芸能と娯楽文化の発信地として隆盛をきわめ、戦前には浅草と一、二を競う歓楽街だった神戸・新開地。
1970年代以降衰退し、今では労働者や高齢ギャンブラーがばっこするドヤ街と化しているが、ややこしい客層に対応し続けた結果なのかコスパの高い飲食店が非常に多いスポットだ。
今回ご紹介するのは、新開地駅東口から地上に上がる通路脇に暖簾をはためかせるこのお店。
『新開地 たつの』
7、8人も居ればぎゅうぎゅうになる、小さなカウンターだけの典型的な立ち食いうどん店だ。
新開地にはこういったスタイルの立ち食いうどん店が多いが、たつののうどんはその中でも一、二を争うクオリティー。
けっして豪華だったり変わり種なわけではない。
300円そこらの立ち食いうどんとして押さえるべきポイントを確実に押さえているのだ。
こだわりのダシは絶妙な塩加減で甘みは少なく、添加物や保存料を一切使わないので後口があっさり澄みわたっている。
温度も熱すぎず、けっしてぬるくないギリギリのポイント。
この一帯で主流となっている柔らかめの細麺との相性もバッチリで、立ち食いうどんとしてこれ以上ない境地に至っていると言えるだろう。
具材のトッピングによる変化も千差万別で面白い。
名物のぼっかけは比較的にあっさりした味付けで、ダシの風味をそこねることはないのだが時間がたつとほのかに煮込んだ肉のエキスや甘みが溶けだして味にふくらみを与える。
てんぷらはよく出来たエビのかき揚げで、ダシを含ませふんわりさせるとそれだけで無上の一品と化す。もちろんうどんと一緒にすすればなんともリッチな味の多重奏。
きつねは薄めの作りで非常にあっさりと油抜きしてあり、かみしめればしみじみと滋味あふれる。ダシにかすかな甘みのフレーバーを与えるのもうどん好きには見逃せない塩梅だ。
これだけの美味を味わえて、おまけにおにぎりを付けてお腹を一杯に満たしてもかかる費用はワンコイン。
たつのこそ新開地、いや日本が誇るべき立ち食いうどん店だと言えるだろう。
神戸を訪れる方にはぜひ足を運んでいただきたい名店だ。
『新開地 たつの』
神戸市兵庫区
新開地駅東口から地上に上がる通路脇営業時間 11:00~19:00頃