待ちの請求書など(債権)を一足先に第三者が買い取る行為を指す。元の金額からは手数料が引かれる。
数多くある中小企業から高評価を得たファクタリングという形態を“会社員個人へ向けたサービス”として採用したシステムであり、最短即日融資24時間対応できるというファクタリングの会社も現われました。
企業向けファクタリングは、債権自体を売却してしまう“売買契約”であるために、借金が残らないというメリットがありますが、それとは違い、給与の一部を“手数料”として、ファクタリング会社に支払うことになるので、満額の給料を受け取ることができないというデメリットがあります。
給与ファクタリングの常習的利用は危険
ファクタリングというのは、企業間や企業と個人間での“売掛金”や“未収金”などの債権を、ファクタリング会社に売却してしまうことで資金調達する方法になります。
ですからファクタリングは、そもそもビジネスでの資金調達の手段のひとつとして利用されてきたわけです。
融資とはいえないので、無審査のうえに最速で即日に現金が手に入る画期的資金調達の方法といえるのですが、本来入金されるべき資金が80%から90%に減少するので、より一層、資金不足を招いてしまう危険性をはらんでいます。
給与ファクタリングは、給与がどんどん減ってしまうので、常習的に利用すると生活資金の破綻を招く危険性があるということ。非常にリスクが高いのです。
給与ファクタリングが広まった要因
一般的にいち早く現金を手にする方法として、銀行やカードローン、クレジットカード、消費者金融などのキャッシングがあります。しかしなぜ、給与ファクタリングは流行したのか。
それは、給与ファクタリングは“金融ブラックでも利用することができる”現金入手の抜け道として活用できるからです。給与ファクタリングというものの認知度を上げたのは、皮肉なことにテレビや新聞報道などでの《現代の闇金融、給料ファクタリングとは!?》という暗いニュースによるものだったのです。
給与ファクタリングが問題視されるのはなぜか?
“現代の闇金融”という烙印を押された給与ファクタリングは、元々から違法業者が多いという問題があります。
闇金融が下火になり、カード現金化闇金や質屋闇金など様々な手口を編み出し、細々と生き延びてきた闇金融業者。この給与ファクタリングは、彼らが考え出した次の一手だといわれているんですね。
ですから、いわゆる“悪徳業者”が多く暗躍しており、給料の譲渡自体には違法性はないのですが、ファクタリング会社の強引な取立てや利息上限を上回る手数料が、栄華を極めていたころの闇金融の手口と酷似しているために過剰に叩かれているわけです。
最近では相場よりも相当高い手数料を悪徳業者に騙し取られているケースも多くあります。すべての会社が悪質なことをしているわけではありませんが、業界全体のイメージがグレーという風潮があります。
金融庁はどのように捉えているのか?
数多くの批判や企業間でのファクタリングへの風評被害を訴えた日本ファクタリング業界は、金融庁に“違法性の照会”をしました。しかし、令和2年3月24日東京地裁は、給与ファクタリングは貸金業法にあたり、出資法違反で契約は無効。刑事事件の対象に判決が言い渡されたのです。
金融庁は、現時点では取り締まりの法律はないが、給与ファクタリングは手形割引と同じで、本来貸金業の登録が必要な業態という風に解釈しています。貸金業登録が必要になるということは、給与ファクタリングを行う業者は闇金融業者と同じと捉えられ、違法性があるということになります。
あまり利用しない方が身のため
給与ファクタリングは、給料をもらっている労働者であれば誰でも簡単に利用できるという、一見便利なサービス。しかし貸金業法に抵触する可能性を秘めているため、今後は事業者に行政から指導が入るかもしれないグレーな存在です。
現状では貸金業者として正式登録を受けていないファクタリング会社が、違法な取立てや高額の手数料を取っている事実がありますし、中にはファクタリング会社に給与引き渡しが遅延したことによって、会社に取り立ての電話が入ってしまったという事例もあります。
あなたがどうしてもお金が必要になった場合は、まずは<大手銀行 → 地方銀行・信金 → カードローン・クレジットカード → 消費者金融系カードローン>という順番で金融機関を利用して、給与ファクタリングを利用するのは控えた方がよさそうです。
(C)写真AC