2016年4月15日、ゲームブランド・Keyのタイトル『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』のアニメ化プロジェクト発表会にて、TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズなどを手掛けるアニメ監督・津田尚克氏が自ら”鍵っ子”であることを打ち明ける一幕がありましたので、今回はその件についてレポートします。
“鍵っ子”とは?
一般語ではなく専門用語としては、ゲームブランド『Key』の作り出すゲームにたん溺する人々のこと。主に90年代末から2000年代初頭にかけて使われた言葉。
『Key』のゲームは、多くがアダルト向けでありながら”泣ける””感動する”、いわゆる”泣きゲー”であり、シナリオ、キャラクター、音楽などに非常に思い入れの深いファンが存在する。彼らを指して”鍵っ子”と呼んでいた。
『Kanon』『AIR』『CLANNAD』など、多くのKeyのタイトルが全年齢向けゲーム化を経てTVアニメ化を果たし、いずれも広く支持される人気作となったため、現在はよほどコアなKeyファンでない限り鍵っ子と呼ばれることは少なくなった。
『planetarian』製作発表会での津田監督らのコメント(抜粋)
津田監督(写真右)が本作監督になった経緯として、アスミック・エース株式会社の青井宏之プロデューサー(写真左)が監督の所属するアニメ制作スタジオ・david productionに制作オファーをした際、「『おれやりたい』と手を挙げました」と自ら立候補したことを明かしました。
「昔からKeyのタイトルは大好きなので『これかなり念願じゃね?』という、結構個人的な理由なんです。でもやるからには一切の妥協をせずやりたいと思っています。」と、本作に対する熱い思い入れと意気込みを語られました。
さらに、ゲームブランド・Keyを有する株式会社ビジュアルアーツの丘野塔也ディレクターは「さっき楽屋でもお話を伺っていたんですが、津田監督が「(Keyの第1作の)『Kanon』から、なんだったらその前からずっとプレイしてたんです」と仰っていて、ああ本当に筋金入りだな、と(思いました)」と舞台裏を明かされました。
司会から「かなりの鍵っ子なんですね」と言われると、津田監督は恥ずかしそうにはにかみながら「本物の鍵っ子の方はいっぱいいらっしゃるので(自分が鍵っ子を)名乗るのはおこがましい」とした上で、「僕らの世代でビジュアルアーツのタイトルに影響を受けていない奴もなかなかいないと思います。」と、背負った看板の大きさ、重さについて語られました。
また、Keyの歴代タイトルにて数々の名曲を生んできた作曲家・折戸伸治さんがアニメ版『planetarian』でも音楽を担当することになった件についても「昔からのファンなので、折戸さんに会った時点でマックスに緊張してました」とコメントされました。
ニコ生での反響
この製作発表の模様はニコニコ生放送でも中継放送されていましたが、監督がKey愛を語るたびに「期待できる」「鍵っ子w」などのコメントがつけられていました。
放送の満足度も「とてもよかった」が91%と、監督への信頼と本作への期待が感じられる結果でした。
記者の所感:津田監督は鍵っ子か?
・Keyの第1作『kanon』より前からプレイとなると、少なくとも『ONE ~輝く季節へ~』(『Kanon』以前にほぼ同じスタッフで制作の別会社の作品)は当時プレイ済。
・オタクの度合いの深刻な人ほど謙遜する傾向がある。
・オタクの度合いの深刻な人ほど好きな作品のクリエイターを敬う。
以上の事から、津田監督は丘野さんの仰る通り筋金入りの鍵っ子と見て間違いないかと思います。
津田監督は『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズでも原作の持ち味を大事にしたアニメ化を実現し、高い評価を受けている監督です。
その監督が重度の鍵っ子だったとあれば、『planetarian』のアニメ化が作品愛に恵まれたものになるのは間違いないでしょう。
素晴らしいアニメ化をした作品は、見ていて気持ちのいいもの。原作ファンはもちろん、幸せなアニメ化を果たす作品を祝福したいすべてのアニメファンにとって『planetarian』は注目の1本となるでしょう。
『planetarian』作品紹介
STORY
■封印都市の忘れ去られた”プラネタリウム”。
そこに迷い込んだ男が出会った”ロボットの少女”、星に導かれた”奇跡の物語”
世界大戦後の降りやまない雨の世界。細菌兵器の影響で、人々に見捨てられた最も危険な街”封印都市”。その、デパートのプラネタリウムに、ロボットの少女がいた。彼女の名前は“ほしのゆめみ”。彼女はプラネタリウムの解説員で、1年間にたった7日間しか稼働することができない壊れかけのロボットだった。そこで彼女は、30年間いつか誰かが訪れることを信じて、1人誰もいないこの世界で待ち続けた。そして、30年目の目覚めたその日に、彼女の前に1人の男が現れた。
「おめでとうございますっ! あなたはちょうど、250万人目のお客様です!」
突如現れたロボットに警戒する男・“屑屋”。貴重物資を回収することを生業とする彼は、”封印都市”に潜入中、都市を徘徊する戦闘機械(メンシェン・イェーガー)の襲撃にあい、このプラネタリウムに迷い込んだのだった。
「プラネタリウムはいかがでしょう。 どんな時も決して消えることのない、美しい無窮のきらめき……。 満天の星々がみなさまをお待ちしています」
星すら見えなくなった滅びゆくこの世界で、彼はそこで何を見るのか。1年で7日間しか稼働できないロボットの少女が、目覚めたまさにその日に訪れた偶然。そこで起こった奇跡とは――。
公開情報
■ それは、ある少女の物語『planetarian~ちいさなほしのゆめ~』ー
7月7日(木)よりニコニコ動画ほか下記動画配信サイトにて配信開始
J:COMオンデマンド / milplus / auビデオパス / dアニメストア / バンダイチャンネル / Playstation Store / U-NEXT / アニメ放題 / GYAO! ほか
■それは、ある男の物語『planetarian~星の人~』ー
9月3日(土)よりTOHOシネマズ 新宿ほか全国順次公開
キャストコメント
■すずきけいこ (ほしのゆめみ役)
原作の発表からもう12年。ロボット技術は進み、とても身近なものになりましたね。 あの頃想像していた未来が、今来てる感じ。
そんな時代ですし、収録にあたってまず”原作よりも人間味のある感じのロボットに”というプランを監督からいただきました。原作では「ロボットだから」とあえて入れていなかった感情を表す息っぽい表現もぎこちなくですが、少しあったりします。収録が進むにつれ、この12年で私のゆめみの声の出し方も、表現も角が取れてまるく、優しくなったのかな……ということに気づいたりもしました。
変わったのは声のお芝居だけじゃないですよ! 音も、 動きも、 原作の文章にだけ描かれていた所が、 色々表現されていて。 アニメでしか見られないものも、沢山あるんです。 まだ、 ところどころチラッと見ただけですが、 ドキドキが止まりません!
アニメという新しい舞台を得て、さらに進化した2016年の『planetarian』の世界に原作をご存知の方も、そうでない方も、触れていただけたなら、ゆめみも私も、とてもうれしいです。
■小野大輔 (屑屋役)
長い時を経て、またこうして『planetarian』を世に届けられることを本当に嬉しく思います。
俺たちの好きなKeyがここにある。
色褪せることのない不朽の名作。その無窮の輝きを見届けてください。
予告編PV
公式サイト
planetarian-project.com
※写真は著者の撮影によるものです。画像の権利は権利者に帰属します。
(c)VisualArt’s/Key/planetarian project