【哀愁鉄子の物語】大連の旅(2)できたての地下鉄

  by aiko  Tags :  

 大連に行く前に、同じ会社で働く中国人の女性に、急に大連に遊びに行くことになったという話をすると、「いいですね。私は、大連からもわりと近い丹東という街の出身です」という。聞けば、丹東は、川を挟んで北朝鮮との国境の街で、向こう岸も見えるのだそうです。
 しかも、彼女は中国人だとばかり思っていたのですが、「出身は中国だけれども、実は両親は朝鮮民族なので、朝鮮語が第一言語」だといいます。中国語と朝鮮語が母語で、日本語もネイティブ並みに話せるのでほとんどコミュニケーションに違和感はなく、そして、さらに勉強家の彼女は、そこらの日本人よりも格段に英語も堪能です。しかも彼女の話す日本語は、我々日本人よりも丁寧で美しい。見習わなければいけません。
 丹東の街までは、大連から弾丸日帰りツアーで行くことができます。私は、自由行動でないと息苦しくなってしまう質なので、今回は、同じ旅程で来ていた他の日本人たちを見送り、大連の街をさまようことにしました。

「旅に出たら、駅を見よ」とは、哀愁鉄子の信条です。まずは、大連駅に行かなくては、始まりません。

大連駅は、上野駅を参考に作られたといわれています。現在の上野駅が作られたのは、1932年。前年に満州事変が起こり、日本による統治が始まったのが、1932年でした。そして、今の大連駅舎が作られたのは、1937年。緑色の手書き風の書体で、「大連」と書かれているのが、どことなく中国らしい。

上野駅同様、内装はかなり近代化されており、セキュリティチェックが万全でした。今回は、短い旅程のため、大連から出る予定はないので、切符を持たずに構内に入ることができないのは残念でした。てくてくと歩いて、駅の東側へ。こちらには、縁日のような屋台が並んでいて、おまんじゅうやトウモロコシ、フルーツなどの食べ物や、お土産物、とりあえずどこにでも売っていそうなカバンなどの袋物といったものが並んでいました。6月とはいえ、かなり日差しがするどく、暑かったので、私は帽子屋さんで、適当な麦わら帽子を買いました。20元なので、日本円にすると400円ほど。これが私が大連で買った唯一のお土産となりました。

線路をくぐるように2本の通路が、駅の北側へと続いています。それぞれ一方通行なので、混乱はないけれど、長距離バスのターミナルもあるので、ものすごい数の人の往来があります。北側には、郊外鉄道の発着駅である大連快軌の大連駅があります。

こちらは2007年にできたばかりのまだ新しい駅です。同じくセキュリティの関係で、ホームなどは見られませんでしたが、本当にたくさんの人々が吸い込まれ、そして吐き出されてきました。

暑さと人の多さで、息苦しくなってきたので、駅の南側に戻り、地下のショッピング街に降りてみました。地下街には、狭い通路の両側にびっしりと様々なお店が並んでいて、すぐさまさらに息苦しくなりました。やる気があるのかないのかわからないショップ店員さん、そして、その子どももうろうろしているのは当たり前。店番をしながら、そこで食事を取るのも当たり前。地下に降りたはいいけど、あまり涼しくなく、閉所を苦手とする私は、なかなか出口が見つからず、ややパニック気味に…。こういうところで、うきうきと買い物をするような観光客だったら、かなり楽しいのでしょうが、細かく張り巡らされた迷路のような通路をさまよい、地上の勝利広場を突き抜けて、中山路という大通りの出口を見つける頃には、息も絶え絶えでした。

さて、この中山路の下には、地下鉄が走っています。それも、今年の5月に開業したばかり。このときには、1号線(一部区間)と、2号線(同じく一部区間)が開通していました。

できたての駅は、まだ利用者が少ないからか、すべてがきれいでした。

天井までの完全なホームドアが設置されていて、安心です。きちんと並んで乗車するように、丁寧な印が足元に。

車内の行き先案内板は、左右どちらの側も同じものが貼ってあるので、片側は物理的な進行方向とは逆になっており、一瞬、乗る方面を間違えたかと焦りました。私の小さい頃は、日本の鉄道でもこういう表示があったのを思い出しました。今は、両側ともちゃんと進行方向通りの案内板を設置するのが当たり前です。

大連の地下鉄は、いろいろな難局があり、何度も何度も工期が延長されて、やっと少しずつ開通したようです。大連は、空港から市街地まで車でも30分ほどなので、とても便利ですが、そのうち空港からも地下鉄で来られるようになるらしく、もしかすると、いずれ路面電車は、すべて地下鉄に取って代わられてしまうのかもしれません。

Photos by aiko

女性鉄道ファンです。普段は会社員をしています。SLと廃線が特に好きで、ぽちぽちと各地の保存車両や廃線跡などを巡っています。ブログ「哀愁鉄子の物語」を運営しています。

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