「玄関先訪問」とは? 変化する家庭訪問の形

みなさんは、小学生の頃、家庭訪問を経験されたでしょうか。担任の先生が自宅にやってきて、両親に学校での素行を報告されるという、子供にとっては耳が痛いイベントでもありました。

最近も、家庭訪問は行われているようですが、「玄関先訪問」と名を変えて行われている地域も多いようです。
それというのも、ご両親とも働く家庭が増えたため、慣習的に家の中にあがっていただき、お茶やお菓子を出しながら先生から話しをうかがうスタイルの家庭訪問は、児童の家庭に負担がかかるため、学校側から配慮すべきという考えが広がったためのようです。

昔から、家庭訪問の時期は、学校側からお茶や菓子類を出さないように各家庭に通達することが行われていました。
とはいえ、日本の慣習からして家の中に招き入れた来客にお茶も出さないというのは馴染まないため、「玄関先訪問」という形での家庭訪問が増えているようです。
共働きが増えた家庭からすれば、仕事から帰ってきて家の中を整理して、お茶や菓子を出すのは大変。玄関先さえ整えておけば先生の心証を損ねることもないことから、保護者にも好評のようです。

福岡市教育委員会によると、家庭訪問の目的は、災害時などにそなえて児童の自宅を教員が確認すること、自宅周辺の危険な場所を教員が把握しておくこと、児童と個別に話すことを目的としており、家庭訪問の時期や手法については、各学校長に裁量権を委ねているそうです。
そのため、福岡市城南区の烏飼小学校では、共働き世帯が多いことを考慮して、今年度から家庭訪問ではなく、各家庭の玄関先で保護者と面談する「玄関先訪問」の実施に切り替えました。

保護者の中には、玄関先訪問という耳慣れない言葉に疑問視する声もあったようですが、保護者が指定の時間に自宅にいられない場合もありえます。この場合は、児童の自宅を確認し、後日、必要に応じて再訪問する方法を取っているとのこと。
児童の家庭生活上の問題を保護者と共有する仕組みは、以前と変わらないよう配慮されているのが「玄関先訪問」の特徴ともいえます。

各自治体の教育委員会によっては、保護者から家の中に上がることを勧められた場合は、上がって話を聞くなどといった地域の慣習を尊重し、保護者との人間関係の齟齬を生じないよう、細かい配慮を行っているケースもあるようです。

保護者側としても、全体として教員と直接話ができる家庭訪問自体は、非常に重要と考える人が多いため、「玄関先訪問」は定着していくかもしれません。

※写真はイメージ 足成から http://www.ashinari.com/2012/02/06-356927.php

松沢直樹

福岡県北九州市出身。主な取材フィールドは、フード、医療、社会保障など。近著に「食費革命」「うちの職場は隠れブラックかも」(三五館)」近年は児童文学作品も上梓。連合ユニオン東京・委託労働者ユニオン執行副委員長