【武道便所】壱:うせま見をーパーペトッレイトきしら晴素

  by 千徒馬丁  Tags :  

鹿児島の知人からもらった『堅パン』という非常に硬い、圧縮した小麦粉を焼いたような食べ物を食べながらこの文章を綴っている、夜中に小腹が空いたので。
『健康はアゴから』とのスローガンが添えられているのも納得の堅さである。
乾パンよりもはるかに堅い。
アゴの強さには自信があるのだが、3枚目の堅パンは噛まずに舐めている。
夜中に食べると騒音がすごいからである。
私の骨伝導爆音も騒音レベル。
とてもタイピングどころではないので、舐めている。

【トイレットペーパーはアナタの私物ではございません】

いろいろな公衆便所で予備トイレットペーパーがなくなる事件が発生している。

トイレットペーパーを舐めていやがる。

私はつい先日、旅行中に老婆の万引疑惑行為を目撃した。
お食事処兼みやげ屋の商品棚の前にしゃがんでいた老婆は、棚の並ぶ通路を歩いていた私が老婆のほうへ顔を向けるとやにわに立ち上がり、上着と腹の間に左手をグイグイ入れながら私のほうへ歩いて来た。
老婆の腹部ではビニールがシャカシャカ音を立てている。
商品を腹に入れる瞬間は目撃していないが、明らかにアヤシイ動きの老婆。
ゆっくりと店内をさらに物色しているようである。
私は反対側にまわってゆっくりと老婆を観察した。
腹部に入っているだろう未精算商品はおそらく長いか幅のある商品で、胸のあたりまで押し込みつつ腹の前で手首をクロスさせてバッグを持ち、商品が落ちてこないように若干腰を曲げ、自然にバッグを持った手首と腕とで押さえている。
この手口は常習性があるな。

そこで私はみやげ屋のレジの女性を手招きしてこう言った。
「今、後ろにいる黒い服のおばーちゃん、わかる?マスクしてる」
女性はチラとだけ後ろを向いて確認した。
「帽子をかぶっているあの女性ですか?」
「そうそう。あのおばーちゃんね、私がそこの通路に来た時に、しゃがんでてね。それで私が見たら慌てて立ち上がってんけど、服とお腹の間に手を入れてグイグイ何かを入れててん。商品を入れる瞬間は見てないんだけど、ビニールの音がシャカシャカ鳴ってたからあのおばーちゃん・・・」
「・・・アヤシイ感じですか?」
「うん。今も物色してるカンジやで、大丈夫?」
「わかりました。ちょっと上の者と相談します」
私はてっきり、店の人が何かしらの対応をしてくれると思っていた。
しかし蕎麦を食べ終わった私の目の前で、腰を曲げたまま老婆は店を出て行ったのである。
確証がないからドキドキしながら老婆を観察し、思い切って状況証拠のみで疑惑を店に伝えた結果、店側はあろうことか万引きに目をつむったのである。
どこの店もが店頭に『万引きは犯罪です!』という警告ポスターを貼り出す昨今、万引疑惑を店は知ったうえで見逃すのか。疑わしきは罰せずか。
そんな生ぬるいことでは、万引きはなくならない。
私は今後一切、万引きを目撃しても店側に協力は求めないことにする。
アヤシイ人物がいれば店を出て確実に帰ろうとしているところを狙い『ちょっといいですか?未精算の商品をお持ちですよね?』と万引きGメン気取りの台詞を吐いてやる。
自分の時間を使ってでも私は、万引きという犯罪行為を正すぞ。
ももたろう軍団よりも少ない人数だろうが臆することなく、たったひとりで成敗してくれるわいっ覚悟しとけっ!という正義感に満ち満ちた私は、無敵である。

予備トイレットペーパー泥棒に告ぐ!
てめぇのケツくらいてめぇで買ったトイレットペーパーで拭きやがれ!!

【予備トイレットペーパーの芸術性を理解しないオニは成敗してくれるわい】

予備のトイレットペーパーの置き方は大まかに分けると、三角ピラミッド型・トーテムポール型・カップル型・独身型・セッティング型の5つにカテゴライズされる。
それぞれの基本型に各地方で変形バージョンがプラスされ、より味わい深い芸術性を醸し出す。

予備のトイレットペーパー(以下:トイペ)の定位置の基本は、端。

存在感をひっそりと主張する、三角ピラミッド型。

便器のタンク上も定位置であるが、この場合は真ん中にあり、平面ピラミッド型に変形することもしばしばである。

トイペのネーミングと包装紙のデザインは、とくに見逃さないように。

『ソフトパール』

PEARL、ソフトパール
この読点が小憎いではないか。
リボンとパール、女子を意識したカワイイ系デザイン。
しかしココは男子便所。
パールもリボンもあえてモノトーンなのは、ユニバーサルデザインなのである。

太洋紙業株式会社がゴミを減らすべく水に溶ける包装紙でトイペを包装しているのだから、利用者である我々も頑張って最初のひとりがこの包装紙でケツを拭こうじゃないか。
SAVE THE EARTH!

『One River』

レコード会社の販促品かのようなデザイン。

トーテムポール型『諏訪湖ロール』

やさしい自然な甘さ、諏訪湖ロール。

ネーミングだけ聞けば開店30分で売り切れるスイーツ。

カップル型はぴったり寄り添って横に2個並べられているスタイルである。

『リサイクル美緑』

美しい緑と書いて『みりょく』と読む。
フォントがちょうどいい昭和感をかます。
きっとそんな店名のスナックが、日本のどこかにあるだろう。

ママの名前は、みどり。

『AQ(エーキュー)』

消耗品だから予備を置くトイペの、このネーミングは永久保存版。

農協が運営している午前中だけ営業している野菜直売所、といった趣きのフォントとネーミング。
趣味の野菜作りがご近所で評判となり、直売所で売るようになったおじいちゃんが茶飲み友達に言う。
「明日はAQマートにおるよ」

いったいどっちなんだ、ハード&ソフト
このトイペの正式名称を見てみよう。

なんと名称は『トイレットペーパー』
銘柄が『エーキュー90ハード&ソフト』
茶道に例えるとこういうことになるだろうか。
「お予備のお形は?」
トイレットペーパーでございます」
「ご銘は?」
エーキュー90ハード&ソフトでございます」
「お作は?」
株式会社クリンペット・ジャパンの作でございます」
大変結構なお手洗いで。

『芯なしフォルテ』

芯なしと謳っているのに、芯まで使えるとはどういうことか。
その答えは裏に。
最後まで巻き取れなかった場合があるので1m程余分に巻いてあり、それが芯のようになっていたとしても、巻き取れずに芯のように見えるトイペなので芯として扱ってもトイペとして使用可という、複雑な事情のようである。
芯がないから圧倒的な長さ130m。
何を油断しているのだ、諸君。
芸術性を理解しろと言われて、巻きの長さにちっとも見向きしなかったようだな。
ついさっき、私は90と書いたのに。
けしからん。

『桃』

独身型は予備のトイペを1個しか置かない日本人離れした考え方である。
日本人はついつい予備の予備の予備にまで備えてしまう国民性なのに、たった1個とはワイルドである。
この桃のデザインが無農薬で育てたトマトに見えたのは、私だけではあるまい。

『なぎ』

渋い。
渋くてシンプル。
そして100mはそこそこの長さ。

『白樺』

これまた、渋い。
登録商標の枕詞がこんなにきいているネーミングも珍しい。

横に添えられたキンチョールと、木枠の窓辺に置かれたポジション、包装紙のデザインと色合い、完璧である。

『Pearl』

白さと輝きと高級感に加え、清潔感さえも感じさせるパールという魔法のフレーズは、トイペ業界のネーミング人気上位。
真珠なんてパールなんて大人の女性の冠婚葬祭マストジュエリーだと思ってた、そんなアナタは意識を変えたほうがよいだろう。
パールは、人も場所も国も選ばず性別も人種も意味もかるく超える。

※全画像:筆者および助手ハチ撮影

サルコイドーシス(以下:サル)を患うこと早8年目。そろそろ人間になっているかと思いきや直近の経過観察でもまだサル。しつこいぞ、サル。いつまでだ、サル。 プロフィールのイラストは、入院中の暇つぶしに院内をウロチョロしていた時に知り合った職業が元美少女エロ漫画家の山田課長が、サルの病名普及のためペペペーと描いてくれました。 そんなわけでね、今日はよかったら名前だけでもおぼえて帰ってくださいね、特定疾患『サルコイドーシス』略してサル、難病です☆

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Twitter: @ChitoBATE