▲日本テレビ「先に生まれただけの僕」公式HPより
いよいよ秋ドラマがスタートする。今期は「ドクターX」、「相棒」、「科捜研の女」(いずれもテレビ朝日)、「コウノドリ」(TBS)などヒット作の続編や、宮藤官九郎脚本「監獄のお姫さま」、池井戸潤原作「陸王」など、人気クリエイターが手掛ける作品など、“面白さ”が保証されたものが多い。だがテレビドラマの要である脚本家や監督らスタッフの過去作品を紐解くと、期待できそうな作品はまだまだある。
データニュース社が行なっているテレビ視聴アンケート「テレビウォッチャー」の“満足度”を使って、秋ドラマを制作するスタッフが過去に手掛け好評だった=高満足度作品をピックアップ。中でもオススメの作品を紹介する。
○超メガヒットメーカーが手掛ける「先に生まれただけの僕」
過去に手掛けた作品は、江口洋介主演「救命病棟24時」、木村拓哉主演「HERO」「CHANGE」、伊藤英明主演「海猿」、福山雅治主演「ガリレオ」「龍馬伝」、沢村一樹主演「DOCTORS~最強の名医~」と、このラインナップを見てわかるように“超”がつく程のメガヒットメーカー、脚本家・福田靖の最新作が櫻井翔主演「先に生まれただけの僕」(日本テレビ)。
「テレビウォッチャー」のデータが残る「ガリレオ(第2期)」(フジテレビ、13年)から「グッドパートナー 無敵の弁護士」(テレ朝、16年)まで、彼が手がけた全5作品の平均満足度は3.87(5段階評価)と高満足度の基準3.7を上回る高数値。またどの作品も平均3.7以上で、今作も視聴者を満足させるに違いない。
福田脚本の特徴は、視聴者を飽きさせないエンタメ性の高さと、個性豊かなキャラクター造形にある。今回は若干35歳の校長が学校を立て直すという物語をどのように紡いでいくのかはもちろん、主演の櫻井翔ほか蒼井優、多部未華子、井川遥、木南晴夏、瀬戸康史、木下ほうか、高嶋政伸、風間杜夫など硬軟揃えた豪華俳優陣たち、そして学園ドラマだけに多くの生徒たちも登場するとあって、これまでにない大量のキャラクターたちにも、福田脚本らしい濃厚な味つけがなされるのか注目。
また監督は「Mother」(10年)や「Woman」(13年、満足度4.11)、「ゆとりですがなにか」(16年、3.84)など、映画的な映像世界、映像美が特徴で社会派ドラマを得意とする水田伸生氏。福田氏のエンターテインメント性と水田氏の社会派がどのように融合するのか注目だ。
○ミステリードラマの巧者・黒岩勉脚本に期待!「重要参考人探偵」
▲テレビ朝日「重要参考人探偵」公式HPより
連ドラデビューが「LIAR GAME Season 2」(のちの映画2作も岡田道尚氏と共同で担当)で、最近では「ようこそ、わが家へ」(15年、満足度3.88)、「僕のヤバイ妻」(16年、4.04)、「貴族探偵」(17年、3.23)と、いずれもミステリードラマの秀作に仕上げた黒岩勉が脚本を務めるのが玉森裕太主演「重要参考人探偵」(テレビ朝日)。
黒岩脚本の特徴は、破たんのないロジカルなストーリー展開。驚き重視のシーンや、意味深なだけの伏線など、ミステリードラマにありがちな視聴者を萎えさせる展開が一切なく、すべてにおいて説明ができる論理的な脚本でありながら、エンターテインメント性もしっかり担保するという、今注目される脚本家の一人。
彼の持ち味が最も発揮されたのが「僕のヤバイ妻」。1話完結ではない連続ミステリーの場合、風呂敷を広げまくった挙句、最終的にそれを畳むのに失敗してしまい満足度を下げてしまう作品が多いが、“ヤバ妻”は丁寧に張り巡らされた伏線の回収や、登場人物全てに見せ場を作り美しいフィニッシュを見せた。満足度は全話平均4.04に対し、最終回も4.02と高数値で見事終了し、最後の最後まで視聴者を楽しませた作品となった。
今回もそのロジカルな物語運びが堪能できるか、細部まで吟味したいドラマになりそうだ。
○「白い巨塔」「ガリレオ」の監督が手掛ける「刑事ゆがみ」…濃厚な人間ドラマに期待
▲フジテレビ「刑事ゆがみ」公式HPより
監督で注目なのは「刑事ゆがみ」の西谷弘監督。
過去に「白い巨塔」(03年)、「美女か野獣」(03年)、「ガリレオ」(ドラマは07年の第1期のみ、映画版は2作ともに担当)、「任侠ヘルパー」(09年)、「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(14年)を手掛け、「容疑者Xの献身」(08年公開)などドラマの映画版はもちろん、「県庁の星」や「アマルフィ 女神の報酬」など、オリジナルの映画作品でもヒット作を持つ監督。自身も脚本に携わるなど(「アマルフィ」では脚本も担当したがクレジット表記はなし)映像と脚本どちらにも深くアプローチできるテレビ監督では珍しい存在。
エンターテインメント色が強いテレビ版「ガリレオ」だとわかりにくいが、「容疑者Xの献身」や「真夏の方程式」、また映画版「任侠ヘルパー」を見ると、西谷監督らしさがよりわかる。それは濃厚で丁寧な人間ドラマの構築だ。「昼顔」以降、ドラマでもその傾向が強く出てきており、今作は前作「ラヴソング」と同じく気鋭の脚本家倉光泰子氏とタッグを組み、“天才偏屈刑事とのバディもの”というありがちな刑事ドラマを想像させるが、ただの事件解決ものにはならない丁寧な人間ドラマも楽しめるだろう。
(文=大石庸平/テレビウォッチャー主任研究員)