「トワイライトエクスプレス掲示板」美人管理人は静かに見守る ~ラストランへのそれぞれの想い~

  by 古川 智規  Tags :  

3月12日の出発分をもって廃止される寝台特急トワイライトエクスプレス。鉄道ファンでなくともご存じの方も多いだろう。平成元年から二十有余年の間、大阪と札幌を走り続けてきたJR西日本が誇るフラッグシップトレインだ。

おそらく大阪、札幌両駅はもちろん、沿線にも鉄道ファンが多く詰め掛けるであろう。その模様は他の報道に任せるとして、ネット上でその愛を送り続けてきたファンの間では有名な掲示板がある。「トワイライトエクスプレス掲示板」だ。2007年5月2日(水)18時07分3秒に誕生した同掲示板は、7年と9か月の間にPart17にまで成長した。数ある鉄道系の掲示板の中でもまれに見る女性管理人である”くらり”さん。鉄道ファンのみならず幅広い層に人気の同列車だがラストランに対してそれぞれの想いがある中で、その最後をそっと見守ろうとしている同掲示板管理人くらりさんにインタビューした。

くらりさんは小柄でおしゃべり大好きな明るい女性だ。見かけによらずと言っては失礼だが、お仕事はシステムエンジニアだというから驚きだ。IT方面にもお詳しそうなので、掲示板を管理するスキルは初めからお持ちなのかもしれない。しかしもっと驚いたのは、見せていただいたご自身の写真。どうもコスプレイヤーさんのにおいがしてならない。鉄子さんではないのか?とっかかりとして、そのあたりから聞いてみた。

 

著者—いきなり驚いたのですが、くらりさんはコスプレをされるのですか?

くらり—いいえ、しません。私と気が付かない人もいるんですけど、普通に着てるんです。でも100歩譲って、わたしは心が広いのでコスプレということでいいですよ。(笑)

著者—立ち入ったことをお尋ねするようですが、彼氏はいらっしゃらないんですか?

くらり—いないんですけど、募集もしてません。仕事も忙しいもので、ということにしておきましょうか。(笑)

著者—大変失礼いたしました。(笑)では本題に入ります。もともと鉄道ファンというか、鉄子さんだったのですか?(著者注:女性鉄道ファンを鉄子と通称する)

くらり—違いますよ。古い駅とかはいいなとは思ってまして、写真を撮りだめてました。でも古い駅舎がだんだんなくなってきたので、そろそろ終わりだなとも思ってました。わたし漫画が好きなので、寝台車が出てくる漫画があったんですがオリエント急行がモデルだったんです。それで似たようなものに乗りたいと思ってトワイライトが私のターゲットになりました。

著者—トワイライトが廃止されますが、率直にどんなお気持ちですか?

くらり—イヤです。それしかないです。だってイヤなんだもん。事情はよく知っているつもりですけど、それでもあんなに人気があるのに、ねー。そう思いませんか?

著者—ごもっともです。オープンな掲示板である限りは、いろんな人が見て書き込むと思うのですが、匿名掲示板なんかを見ると荒れ放題ってことがありますよね。いろいろとご苦労があったのではないですか?

くらり—やっぱり、荒れ放題にさせるわけにはいかにという思いもあって、書き込んでくれる信頼できる人たちに協力してもらって管理しました。締め出すのは簡単ですが、トワイライトという列車がだれでも受け入れる列車だと思っているので、なるべく紳士的な雰囲気で荒らし対策をしようと思ってました。わたし、情報セキュリティスペシャリストなんです。だから荒らす人が一人二役で自作自演を演じているとか、どこからどの端末でアクセスしていて、どこにいるのかということは全部わかってるんです。いちいち指摘はしませんが、そんなのを見ているとその人が可哀想になりますけどね。もっと違うところで頑張れって。(笑)

著者—寝台券争奪戦について、今だから言えることというのはありますか?

くらり—一人では取れなかったと思います。わたし「乗りたいカード」を100枚作って、まわりの信頼のおける人に配って回りました。それでも、窓口は1日最低2回以上通いましたよ。そのおかげでスイートにも乗ることができました。 Bトレショーティー買ってここ(1号車1番の展望スイート)に乗るんだってイメトレもしましたからね。大真面目だったんですよ。(笑)

著者—そのプレミアムチケットを取得するためにオークションから高値で購入する人がいますが、どう思われますか?

くらり—ダメです。それは、夢を運ぶ列車なのにその意味を無視してるような気がします。私の勝手な思いかもしれませんけどね。乗りたい人の気持ちはわかりますが、人の気持ちを売り買いしちゃダメです。 良し悪しの問題ではないです。

著者—掲示板を運営してこられて得たものというか、良かったことは何でしょうか?

くらり—得たものは、知り合いが増えたということです。応援してくれた人と、応援したい人が増えました。これだけ世の中いい人がいるんだなって。信頼できる人が集まれる場になっているので、安心してオフ会もできました。

著者—オフ会はどうでしたか?

くらり—私は腰が重い方ですけど、そろそろ顔と名前を一致させたいと思って出てみました。掲示板での書き込み内容と顔が一致しない人が数名いましたけど、すごく楽しかったです。

 

著者—くらりさんにとって掲示板って何だったのでしょうか?

くらり—掲示板は情報を得る場というよりも、サロンデュノールのような誰でも立ち寄って何かを残して帰っていくような雰囲気が好きでした。誰かが書き込んでくれる運転状況を見て「今日もちゃんと動いてる」という実感も好きでした。わたし、大阪から北海道までの県名を言えなかったんですけど、皆さんのレポートで駅名を覚えたので言えるようになりましたよ。(笑)(著者注:サロンデュノールとは、トワイライトに連結されているロビーカーの愛称)

 

著者—最終運転日は葬式鉄さんがあふれかえると予想されますが、見送りには行かないのですか?(著者注:葬式鉄とは普段はさほど関心がないにもかかわらず廃止となると、にわかに騒ぎ出すファンのことだが概していい意味では使われない)

くらり—行かないです。でも寝台券が取れたら乗りますから荷造りはしてますけど、見送りには行きません。マナーのない撮り鉄さんが威張ったり怒鳴ったりしているのがイヤです。本当に好きな人はマナーを守っているはずですから、怒号が飛び交うのは見たくないです。お祭りの道具になっているのがつらいです。たぶん、ニュースも見ないと思います。

著者—鉄道ファンの間ではこの掲示板は結構知られているばかりか、乗ろうとする人も情報を得るためにアクセスしていたのではないかと思われますが、それだけ有名になると廃止を目前に取材とか撮影とかあったのではないですか?

くらり—テレビからありましたよ。最初はトワイライトに思いをはせている人を取材したいという趣旨だったんですが、途中から変に感動シーンを撮ろうとしているメイキング手法が嫌で画像や動画のデータは提供しましたが、出演や直接の取材には応じませんでしたし、それ以上の協力もしませんでした。ドラマチックに仕上げたい気持ちはわかるのですが、想いは人それぞれなのでヤラセとは違いますが無理な演出はダメだと思いました。テレビ局にしては下調べがお粗末だなと感じました。(笑)

著者—ズバリお聞きしますが、トワイライトの廃止で掲示板は今後どうなるのでしょうか?

くらり—実はまだ告知してないんですけど、3月いっぱいで閉鎖しようと思ってます。

著者—今日は長いお時間ありがとうございました。それぞれの想いがあって、それぞれの想いをくらりさんが大切にされていることがよくわかりました。最後に、いままで掲示板に書き込んでくれた人、見てくれた人、これからアーカイブスを見ようとする人に何かメッセージはありますか?

くらり—掲示板を見つけていただいて、どうもありがとうございます。見つけてくれて書き込んでくださったからこそ、私の中で「日本一」のトワイライトエクスプレスの掲示板になれたんだと思ってます。勝手なことを言うようですが、関わってくれた人は私の自慢です。

 

 

鉄道専門誌ならともかくテレビ局(制作会社)にも取材されていたとは驚きだが、この記事が出る時点では単独独占インタビューということで間違いないだろう。著者も何度か乗車したことがあるのでその魅力はよくわかるが、くらりさんが本当にトワイライトエクスプレスという列車を愛していることは十分すぎるほど伝わってきた。

”皆様の夢を乗せて~”というのが、同列車が始発駅を出発した直後にいい日旅立ちとともに流れる案内放送の一部だが、夢を乗せただけではなく乗らなくとも夢やもっと大切なものを運んできてくれた列車だということであろう。

平成27年3月12日、寝台券が取れた数少ないファンの夢はもちろんのこと、取れなかった、あるいは乗れなかった多くのファンの夢も混載した最終列車(列車番号下り8001、上り8002)が大阪駅、札幌駅双方を発車する。そしてその翌日から多くのファンの心の中を永遠に走り続けることだろう。

オリジナルから起算して新造から車齢40年を超える車両も存在するトワイライトエクスプレス。昭和という時代がまた一つ終わりを告げたと感じるのは大げさだろうか。一つの列車が時刻表のページから消え、歴史という時刻表に新たなページが加わる。


インタビュー時点でのトワイライトエクスプレス掲示板の最新はPart17で、すべてのPartに対してリンクが張られていている。http://9310.teacup.com/straycats/bbs

 

※写真はくらりさん提供。最後の編成写真はカメラマン小野寺稔昭撮影。

乗り物大好き。好奇心旺盛。いいことも悪いこともあるさ。どうせなら知らないことを知って、違う価値観を覗いて、上も下も右も左もそれぞれの立ち位置で一緒に見聞を広げましょう。

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