巻上公一 ほんとに還暦なのか? 第二日 ヒカシュー+イノヤマランド

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舞台奥に大々的な「MAKIGAMI 60TH」の文字。そう、今夜はヒカシューのリーダー巻上公一氏の還暦祝いのライヴウィークの二日目なのだ。
でも「還暦なのか?」とクエスチョンがついている。そしてこの「なのか」は「七日」ともかけられている。
本当は七日間とも来たかったけれど、今夜と明日の二日間だけなんとか日程ができた。ワクワクしながら待っている。
客入れの音楽はヒカシューのインストルメンタルがかかっている。

イントロデュース

まず、こぐれみわぞうさんが登場する。ツイッター上で巻上さんが司会者を求めていたけれど、こぐれさんがその任に当たるらしい。実は三田さんが最初立候補したのだけれど、却下されていた。その三田さんがこぐれさんを指名したらしい。
昨夜から始まっているこのシリーズ、こぐれさんは前日の様子を話してくれる。
きのうも来たかった、と強く思う。でも仕方ない。このふつかを愉しもう。
まずはゲストのイノヤマランドが紹介される。
前にこの会場で、かれらが演奏したときは、紹介もなしに現れて、まるで客入れのように演奏して、客たちは気づかないままおしゃべりを続け、その中をBGMのごとく演奏したものだった。
それを今夜は静まり返って聴き入っている。
井上誠さんと山下康さんのふたりは、ヒカシューの最初のメンバーで、謂わばテクノ部門だった。二台のシンセサイザーで静かに演奏が続く。
おそらく4曲の演奏が20分くらい行われた。切れ目がないので何曲だったのかわからない。
休憩のあと、巻上さん率いるヒカシューが登場する。
インプロビゼーションから始まるいつものスタイルだ。
やがて清水さんがシンセサイザーでイントロを叩き出し「筆を振れ、彼方くん」が始まった。この曲はここ数年バンドのテーマ曲になっているノリのいい曲だ。
みんなの体があったまる。

今夜の曲順は決まっていた?

巻上さんが挨拶をする。「今夜は古目の曲をやります」
「いつもは曲順を決めてないんだけど、こないだのクリスマスくらいから決めてやっている」
「というのも、決まってないと大変なので。誰かが一生懸命曲を示しているのに、みんな気づかないとか」
「決まってると決まってるだけに大変だ」と三田さんが補足する。
「ゾウアザラシ」清水さんのバスクラがかっこいい。私もときどき風呂で歌ったりするけれど、キイを保つのが難しい曲だ。
三田さんのギターリフが「何にもない男」を始める。今夜はなんだかロックな感じだ。
「はなうたはじめ」では、巻上さんのヴォイスによるインプロがサイコーだった。
「丁重なおもてなし」は、いつもにも増して皮肉たっぷりだった。ちかごろの芸能ニュースが頭に残っているからだろうか。
坂出さんのベースラインが、めちゃくちゃなブルースである「ダメかな!?」を始める。三田さんのやはりちょっとハードだった。
「人間の顔」もロックナンバーだ。かつて沢田研二のために書いて、却下されたという曲だが、人間賛歌とも取れる伸びやかさが感じられた。歌詞は哲学的かもしれないが、かれらは皮肉であっても、ホントは健全でまっすぐなのだ。この曲からエレキヴァイオリンの太田さんが参加した。
「脳千鳥」では、ヴァイオリンとテルミンの絡み合いがが脳の裏側を刺激する。
「さなぎ」では、巻上さんがヴォーカルの音程を厳しそうに歌った。以前、坂田明さんがカヴァーしたとき歌詞の意味合いがいつも以上に考えられたものだけれど、今夜の巻上さんのヴォーカルはより深みを持っていた気がする。「さなぎ」とは「さなぎ」の中身ではなく、さなぎそのものだという思想。
佐藤さんのドラムで待望の「入念」今夜は徹底的だ。インプロが少ない。どんどん乗っていく。
井上さんが登場して、「日本の笑顔」
巻上さんが作家性について語る。井上さんのシンセサイザーと巻上さんの七色の声。レコードでは戸川純が歌ったパートを、昔はのもとさんが歌ったりしていたけれど、いまは巻上さんが別人になって歌う。このレコードが出た頃のメンバーは、巻上さん三田さん井上さん坂出さんの四人だけだった。今のメンバーが音を広げる。
「ギターで始まる曲で、割と古い曲で、感想がいいやつ」と三田さんが次の曲のヒントを出す。「当たったら10万円」私はつぶやいた。「アルタネイティヴサン」
「山下さんはまだ?」
「予期せぬ結合」
井上さんがいた頃の、ロックな曲が続く。ここでようやく山下さんが登場する。井上さんに次の曲名を聞いている。
「ラヴ・トリートメント」山下さんがいた頃の曲だ。
「ダンダンダダンダダンダンダン」のヴォーカルリフ。
そして季節はずれの「スイカの行進」なんでかなと思ったら、おととしのクリスマスに太田さが歌った曲だった。
今夜も太田さんがヴォーカルを取る。「もう私の曲になってしまいました」ちゃちゃっちゃ。
「キメラ」もおととし太田さんが参加した曲だ。じっくりとヴァイヲリンを聴かせる。「この曲は知らない」とばかりに山下さんは座り込んでしまった。
「パイク」で終演。私たちは手拍子を打ち、うねる。間奏部分は、最近のインプロ全開ではなく、初期の録音に近いダウナーな感じだった。もちろんそこにも即興性はあるのだけれど。

アンコール

「むかしさんざんインプロしまくった『幼虫の危機』を」
山下さんのリードで曲が始まる。

写真は著者自身による

好きな小説・映画・音楽などについて、まとまった形で表現できればと思います。

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