プルドポークというのをご存じだろうか。
簡単に言ってしまうとアメリカのバーベキュー料理の一つなのだが、日本でイメージするものとは少し事情が異なる。
また、ポークと名がついているので豚肉には違いないが、イベリコ豚や黒豚等のブランドポークでもない。
豚肉を低温でおおむね10時間以上調理したBBQということになるのだが、プルドは英語でPulledと表記し、引っ張るではなく、むしったものという意味で「長時間低温でBBQ（スモーク）したものをむしり取った（ほぐした）豚肉料理」と表現することができるだろうか。
言葉だけでは説明が難しいので実際に食べに行ってみた。
やってきたのは吉祥寺にあるFatz’s The San Franciscan（ファッツ・ザ・サンフランシスカン）。アメリカンスタイルの肉料理店である。
最近ではプルドポークを食べることができるお店は増えているようだが、前述したようにスモークのための調理施設と手間暇が必要な料理なので現在のところはどこでもというわけにはいかないようだ。
オーナーのジョナサン・レヴィン氏に話を聞いてみた。
オーナーは日本生まれ日本育ちのアメリカ人で、日本人と同じ語彙で日本語を操り、時折お客さんと冗談を交わすほど気さくな方だ。祖父の出身地であるノースカロライナ州の代表的な料理は豚肉のBBQで夏休みに渡航した際に食べる機会が多く、プルドポークとは縁が深かったと思われる。
プルドポークはもともとはアメリカ南部のローカル料理だったのが、今では全米で食べられローカルフードから定番料理になったという。このお店では豚の塊肉を12時間以上かけてゆっくりとスモークし、単体でもハンバーガーとしてでも、様々な食べ方で提供されている。
実際のプルドポークは鶏肉のささみよろしく、きれいにむしられた細長い肉が連なっているように見える。
食べてみると、これまた豚肉とは思えないあっさりとしたもので、鳥のささみと間違えるほどの脂身のなさに驚く。長時間スモークで余計な脂はすっかり落ちているのでいくらでもヘルシーに食べられるのだろうと思われた。
ただし、アメリカンサイズには違いないので「ハンバーガー」といっても食べきるには少し覚悟が必要か。では、プルドポークを使用したメニューを3品紹介しよう。
プルドポークのタコスは、メキシコ料理でおなじみのタコスのようにトルティーヤにプルドポークを包んで食べる。アメリカ式のハードタコではなく、本場メキシコ式なのだろうか。トマトのフレッシュさとサルサソースのピリッとした辛みに、プルドポークがよくなじみ、トルティーヤの上で新たな味付け調理がされたような感じがした。モグモグと口の中で全体を味わいたい。
ディナープルドポークサンドはプルドポークを使用したハンバーガーだが、アメリカンサイズなのでナイフとフォークで切り分けて食べてもよいし、ハンバーガーショップで見られる包み紙をくれるので、それに包んでかぶりついてもよい。
アメリカの料理は味が濃く、油たっぷりというイメージがあるだろうが、本品はハンバーガースタイルでありながらあっさりとして、しかし長時間スモークが織りなす味わい深い豚肉が詰まったボリュームたっぷりのヘルシーハンバーガである。
バーベキュー コンボ プレートは、プルドポークを含む3種類のバーベキューをセットにした「いいとこどり」。しかし、いずれも脂っこくなく、うまみを閉じ込めたものでプルドポークはプレーンで味わうには最高の取り合わせだろう。
米国ではもはや定番でポピュラーなプルドポークは、イメージとは全く違いあっさりとしたヘルシーな肉料理だった。特別な調理器具や手間が必要なので提供するのは大変ではあるが、米国と比較してあっさりとしたコメと魚で育った日本人にもなじみやすい肉料理の一つだと思われるので、これから提供するお店も増えてくるだろう。
他にもプルドポークを提供するレストランはあるので、試してみてはいかがだろうか。
※写真はすべて記者撮影
