悩みは消えないが、気持ちをラクにしてくれる一冊はどうでしょう?【ミルメないのかあるのか vol.1】

  by 香椎みるめ  Tags :  

【ミルメないのかあるのか】は、「ガジェット通信」や「スポーツナビ+」等で“物書き屋”を名乗っている私、香椎みるめが気に入ったアイテムを“Amazonのレビュー感覚で”紹介していく連載です。

第一回目で紹介するのは『人生に悩む人よ 藤やん・うれしーの 悩むだけ損!』。藤村忠寿さんと嬉野雅道さんが「電撃オンライン」で連載中の悩み相談を書籍化したもの。ネット掲載分の一部と新たに収録したパートもあります。

藤村さんと嬉野さんは北海道テレビで番組を制作しているサラリーマンです。代表作は「水曜どうでしょう」。タレントの鈴井貴之さん、大泉洋さんと藤村・嬉野両ディレクターだけで世界中を旅する番組は、日本中で再放送されている上に、DVDが大ヒットする「お化け番組」。それゆえ、藤村・嬉野Dは日本一有名なサラリーマンかもしれません(海外企画の際、喋る藤村さんに対し、ガイドが「俳優さんですか?」と尋ねたことも)。

「水曜どうでしょう」は2002年にレギュラー放送が終了し、その後は数年に一度のペースで新作がオンエアされています。大泉さんが全国区のドラマや映画で大活躍している一方、藤村さんと嬉野さんは、番組DVD編集、ドラマ制作、全国各地の講演会へ出演、本の出版などの活動を。悩み相談がスタートしたのはごく最近の話です。

では、本の中身について。寄せられた悩みに対し、藤村さんと嬉野さんがそれぞれの思うことを述べていく…の繰り返しです。悩みは「隣の人の声がうるさい」から「日本という国に希望が感じられない」まで幅広い。どんな読者であれ、自分に当てはまる悩みは必ずあるはずです。

「水曜どうでしょう」の話はほとんど出てこないので、読み物として十分楽しめます。たとえ、どうでしょうファンでなくとも。悩みに対する藤村さんと嬉野さんの“答え”は、まるで違います。だからこそ、それぞれの言い分がストンと入ってくるような。しかも押し付けがましくない。「俺はこう思うけど、どうでしょう?」といった感じで。

一番印象的だったのは「32歳にもなって女性経験がないことを打ち明けられない」。「どうでしょう」から最も縁遠いテーマかもしれません。番組では“動”の藤村さんが諭すように、“静”の嬉野さんが語気を強めるように答えているのが興味深い。まるで恋愛に臆病になっている人を一喝するような。恋愛だけじゃなく、人生に臆病になっている人は是非と思います。

あらためて「悩むだけ損!」というタイトルを考えてみる。藤村さんと嬉野さんの悩みに対する回答を読むと、お二人と一方通行な会話をしているように思えるかもしれません。誰かと話すことで、悩みは消えないでしょうが、それでも気持ちは幾分楽になります。きっと誰もが経験したことがあるのでは。

藤村さんも嬉野さんも私(23歳)の親と同じ世代。歳を取ったからこその考え方。なんとなく行き詰った、息詰まった時、とりあえず人と会話してみる。苦手なら家族と、親と会話してみる。「悩むだけ損!」を読みつつ、そんなことを思いました。

ちなみに、表紙に登場する藤村さんは「膝丈のパンツにタイツ」という格好。これはあったかいのでおすすめです。

香椎みるめ: フリーのライター、英日翻訳者、校閲者の三刀流。平成生まれ。性別は秘密。ウェブマガジン「GIGAMEN」で10年、計1890本以上の記事を執筆。サッカーの観戦記から始まった物書き屋は、「Yahoo!ニュース」や「ガジェット通信」に掲載された経験も活かしつつ、今は日本市場へ参入する海外企業の皆さんとタッグを組みながら、ありとあらゆる「文字を書くお仕事」をこなす日々。

Twitter: GigaMirumeK