短編小説『ユウとトコ』

  by sattakanovel  Tags :  

連載JP初投稿となります、高宮聡(たかみやさとし)と申します。noteというサイトで小説メインで書いてます。
一応、「インターネットという”路上”に立つ、ストリート作家」とキャッチフレーズを付けていますが、その実、元自動車整備士でドライブ好きな男が小説家に転身してみた、といったところでしょうか。

ガジェット通信って小説関連あったっけ?と曖昧な感じですが、今日は問答無用で自作短編小説を一本ご紹介。

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『ユウとトコ』

 毒を食らわば皿までというが、ここまでの毒とは思っていなかった。血流にのって全身を巡り、ある一か所に集中して肉体を侵食しているのならわかるが、おそらく毒は毒として自覚を持っていない。特にあの人間は人間としての毒を毒とするべきか、未だに悩んでいる。

 ユウは一目散に逃げ出し車の影に隠れる。昨日業者から帰ってきたばかりの車はピカピカに磨かれていたが、どうやらワックスはかかっていないらしい。ユウを追ってトコも車の影に隠れる。
「ねぇあの人あんなことろで何してるんだろ?」
「何もしてないよ。たぶん」
「何か食べてるよ? 絶対食べてるよ」
 俯いて何かを口に運んでいるのは分かる。しかし二人はそれが何なのかわからない。どろどろのものが糸を引いていて影になって地面に写っている。どろどろ、もにゃもにゃ。
「どうしてこんなところに来たんだろう? 誰も住んでないのに」
「たぶんあの道を来たんだろう。一本道だし交差点を一つ間違うと迷い込む魔の分かれ道って言われてるからね。地元の人間じゃないんだろう」
 珍しい耳飾りを付けている。一見ピアスのようだが紐が耳たぶにかけられてぶら下がっている。観光地の売店で売ってそうなものだ。どろどろねばねばと両手に纏わりつくモノを口に入れてはくちゃくちゃと咀嚼する。食事にしては不気味すぎだ。
 ユウはその光景に見入ってる。月の光と彼女の姿、地面に写る影が調和し、ホラー映画を見ているようだったが、現実と一つになりまさかそれが作られたものだと気付かないとしたら、きっと彼のような反応をするだろう。一方トコは気色悪そうに両手で顔を覆っている。うずくまっても咀嚼音が地面を伝って体に登ってきているような気がして、小さく飛び上がりながら呻く。
「……早く帰ろ! ねぇ、ねぇ!」
「あの人は何を食べているんだ」
「どろどろのモノです」
「へぇ、しばらく見てみよう。おやその子大丈夫?」
 さっきは素通りした男性だが、やはり気になるのか戻ってきた。よく見れば近所の本屋で働く古橋だった。コロは人懐っこく腕にしがみつく。
「こんどあのお店に泊まらせてよ? 本に囲まれて合宿したいな」
「そうだな今度一緒に止まろう。君のために店はお休みしよう!」
「……なんて自由な人なんだ。うえ、まだ食ってる!」
 自由奔放な本屋は向こうの彼女に夢中だ。次第に彼の目から力が無くなっていく。何か変だ。まるで催眠術にでもかかったかのようだ――。
「やばいぞ、この人催眠流にもろに影響を受けてる!」
「今日は催眠流警報出てたね。おーい古橋さん目を覚ましてー」
 この区域は催眠流と呼ばれる自然現象が多い。人の意識に悪影響を与え、眠気を誘う厄介なものだ。たとえ仕事中でも一瞬にして夢の世界へ旅立つ。突然倒れたと思ったら快適そうに寝息を立てていたという事案が多く、原因を探るも結局不明なままだった。
 ユウとトコが平気なのは単純に慣れているからだ。しかし身体が弱っていると眠気に負けてしまうことがあるということだ。

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