消費社会ではあらゆるメッセージがマーケティングと結びついており、ぼやっとしていると自分の頭を乗っ取られかねない。自分で考えていることの大半は、誰かの意見だと思ったほうがいい。そうして身構え背中見せぬよう生きてきたせいか、書店員さんお勧めというものに、どう接したらいいかわからない。書店員さんというのは、本好きにとり無条件に信じてしまいそうになる存在である。でも彼らが書店という経済活動団体の一員であるという事実はどう考えたらいいのだろうか。自らに課してきた消費社会への警戒ポリシーとは、異なるではないか。反対派はいつだって威勢よく、賛成派は言葉少なめなのが常である。頭の中で応酬される激しい議論。書店員さんが火をつけた本。なんて素晴らしい、本好きだからこそお勧めできる本だ。という意見は、そりゃあ商売だもの火をつけるさと反対派が打ち消す。有隣堂のコーナーで、手書きPOPをいつまでも見つめるのだった。

