“袖の下”は必ず取り立てる! 「葬儀リベート回収業」の実態

  by 丸野裕行  Tags :  

※注意:本記事は取材に基づいた内容となっておりますため、取材対象者の見解はそのまま掲載しています。すべての葬儀社がこのようなことを行っているわけではありません。

どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。

人は必ず死にます。そのときにお世話にならざるを得ないのが葬儀会社。葬儀の仕事には厳粛かつ神聖なイメージが伴います。

その業務内容と言えば、葬儀の進行はもちろんのこと、花の仕入れや営業、祭壇設営、祭壇回収、接客など多岐に渡り、日中深夜に関わらず亡くなった方の家に向かい、遺族にはすべきことのタスクフローを説明しつつ、遺体には腐敗が進まないようにドライアイスをあてがったり……あらゆるケアに目が回るほどの忙しさです。

今回話を聞けたのは、関西某県の葬儀社に勤める鎌田忍氏(仮名/48歳)。彼は35万円の月給をもらう一方で、葬儀業界に根付いた《割り戻し=リベート》をネタに取引業者を徹底的に追い込み、毎月50万円ほどの副収入を得ていると言います。

長年、葬儀業界に染みついたリベート回収とは、果たしてどんなものでしょうか。

その男は元債権取り立て屋

丸野(以下、丸)「葬儀社に入社したキッカケはどのようなものだったのですか?」

鎌田氏「昔から弱い者イジメが好きやったんや。それで街金に入って、債権回収の仕事をはじめた。元々悪かったから地元のヤクザに可愛がられてて、工業高校卒業後に“ウチの会社来い”って言われて……。えらい楽しかったよ、ホンマに。相手をビビらせ倒して、気持ちよかったわ。でも、貸金規制法が厳しくなって、街金もヤミ金もやりにくくなってもて。葬儀社に入ったのは、知り合いから紹介された遺品整理のバイトをはじめて、そこに葬儀屋がいたんや。で、“これ、ご家族の方からです”って封筒渡されてな。中身見たら6千円入ってる。“なんか中途半端な額やな~”と思ってたら、葬儀屋が4千円ピンハネしとった。“こりゃおいしいで!”と思って、その『花清(仮名)』って葬儀社に入社したんや。人手不足もあったから、即入社できたね」

丸「ほほう、なるほどなるほど」

鎌田氏「初めは大変やったよ。憶えることが山ほどあって。葬儀の作法や手順、宗派(仏式、神式、キリスト教)の違い、祭壇設営の搬入作業などなど。それに葬祭ホールの関係者や同業者にも顔を覚えてもらわないとあかんし。だんだんと仕事に関わっていって祭壇のスロープ飾りなんかを手伝うようになってくると、オアシス(剣山代わりに使うスポンジ)に花を生けるフラワーアレンジメントの勉強もある。で、そのうちに商売のことも理解できるようになってきたんや」

仕事を回してほしければ袖の下を寄こすのが道理

丸「どういった点ですか?」

鎌田氏「まずは病院へのフォローやね。どこの病院で誰が死んだっていう情報を早急に取って、家族に営業をかけないとイカンから。なんとなくテリトリーみたいなものもあって、A病院ならB葬儀社が担当、C病院はD葬儀社が……なんていうのは当たり前。もっと細かいところなら、ひとつの病院で病棟ごとに振り分けられている場合もあるわな。指をくわえて見てるわけにはイカンから、日頃から医事課長やら事務長と良好な関係をつくっておかないとあかんわけやね。早い話が“袖の下”が一番力を持つのよ

丸「どんなものを贈るんですか?」

鎌田氏「ウチ指定の総合病院の場合なら看護士長が一番チカラを持っているから、しょっちゅう商品券やら海外旅行やらでご機嫌取りしてるよ。他の葬儀社なんか外車を贈ったこともあるって話やわ」

丸「ええっ、外車ですか?!

鎌田氏「やっぱり情報が命やから、危ないって連絡が入ったら、病院に急行して、すぐに家族にセールストークやね。茫然自失になってるから、“最後の親孝行ですから、やっぱり”と契約をもぎ取る。葬儀ってのは《人間の最後の催し》になるから、家族はできるだけ派手にしてやりたいわけよ。今の時代、葬儀の規模も値段も下がってきてるからちょっと困るけどね。数年前は、通夜と本葬で200万円、香典返しのギフトやら仏壇、墓石で400万からの金が平気で動いてた

丸「でしょうね。ウチも父親が亡くなったとき、結構なお金が動きました

鎌田氏「ここで重要なんが、オレらが病院に貢物をするように取引先の業者から袖の下がくるわけよ。“仕事回してほしけりゃ、誠意見せろ”ってことやわな。仕出し屋、ギフト屋、貸布団屋、貸衣装屋、仏壇屋、墓石屋、坊主、霊園、寺なんかがその対象になってくるわけ。リベート率は、お客が使った金の平均10%~15%、最大で20%持ってこさせてる

リベートを渡さない貸し布団屋を廃業に追い込む

丸「全部ですか」

鎌田氏「そう全部。仕出し屋は原価が高いからそないに絞めつけへんけど、墓石屋なんて原価ゼロで輸送費くらいやん。そこらに転がってる石に名前彫って100万円、200万円取るんやから、最低でも15%はもらわんと

丸「もし言うことを聞かなかったり、リベートを持ってこなかったりすれば、どうされるんですか?

鎌田氏「潰すよ

丸「ええっ!?

鎌田氏「リベート誤魔化したり、約束を守らなかったら容赦せんよ、オレは。本当にいくらで売ったのかはちょっと調べればわかる。お客のご機嫌伺いで、領収書を見せてもらってもええしね。古参者がタチ悪いわ、実際。一度“リベートは出せん”と言った貸し布団業者がおったな。“昨日今日入った若造が! 他にも長い付き合いをしている!”って言い出して。貸し布団屋なんて、ゴミみたいなせんべい布団を洗って干して、また貸し出すだけのつまらん仕事やんか。汚したら汚したで、“買い取れ”ってゴネるし。そうやし、マチ針とか縫い針を運ばれてきた布団に仕込んだった。通夜の晩に布団を借りたお客の体に突き刺さったんやて

丸「ヒドいですね。ヒドすぎるでしょ

鎌田氏「そのあとは布団屋は廃業。ジジイを殴りつけてきっちりリベートを取り立てたった(笑)。その他には、一番大きいのは《お布施》や。あいつら、実体のない金を当たり前みたいに請求してるんやから、20%のリベートはもらわなな。でも、知られていないかもしれんけど、寺と葬儀屋は犬猿の仲。中には“お布施の割り戻しは宗教弾圧だ”なんていう住職もおる。親しそうに話していても、実は不仲でクソ坊主なんて尊敬なんてしていないわ

丸「そうなんですね」

鎌田氏「ウチが以前に使っていた坊主は最悪で、お客に勝手に営業かけて、《院号》(一般の戒名とは違い、年功を積んだ修練者に与える称号)をつけおる。それだけで通常の戒名の5倍くらいの値段がかかる。1ヵ月の院号販売利益で400万~500万くらい儲かるわけや。そいつもリベート渡さんかったから、“この寺、よう燃えまっせ”と言って、張り倒してやったわ。心づけを総本山に寄進せずにキャバクラ通いしてた坊主やったから、“総本山にチンコロ(密告)するど!”って脅したら、他の会社にも溜まってたリベート支払いおったわ

丸「めちゃくちゃだ

いかがでしたか?

僕も話を聞いているうちに「鎌田氏は特別とはいえ、これが弔事を取り仕切る者がやることか」と思ってしまいました。

今回のインタビューは、その過激さに正直背筋が寒くなりました。

(C)写真AC
※写真はイメージです

丸野裕行

丸野裕行(まるのひろゆき) 1976年京都生まれ。 小説家、脚本家、フリーライター、映画プロデューサー、株式会社オトコノアジト代表取締役。 作家として様々な書籍や雑誌に寄稿。発禁処分の著書『木屋町DARUMA』を遠藤憲一主演で映画化。 『アサヒ芸能』『実話ナックルズ』や『AsageiPlus』『日刊SPA』その他有名週刊誌、Web媒体で執筆。 『丸野裕行の裏ネタJournal』の公式ポータルサイト編集長。 文化人タレントとして、BSスカパー『ダラケseason14』、TBS『サンジャポ』、テレビ朝日『EXD44』『ワイドスクランブル』、テレビ東京『じっくり聞いタロウ』、AbemaTV『スピードワゴンのThe Night』、東京MX『5時に夢中!』などのテレビなどで活動。地元京都のコラム掲載誌『京都夜本』配布中! 執筆・テレビ出演・お仕事のご依頼は、丸野裕行公式サイト『裏ネタJournal』から↓ ↓ ↓

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