電力自由化に伴い電気会社を変えてみた。契約開始日は5月だったので検針結果が出たのは6月のこと。さて、6月になって電気代の請求額がきて驚いた。
5月の請求額より格段に安くなっていたからだ。しかし内訳を見ていると、使用量が先月よりも下がっていただけだった。また新電力の会社での割引制度が2000円も適用されていたためだった。そこで純粋に従量料金と基本料金を試算して東京電力と比較してみた。
結果、従来よりも料金が500円安くなっていることがわかった。充分お得である。
自由化といっても、本当に安くなるのか? 停電のときにはどうなるのか? と不安のある人も多いだろう。そもそも電気料金の計算はどのようにするのか?
新電力の仕組みとあわせて基本的なメリットとデメリットの概要をみていきたい。
電気の計算方法
そもそも電力が自由化する、競争のために値下がりが期待されるということ自体が今までにはなかったことだ。電気会社は選べず「変動する税金」くらいの感覚でいたはずである。そのためどのように請求されているか考えたこともない人が大半ではないだろうか。
電気の契約には実はさまざまな種別があって、アンペア契約、負荷設備契約、主開閉契約といった種類がある。負荷設備契約は設備の機器容量を合計して決定する方式で大型のクーラーなどが用いられている場合などに適用される。主開閉契約は主開閉器(漏電遮断器など)の定格電流値にもとづいて契約容量を決定する方式だ。
通常はアンペアブレーカーによる契約が一般的である。さまざまな種別があるが通常は東京電力からの検針票に「従量電灯B」または「従量電灯C」とある世帯が九割である。これ以外の種別となると新電力に変更可能かの確認が必要になる。
ここでは記者のケースをもとに例示する。記者の契約は従量電灯Bである。5月分の電気使用量は332kwhだった。契約アンペアは20A。これを東京電力では基本料金と従量料金の総和で請求される。そこに燃料調整費や再生可能エネルギー発電促進賦課金や税金がかかるのだが、これらの費用は一律で各社間で差がない費用である。そのため単純に従量計算と基本料金だけみてみよう。
従量電灯は三段階にわかれる。
第一段階の料金は120kwhまで。1kwhあたり単価が19.52円。
120×19.52=2342.4円。
同様に第二段階は120kwh~300kwhまで。1kwhあたり単価が26.00円。
180×26.00=4680円。
第三段階は300kwhを超えた使用量となる。単価は30.02円。
32×30.02=960.64円。
第一から第三段階の料金の総和7983.04円に基本料金の561.60円を加算する。
つまり計8544.64円となる。
さて、記者が利用したのはエネオスでんきである。
エネオスでんきは実は計算方法を東京電力と同じくしており、メリットは第二段階と第三段階の単価が安くなること。
第一段階は単価20.76円と割高だが、第二が23.26円、第三が25.75円。
使用量が多い世帯ほど安さを実感できるしくみになっている。
記者の場合は都合8063.6円。
単純計算でみれば500円ほど値下がりする効果がみられた。
2000円の値引きもついて割安感はかなり得られた。
電気会社変更のポイント
新電力の検討におけるポイントは、まず現在の使用量と料金プランと契約電流を把握することだ。特に契約電流は必須で、新電力に変更できない契約方式も中にはある。
使用量が少なければ変更するメリットがない場合もある。
また、特に注意されたいのはオール電化やピークタイムシフトなど時間帯ごとに安くなるプランを採用している場合。例えば料金一律体制の会社ではかえって割高になってしまう可能性もある。
そして会社ごとに特典を用意していることもあるので、どれが自分に適しているか比較してみるのもいいだろう。特徴的な会社ごとの特典を挙げてみよう。
東京電力…電気の駆けつけサービス、Tポイント還元など。
東京ガス…ガス・電気セット割、トリプル割など。
エネオスでんき…ガソリン代が安くなるエネオスカード割、Tポイント還元、長期割引。
auでんき…スマートフォンとのセット割でWALLETカードへのキャッシュバック。
ソフトバンク…スマートフォン代が安くなる、Tポイント還元。
他にも会社によって多数の特典が用意されている。契約電流にあったプランが最も充実しているのはやはり東京電力だが、携帯会社のセット割にすれば請求がまとめやすくもなる。メリットは様々だ。
停電しないの?
各社に変更することで停電や漏電時のサポートを不安に思う人もいるだろう。
しかし、基本的に小売の自由化といっても、停電対応にあたるのは送配電事業者である。電力会社がかわったからといって地域的な停電が起きやすくなることはない。逆にいえば停電の起きやすさは従来通りともいえる。地域的停電は電気の小売会社に左右される問題ではない。また、例えば災害規模の地域停電では、広域機関(電力広域的運営推進機関)が電源の焚き増しや電力融通を指示することで需給調整を行うことになる。
さしあたり電気会社が変わることで停電が起きることはない。起きることはあるかもしれないが、それは今までと同じ起きやすさだ。しくみとしては地域的停電後の対策は広域機関の命題であり電気の小売会社一個に任されるわけではない。
そして個人宅レベルでの停電については送配電事業者(関東なら東京電力)が対応にあたる。小売会社が他社である場合、サポートは有料になる可能性もある。サポート面を気にする場合、東京電力のプレミアムプランなどが安心かもしれない。ただし基本的に停電時の対応にあたるのは総じて送配電事業者である。また個宅レベルの停電については別途注意点があるが後述する。
スマートメーターって?
電気会社を変えると実際に何が変わるのだろうか?
もちろん請求元が変更になる。しかしもうひとつ着目したい点としてメーターの交換が優先的に行われるということだ。これまでは機械式であったものが電信式のスマートメーターに交換されるのだ。実はエネルギー政策の一環であるHEMS(Home Energy Management System)設置を前提として、電力会社を替えなくとも各家庭の電気メーターは2020年までにスマートメーターに交換されるものとなっている。しかし新電力に変えるとその交換が優先的に行われるのだ。
新電力の契約にあたってはメーター交換を先にしなければならないという認識が生まれやすいのだが、メーターが何であっても新電力会社との契約は成立する。契約後のメーター交換は優先的に行われ、交換前の検針は従来のメーターで今まで通り検針されるのだ。
スマートメーターの従来との大きな相違は30分ごとの使用量の把握が可能となる点だろう。
これまでは人力で月に一度だけ記録されていた電気量が30分ごとに把握できるようになるのだ。ただしアナログメーターを目視で総計が視認できていた場合、ある意味ではブラックボックス化ではないか? という見解もあるかもしれない。
ただ、計量結果がオンラインで管理できるようになり、例えば外出先でもその日の電気使用量が把握できる。例えば遠方に住む高齢の家族の使用量を見る、といった見守り的な利用も可能になるのだ。
またこれは例外的だがメーターがアナログからデジタルに切り替わるときに留意されたいことがある。今まではアナログの装置であったものがデジタルに切り替えられる。つまりもともとみなし計量的に許容されていた電気の負荷が正確な計量に切り替わることになる。従来と同じ電気の使い方でも停電が起きる可能性があるのだ。ただしこれは節電にもつながり、漏電を防ぐことにもなる。もしメーター交換後に停電が頻出した場合はまず室内の電気利用箇所を確認して負荷が集中する使い方をしていないか点検してみよう。ちなみにスマートメーターは一度停電が起きると10秒後に自動的に点灯を促す働きをする。そのときに停電の原因が解消されていなければ再び電気が落ちる。そのためスマートメーター設置後の家庭では実際に停電すると10秒後に点灯するがまた再び電気が落ちるという二回の停電を経験することになる。もしも二回の停電が起きたら負荷箇所を点検して、スイッチオフしてから従来通り手動でブレーカーをあげれば良い。同じような停電が頻出するならその家電の利用方法を変えるなどの工夫が必要になるだろう。
検針について
電力会社を変更しても検針は送配電事業者、関東では東京電力の管轄におかれる。小売会社はその検針データを預かって請求する流れになる。留意点としてはスマートメーターは電信なので検針員が訪れなくなる。つまり検針票が発行されなくなるのだ。明細を用紙で希望したい場合は各会社に希望できるが、大半は有料だ。ちなみに記者の契約したエネオスでんきでは請求書一通あたり月額162円(税込)。しかし、記者個人の所感としては建物へのやたらな人の出入りを減らしたいという気持ちもある。検針員の来訪がなくなることはかえってクリーンな心持である。
4月から電力自由化になった、といっても何が変わったのかわからないという人も多いだろう。メリットを感じるかデメリットを感じるかは個々人による。
まずは自分の検針票から使用状況と契約電流を確認してみよう。