2016年2月11日より日本で全国公開予定の映画『キャロル』。次のアカデミー賞の有力候補とも言われ、既に「NY映画批評家サークル賞」など様々な賞を獲得している本作ですが、いよいよ公式日本語トレーラーも公開され、ますます注目度も高まってきています。そこでこの『キャロル』の素晴らしい魅力について、一足お先に海外で観賞してきた筆者が紹介していきたいと思います!
ふたりの視線が交わる瞬間!
【ストーリー】
1952年、ニューヨーク。高級百貨店でアルバイトをするテレーズ(ルーニー・マーラ)は、クリスマスで賑わう売り場で、そのひとを見た。鮮やかな金髪。艶めいた赤い唇。真っ白な肌。ゆったりした毛皮のコート。そのひともすぐにテレーズを見た。彼女の名はキャロル(ケイト・ブランシェット)。このうえなく美しいそのひとにテレーズは憧れた。しかし、美しさに隠された本当の姿を知ったとき、テレーズの憧れは思いもよらなかった感情へと変わってゆく……公式サイト(http://carol-movie.com/)より引用
本作は1950年代に書かれた小説を原作にしています。『太陽がいっぱい』など、その著作の多数が映像化されている事で有名なパトリシア・ハイスミスの『The Price of Salt』という作品で、監督は『エデンより彼方に』のトッド・ヘインズです。
また本作はスーパー16ミリフィルムという今となってはクラシックなカメラで撮影されています。その為実際劇場のスクリーン画面の粒子は荒く、特に暗い室内シーンなどはさながら昔のレトロ映画のような雰囲気です。作中では1950年代アメリカの雰囲気を非常に忠実に再現しており、街の様子から行き交う車、レコードから聞こえる音楽、そして男女共に皆タバコを吸うという所まで完全再現しています。ゴージャスで綺羅びやかなクリスマスシーズンのヴィンテージ感は、現代から見ても魅力的に感じること間違いなしです。
時代の足枷が2人を捉える
物語の舞台は1950年代。まだまだ人種差別や男女間の権利も不平等で、もちろんセクシャルマイノリティーの立場も今よりずっと難しい保守的な時代でした。そんな中、出会ってしまったふたり。キャロルとテレーズの仲も、時代のしがらみに左右されていく事となります。そのような状況でも、自分の選んだ道を進んでいく、ということが大きなテーマの一つにもなっているのが本作です。
ハリウッドではもやは女王級の存在感を放つケイト・ブランシェットが演じるのは、現代的で芯が強くミステリアスな雰囲気を放ちながらも常に物憂げな婦人キャロルです。保守的な時代に苦悩して生き、それでいて常にエレガントな女性をケイト・ブランシェットが完全に演じきっています。とてもカッコいいです。
とにかくルーニー・マーラから目が離せない
本作の主人公はキャロルとテレーズ二人とも、と言いたい所なのですが、やはりルーニー・マーラ演じるテレーズの素晴らしい演技と表情から目を離すことが出来ません。またカメラワークも素晴らしく、様々な角度からテレーズの表情を変幻自在に写し撮っています。
そして1950年代の時代背景に合わせた衣装や髪型にも注目です。ルーニー・マーラの透明感の高い無垢な魅力が、素朴でクラシックなファッションスタイルと相まって非常に愛らしいキャラクターを作り出しています。物語はテレーズ視点で進む為、常にスクリーンに映し出されるテレーズ自身の表情の変化にも注目です。
注目ポイント
一見ありがちなラブロマンスかと思うかもしれませんが、実は結構古典的なロード・ムービーでもあったりします。作中で非常に重要なパートとなる車旅ですが、まさにアメリカ!という雰囲気がたまりません。
編集にも優れていて、後半になる頃には「そういうことだったのか!」という驚きも隠されています。
ですが何と言っても、美女2人の非常に親密な共演が見どころでしょう。ここまで大物女優による緊密な演技は、なかなか見られないのではないでしょうか。みなさんも是非劇場でその親密さを確かめてみて下さい。
映画『キャロル』は2016年2月11日(木)に全国公開予定。
映画『キャロル』予告編 90秒ver
https://www.youtube.com/watch?v=xwKh9gxtD84
画像は『キャロル』公式サイト(http://carol-movie.com/)、『Youtube』(https://www.youtube.com/watch?v=xwKh9gxtD84)より引用