デング熱より深刻かもしれないマダニが媒介するSFTSウイルス

  by 松沢直樹  Tags :  

国内では約70年ぶりに感染が確認されたデング熱だが、当初、感染が確認された代々木公園のみならず、様々な場所でデングウイルスを持つヒトスジシマカが発見されている。感染拡大の解明について、行政の発表が待たれるが、まずは虫除けスプレーを使用したり、長袖の服を着用するなどといった蚊に刺されない工夫を行うのも大事だ。

死亡するケースもある!? 西日本各地で広がるダニによる感染症

ところでここにきて、虫から媒介される深刻な感染症の拡大が問題になっている。マダニから感染するSFTSウイルスによって発症する「重症熱性血小板減少症症候群」だ。
マダニは、草原や山間地などのほ乳類が通過する場所に待ち構えていて、動物に飛びつく。その後、口吻(こうふん)と呼ばれるのこぎりがついたストローのような口を動物の皮膚に刺して血を吸うのだが、その際に唾液だけでなく病原体を動物の体内に送り込むことがある。

ダニが媒介する感染症は様々なものがあり、北海道や長野でも確認されているライム病のような症状が重い疾患もあるが、とりわけSFTSウイルスによる重症熱性血小板血漿症は、有効なワクチンや薬剤がなく、現時点では、解熱などの対症療法しか治療法がない。

SFTSウイルス感染後、6日〜2週間は症状が出ないとされている。
その後、発熱、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛などの症状から、頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節の腫脹、皮下出血や下血などの症状を起こすとされているが、感染者のうち、6.3〜30パーセントが死亡する可能性があるとされている。極めて深刻な疾患だ。
日本では、2013年1月にはじめて確認されている。現時点では、西日本各地のみで感染者が報告されているが、マダニの生息地を考えると、東日本に以北にも広がらない保証はない。

山間へ出かける時は長袖長ズボン 虫除けを 万が一刺されたら医療機関へ

SFTSは、おそろしい感染症だが、基本的にはマダニに挿されなければ感染はしない。(血液を介して人間に感染することが確認されているが、医療者などを除けばリスクは低いと考えてよいだろう)
個人でできるもっとも有効な対策は、「足首や手が出ない長袖や長ズボンをはき、靴下もしっかりはいてガードすること」「虫除けスプレーを適宜利用すること」「万が一、マダニに刺されたら、自分でダニを取り除こうとせず、医療機関に相談すること」これに尽きると言ってもよい。
一般的にダニは、血を吸い始めると当初の大きさの数十倍の大きさに膨らむ。
そのため、山間へ出かけた2~3日後に、自分の体から血を吸っているダニを見つけることが多い。
この際、むりにダニを取り除こうとすると、注射と同じ原理で、ダニの体内にいるウイルスが自分の体の中に送り込まれかねない。自分の血を吸って膨らんだダニが食いついているのをそのままにするのは、気持ちが悪いだろうが、医療機関で取り除いてもらうのが一番確実だ。
秋の行楽シーズンを迎えるが、マダニ以外にも人間に害を与える虫は多い。あらかじめ準備をしてでかけたい。

※画像は 国立感染症研究所より引用 http://www.nih.go.jp/niid/ja/id/2238-disease-based/sa/sfts/3143-sfts.html

松沢直樹

福岡県北九州市出身。主な取材フィールドは、フード、医療、社会保障など。近著に「食費革命」「うちの職場は隠れブラックかも」(三五館)」近年は児童文学作品も上梓。連合ユニオン東京・委託労働者ユニオン執行副委員長