前世療法、受けた人に聞いてみたけれど

  by pape.佐野  Tags :  

そもそも「前世療法」とは、退行催眠療法のことです。ギリシャ語の「眠り」を意味するヒプノス(hypnos)から”ヒプノセラピー”とも呼ばれています。

日本では補助的医療行為として「催眠」が用いられることはありますが、医師免許取得の過程では、催眠療法の技能も理論も学びませんので、”3分診察”と言われる日本の医療現場では、ほぼ導入されていません。時間もかかるし、保険点数も低いし、薬も出せないし、その上、技能は学ばねばならないしで、現況では今後も無理でしょう。

米国医師会はすでに1958年に催眠療法を医療行為として承認しており、この療法の博士号まであります。

「前世療法」の著者として有名な精神科医ブライアン・L・ワイス博士が、患者に退行催眠療法を施している過程で、なかなか幼児期の記憶に外傷体験が認められず、「原因となる体験にさかのぼって下さい」と誘導したところ、患者が過去世(前世)と思しき体験を語り始め、驚いた博士がそれを学会に発表したのが始まりです。

「前世療法」という言葉はワイス博士の著書”Life Between Life”で行われた過去世退行催眠療法Past Life Therapyを訳者の山川紘矢氏が訳出し、著書名にしたもので、それが定着したようですね。

さて、日本でも認定団体が「催眠療法士」に認定資格を与えております。でも、医療行為ではないので保険診療にはならない。つまり、料金は高い。1セッションで1万5千円から3万円でしょうか。過去体験の抑圧され無意識化されたトラウマからの解放が目的の療法ですが、「前世退行催眠」となると、「治療」というよりも「前世を知りたい」という希望者がほとんどのセラピーです。

でも、それで自分の前世が分かるのであれば、かなり面白いし、人生観も変わりますよね。生物学的にたまたま生まれて死んでいく、そんな私たちの儚い大前提が否定されるし、連綿と輪廻していく魂の軌跡にはそこはかとないロマンも感じます。国籍・性別は関係なしに輪廻するそうなので、自分が18世紀フランスの貴婦人だったり、古代ローマの戦士だったりと、何が出てくるか分からない。

ここでご紹介する女性は、そんな前世退行催眠に興味をもって、実際にセラピーを受けられた方です。20代主婦の方で、2度ほど体験なさいました。

まず、1回目。

ここは、15000円。比較的安い料金設定でした。説明とカウンセリング等を含めて2時間半くらいのセッション。

確かに、催眠状態には落ちていくわけですが、そこで「見たように感じた」ヴィジョンは、どう考えても、自分が生み出している断片的な映像であり、とてもとても前世などの記憶が潜在意識から蘇ってきたものではなかった、とのこと。

夢の場合、実際の体験から由来するヴィジョンは15%程度。それが退行催眠だと80%が実体験由来のものに逆転するそうです。

1回目の前世退行は、どうやら10%のリスク、つまりシンボルとか比喩とか、そんな曖昧な記憶領域へのアクセスに終わってしまったようでした。

催眠療法士の技量や被験者の体調など、残念な結果の原因はいろいろと考えられます。

そして2回目。

今度は別のセラピー・ルームです。料金は20000円。時間的にも1セッション3時間以上で長めです。やはり説明やカウンセリング付きです。

また催眠状態にはなったそうですが、イメージも出てこないし、言葉も浮かんで来ない。ヴィジョンを探し求めても、そこのサイトのHPに寄せられているような「体験記」みたいな、リアルで衝撃的な映像など浮かんでこない。強いて言えば、自分でそれ風のイメージを勝手に創り上げてしまいそうな雰囲気。

彼女は「これで本当に前世の自分がヴィジュアルに見えて、その時の感情をリアルに感じられ、年代や場所まで直感的に脳裡に浮かぶ、なんてTVや体験記にあるような前世体験ができる人って、どんな人なんだろうか?」と盛んに思っていたようです。

つまり、前回と似たり寄ったりの状況となり、セッション終了。

セラピストは「あなたは覚醒しやすいタイプですね」と言ったそうです。

「私に問題があるんだと思います。かかる人はかかると思いますよ。セラピストの方は一生懸命で、退行させてみせるという確信に満ちていましたから」と彼女は言いますが、もう三度目のチャレンジはないと付け加えました。

すでに前世のみならず、魂となって肉体を離れた状態への退行や中間世というまだ肉体に宿る前の状態への誘導など通して、終わったばかりの人生への後悔や、これから始める人生の”課題”など、退行催眠によって引き出している記録が多く発表されています。セラピストのみならず医学者らの研究書も多いし、日本でも国立大教授らの研究も行われました。日本軍の対空砲火で撃墜されたアメリカ軍パイロットの生まれ変わりであるアメリカ少年が、来日して前世での死に場所である小笠原諸島父島沖に献花するテレビ番組も放映されました。国立大教授だった飯田史彦氏の「生きがいの創造」シリーズは、氏の前世退行の科学的研究をベースに始まったものです。

しかし、だからと言って、前世退行催眠によって、そんなドラマティックな過去世回帰が出来るかと言うと、そうでもない事実がある。療法士の技術的問題、被験者個人の問題、あるいは「何ごともない平凡な前世の記憶は残らない」という説もあるし、上述のワイス博士も成功率は50%~70%とも言っている。

そんなリスクを覚悟の上で、前世療法、というより前世退行催眠、関心のある人は受けたら良いと思いました。

筆者は、東京都目黒区で開業なさっているある女性セラピストの方を知っています。その方は、精神科勤務の医師でしたが、薬物療法ばかりの医療現場にうんざりなさって、真の医療は催眠療法であると感じ、ヒプノセラピストに転向なさった筋金入り。開業以来、前世の存在を確認できなかったクライアントは皆無とのこと。機会があったら、私自身が被験者になってリポートしたいと思います。

※画像:『写真素材 足成』よりhttp://www.ashinari.com/

 

30年のサラリーマン生活後、心理カウンセラーとしてNPO法人東京カウンセル設立、無料のメール・カウンセリングを行っています。「無料」そして「匿名メール」という気楽さから、多種多様な年齢層の恋愛問題から精神疾患まで、現代の「悩み」「トラブル」「精神医療の実態」全般に精通しています。日々の事件報道も、関わる個人の心理に踏み込んで行くと、物事の真相が理解でき、また悪いことも善いことも、共感の中に消化できるものです。少し違った視点からの記事をアップしていきたいと思います。

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