愛犬と旅行に行こう!でもマナーも大切です

  by 田中 雅織  Tags :  

 行楽の秋真っ盛り。すでに旅行をした方や、これから旅行をする方も多いのではないでしょうか。私も爽秋の候の終わりに犬たちを連れて旅行をしてきました。旅行は、愛犬との絆を深める絶好の機会になると、行くたびに感じ取れます。それには、犬の事情も知っておく必要があるでしょう。
 旅行中の行く先々では、素敵な愛犬・飼い主カップルも多く見受けられ、微笑まし半面、マナーの悪さも目立ちました。愛犬が旅行を楽しめているかどうかで、旅行の雰囲気はがらりと変わってしまいます。行く先々で吠えているようでは、犬はストレス状態です。愛犬は、「ここは不快だよ!」というメッセージを発しているかもしれません。これでは旅行を楽しめないばかりか、他の旅行者に迷惑となるでしょう。せっかくの旅行ですから、私たちも愛犬も、思い切り楽しみたいものです。快適な旅行のために、何ができるのでしょうか。

目次
・旅行を愛犬と絆を深める絶好の機会にする
・旅館に着く前にすること
・旅はなにより刺激的
・快適な旅行にするのは飼い主次第

旅行を愛犬と絆を深める絶好の機会にする

 観光地の多くは自然が溢れる場所かと思います。犬と共に旅行に行くのなら、自然が沢山ある所が適しているでしょう。せっかくの自然ですから愛犬と共に飛び出していきましょう。
 旅館は犬と一緒に泊まれる場所を探します。巡る観光地も犬と一緒に行けるところにします。こうすると、犬は旅行中に留守番させられることなく、常に飼い主と一緒に過ごすことができます。
 犬は、飼い主と離れることが苦手です。普段の生活では、少なからず留守番させられることがある愛犬も、旅行中は飼い主と一緒に過ごせます。この機会に愛犬とのコミュニケーションを楽しみたいです。もし、愛犬が日頃、欲求不満な状態であれば、ストレスの発散が必要です。出発から快適な旅にするには、旅行前の数日間から散歩や運動、一緒に遊ぶ、触れ合うなどを行い、愛犬が自宅で快適に過ごせるようにします。車での移動では、こまめにサービスエリアに寄り、排泄や軽い運動(歩くなど)をさせましょう。

犬の視点でみる旅行

離れの客室内の全ての部屋を探検し、いつものベットで眠るハク。
子犬のなので全力で走り回る。

 犬が旅行に連れられた時に感じることは「ここは何処だ?」です。知らない場所に来た犬は、この新しい環境がどんな所かを探らずにはいられません。新しい場所についたら、犬に匂いを嗅がせます。ひとしきり匂いを嗅げば、犬はこの場所が安全か否かの判断ができます。この匂い嗅ぎが終われば、ひとまずは安心というわけです。
 旅館についてすぐにクレートに入れるのはお勧めできません。犬は安心できないまま閉じ込められることになります。しっかりと現場の確認をさせてあげましょう。その後も、出来るだけクレートなどに入れずに自由に行動させてあげられれば、愛犬に不要なストレスを与えずに済みます。そして、普段使っている犬用のベッドなどを置き、リラックスさせましょう。

旅館に着く前にすること

 ずばり散歩です。せっかくの旅行ですから景色の良い所がいいですね。犬の散歩コースになる場所を選んで、愛犬と一緒に廻ります。旅館に入る前に十分な散歩ができていれば、旅館に着いても興奮せずに済みます。適度な疲労感があれば、旅館で吠えて大騒ぎになることもないでしょう。
 

食堂での犬たち。壁のリードフックにリードが止められている。

 また、旅館でのお楽しみの一つである食事。食事は客室で食べる所と、食堂で食べる所と色々です。食事中に愛犬が騒いでいたら、他の利用者にも迷惑をかけます。朝夕の食事前には散歩に出て、発散させます。食堂に入った愛犬に先にご飯を与えれば、愛犬は満たされて休息モードに入ります。こうすれば、飼い主の食事も快適に、楽しく美味しくいただけるでしょう。

旅はなにより刺激的

 愛犬にとって知らない場所に行くことは、普段のマンネリ化した場所と違い、とても刺激的です。特に秋という季節は、葉が色づき、落ち葉があり、沢山の新奇な匂いで溢れています。こうした新しい場所から得られる刺激は犬の脳を刺激します。もし、愛犬が怖がっている様子なら、おやつなどでうまく誘導して自ら歩き出すようにします。新しい体験を愛犬にとって楽しい事にするのも、飼い主にとって大切なことです。

快適な旅行にするのは飼い主次第

 愛犬と共に旅行に行き、愛犬を叱ってばかりでは、どちらにとっても良い思い出にはならず、「大変な旅行だった」となってしまうでしょう。旅館に入ったら大騒ぎする愛犬を叱り、食堂でも吠える愛犬を叱り、部屋に戻っては暴れる愛犬を叱り…..。これでは始終叱ってばかりで、楽しい旅行とはかけ離れてしまいます。当然、叱らなければならないようでは、他の利用者にも迷惑をかけてしまうでしょう。肝心なのは、叱るような状況にしないことです。
 旅館にチェックインする前、食堂での食事の前には1時間弱の散歩に行きます。私は、湖の周りを一周しました。ドッグランなどがあれば、散歩の後で利用し、楽しく体力を消耗させます。こうすれば、旅館についてから興奮することは少なく、部屋に入った後も落ち着きやすくなります。食堂では、先に愛犬に食餌を与えます。愛犬は食べる前に運動もしていますから、食後は、ゆくっりと休むでしょう。
 旅行に行くのは飼い主の意思です。愛犬は付き合わされる身分です。なのでせっかくなら、愛犬にとっても旅行を楽しいイベントだと感じてもらえるようにしたいものです。そのためには、愛犬が本来もっている動物としての行動を保障することではないでしょうか。これは旅行に限らず、普段でも言えることです。特に旅行などの新しい環境では不安になる犬も多くいます。飼い主が、この不安を「楽しい!」に変えてあげれば、愛犬も旅行を楽しんでくれるでしょう。

 飼い主と愛犬で楽しい旅行ができれば、お互いの関係もぐっと良くなります。私は2泊3日で愛犬5頭と旅行をし美しい景色と美味し食事を堪能しました。お風呂も一緒に楽しみました。年に一回くらいは旅行を楽しみたいと思います。

 
 それでは、飼い主さんと愛犬の皆さん、楽しい旅行を満喫してくださいね!

画像は全て著者が撮影したもの

DBCA認定ドッグビヘイビアリスト(犬の行動心理カウンセラー)・JCSA認定ドックトレーナー(家庭犬訓練士)・動物行動学研究者(日本動物行動学会)。 警察犬訓練所でドッグトレーニングを学び、その後に英国の国際教育機関にて”犬の行動と心理学上級コース(Higher Canine Behaviour and Psychology)”を修了。ドッグビヘイビアリストとして問題行動を持つ犬のリハビリを行っている。保健所の犬をレスキューする保護活動にも精力的に取り組んでいる。 動物行動学・心理学・認知行動学を専門とし、犬がペットとして幸せな暮らしができるよう『Healthy Dog Ownership』をテーマに掲げ、動物福祉の向上を目指して活動中。 一般の飼主さんだけでなく、行政や保護団体からの依頼も多く、主に問題行動のリハビリが専門。 訓練(トレーニング)やリハビリの事、愛犬との接し方やペット産業の現状などについて執筆している。 著書:散歩でマスターする犬のしつけ術: 愛犬とより強い絆を築くために(amazon Kindle)・失敗しない犬の選び方-How to Choose Your Dog-(amazon Kindle)

ウェブサイト: http://www.healthydogownership.com

Twitter: HealthyDogOwner