消費者庁による措置命令
平成28年(2016年)6月30日に、共同通信からこんな記事が流れました。
「小顔矯正」に根拠無し 9業者に再発防止命令
消費者庁は30日、頭蓋骨のゆがみやずれを矯正すれば小顔になるとうたった施術の効果に根拠は無く、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、東京、大阪、福岡、長崎の4都府県の美容整体9業者にそれぞれ再発防止を求める措置命令を出したと発表した。28~29日付。
(略)
記事によると、措置命令を受けた業者は次の9業者です。ウェブページで『小顔矯正』と記述してはならないとなったのです。
・磯部美容整体Vセンター(東京都中央区)
・Steed(大阪市中央区)
・シンメトリー(福岡市中央区)
・MEDICAL BODY DESIGN(長崎県諫早市)
・ナチュラルビューティラボ(東京都渋谷区)
・レミスティック東京(東京都港区)
・トゥモローズライフ(東京都中野区)
・関西プロポーション小顔センター(大阪市北区)
・Kouken美容整体(大阪市都島区)
一度にこれだけの業者が措置命令を受けたということは、利用者からの苦情が殺到しているということでしょう。これらの業者に共通しているのは、料金が高額であるということです。
実は今回と全く同じ措置命令が、3年前の平成25年(2013年)4月23日に消費者庁から出されています。この時の業者はここです。
・一般社団法人美容整体協会(東京都中央区)
措置命令は「『小顔矯正』と称する役務に関する表示について、景品表示法に違反する行為(表示を裏付ける合理的根拠が示されず、優良誤認に該当)が認められた」として、ウェブサイトの次の記述が削除対象となりました。脱字等ありますが、原文のままです(消費者庁報道発表資料から)。
○ 小顔矯正
○ 即効性と持続性に優れた施術です。
○ 小顔矯正施術は骨に働きかけて、ほうごう線を詰めるだけでなく、主にえらの骨や頬骨に優しく力を加え内側に入れていきます。いくらダイ エットをしても骨格が変わらなければ小顔にも限界があります。その限界をなくして理想の輪郭を手に入れることがでるのです。
○ またほうごう線が開いたせいでリンパや血管を圧迫していた骨をあるべき位置に戻すことにより、リンパの流れや血流がよくなり、むくみが取れ顔色がよくなります。
○ エラ・頬・頭・面長など、気になる部分を骨から整えます。
Wikipediaより
縫合線で頭蓋骨が動いたとしても0.8 mm程度ですし、頭蓋骨の画像を見ていただければわかりますが、「ほうごう線を詰める」ことによって頭蓋骨がそんなに大きく変化するとは思えないことがわかると思います。さらに「えらの骨や頬骨に優しく力を加え内側に入れていきます」と書いてありますが、「えらの骨や頬骨」というのは下顎骨(かがくこつ)と頬骨(きょうこつ)のことだと思いますが、いったい内側にどうやって入れて行くのでしょうか?これも頭蓋骨の画像を見れば、そんなことはあり得ないことがすぐわかります。
頭蓋骨をいじっても『小顔矯正』はできません。
この業者は、バラエティー番組で女優Fの顔を小顔にしたと紹介され、一躍有名になりました。その後、雨後のたけのこのように同じように頭蓋骨をいじることによって『小顔矯正』をやる業者が増え、今回の措置命令につながったのでしょう。
『美容整体協会』のウェブページに消費者庁の措置命令を受けるまで彼女の写真が掲示されていましたが、明らかに施術前が20歳前後で、施術後の写真が30歳前後の最近の写真でした。
実は、女性の基礎代謝は20代より30代の方が上がります。女性の基礎代謝は17歳から18歳になる時に一気に落ち、18歳から20代前半は基礎代謝が落ちていますから顔がむくみやすく太りやすいのですが、30代になると基礎代謝も上がりむくみが減少し、全ての人というわけではありませんが、体型もすっきりしてきます。
施術前後の写真に年齢差が出ている上にこの基礎代謝の変化を知っていたら、女優Fは『美容整体協会』とは関係なしに小顔になった可能性がきわめて高いということがすぐわかるのです。さらに、措置命令を消費者庁から受けたにも関わらず、現在も『小顔整顔矯正』という『小顔矯正』を連想させる用語をウェブページで使用しています。
さらにもうひとつ気をつけなければいけないのは、この業者は『一般社団法人』となっており、非営利団体を装っていることです。近年、ここに限らず『一般社団法人』を名乗る整体の業者が増えていて、あたかも信頼性が高いことを装っています。非営利団体が、この記事を書いた時点で最低でも1回の施術で105,000円などという高額の料金を取るでしょうか。
テレビで紹介されたとかタレントが来る店と自称していて高額な料金を取る所は、疑ってかかったほうが良いです。特に民放のバラエティー番組で紹介された所は、ここで説明したように要注意です。
自分自身で小顔に!
では、なぜ顔が大きくなってしまうのか、その顔を小さくするにはどうすれば良いか、説明いたしましょう。『小顔矯正』は、なんと自分自身でできるのです。
顔が大きくなる原因
まず、顔が大きくなってしまう原因です。
顎関節周辺は奥歯を食いしばったりすることが原因で、筋肉がこっています。下の画像は顔をサーモグラフィーで温度測定したものですが、顔の横、顎関節周辺が黄色くなっていて、温度が低くなっていることを示しています。筋肉がこっていて固くなっているために弾力がなく、静脈とリンパ腺の流れが悪くなって温度が低くなっているのです。すなわち、顔の横がむくみやすくなっています。
また、顎関節から下顎まで、分かりやすく言えば顎のえらの部分まで咬筋(こうきん)という筋肉がありますが、咬筋がこってくるとえらの部分で筋肉が盛り上がってきます。そのまま放置しておけばこりはどんどん大きくなり、外側に張り出してきます。加えてこのこり周辺もむくむのでさらに張り出し、歳と共に顔は四角張っていきます。
すなわち、顎関節周辺と顎のえら(下顎)の2か所のこりが顔を大きくしてしまう原因です。これらのこりをほぐせばこりの盛り上がりは小さくなってむくみも取れ、顎はほっそりすっきり小顔になります。
小顔にする方法
これらのこりを解消し小顔にするのに、なんと綿棒を使って自分でできてしまいます。写真のように綿棒を顎関節に先端を当て、ぐるぐる回してください。この位置から下顎の角、すなわちえらの部分まで移動しながらほぐします。綿棒が曲がったら力の入れすぎです。
信じられないでしょうが、たったこれだけです。これだけで、高額な料金を支払わずに自分自身で『小顔矯正』ができるのです。
画像:
小顔矯正の写真はリクルート撮影、使用許諾済み
頭蓋骨の画像はWikipediaより
基礎代謝のグラフとサーモグラフィー画像は筆者作成