SpaceXは24日、現行ロケットでは最大級の打ち上げ能力を持つファルコンヘビーの3回目の打ち上げに成功しました。初めての夜間の打ち上げということもあり最も難しいとされた打ち上げミッションでしたが、搭載した24個の衛星を宇宙に届け、外側2本のブースターの回収にも成功。
そして、あまり注目されていませんでしたが、このミッションではフェアリングの回収にも初めて成功していました。
フェアリングとはロケットの先端を覆う円錐筒状のカバーのこと。打ち上げ時にかかる強い圧力と熱に耐え、適切なタイミングで分離することなどが求められることから、作るのには高い技術力が必要とされ、フェアリングを作ることのできるメーカーは世界でも数社に限られています。SpaceXはこれを自前で製造していますが、1対のフェアリングを作るのに600万ドル(約6.5億円)もかかっているということです。
通常、フェアリングは海に沈んでその役目を終えるのですが、徹底的な打ち上げ費用削減を掲げるSpaceXは6.5億円を削減するために、一見するとやや原始的にも見える方法でフェアリングを回収・再利用しようと挑戦してきました。その方法とは、巨大な網を張った船で、パラシュートで落ちてくるフェアリングをキャッチすること。
One of Mr. Steven’s final West Coast fairing recovery tests before shipping out for the East Coast. Wait for it… pic.twitter.com/A7q37Gpllu
— SpaceX (@SpaceX)
2019年1月30日
https://twitter.com/SpaceX/status/1090400806703001600
SpaceXが公開したフェアリング回収試験の様子。船上に巨大な網を広げた船を巧みに操船してキャッチしようとしますが……惜しい! 一応、パラフォイルと呼ばれる操縦性の高いパラシュートとフェアリングに搭載したスラスターで地上からある程度の操縦ができるようになっているそうですが、このゲームはちょっと難しそう。
参考動画:【GAME & WATCH ゲームウォッチ】 PARACHUTE(パラシュート)を実況プレイ(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=yxkaJtuHisc[リンク]
こちらは任天堂ゲーム&ウオッチの『パラシュート』。イーロン・マスク氏がフェアリング回収ミッションを考案するにあたってこのゲームを参考にしたという事実はありません。多分。
Mr. Steven—now with more net. SpaceX’s fairing recovery vessel has been fitted with a 4x larger net ahead of its next recovery attempt targeted for later this month. https://t.co/cjXvzg1H70 pic.twitter.com/AdAwPP30OU
— SpaceX (@SpaceX) 2018年7月13日
https://twitter.com/SpaceX/status/1017807493311811584
SpaceXは網の大きさを4倍にしたりするなど改良と練習を重ねるも、これまでの回収の試みはことごとく失敗してきました。それが、今回の打ち上げでは初めて、フェアリングのキャッチに成功しました。
動画:STP-2 Mission(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=5965&v=WxH4CAlhtiQ[リンク]
動画の1時間39分辺りから。夜間のため分かりづらいのですが、ネットの左端の方で受け止めるのに成功。もう半分も近くの海上で回収したとのことです。
今回フェアリングの回収にも成功したことで、現在およそ9000万ドルかかっているファルコンヘビーの打ち上げ費用のさらなる低減が期待できます。打ち上げ成功率も高く、ファルコンヘビー及びファルコン9は今後しばらくは最強の宇宙ロケットとして活躍しそうです。
画像とソース引用:『Twitter』及び『YouTube』より