神聖かまってちゃん 26才の夏休みツアー 初日 in nicofarreをニコ生でみた。

  by 成馬零一  Tags :  

近年、ニコニコ生放送やユーストリームでライブを同時配信するミュージシャンは増えていて、今や神聖かまってちゃんの専売特許ではない。
しかし神聖かまってちゃん以上に配信をつかいこなしているミュージシャンは他にはいないだろう。

 

10月2日。神聖かまってちゃんの「26歳の夏休みツアー」最初のライブが六本木ニコファーレで開催された。ニコファーレは90年代に旺盛を極めたディスコ、六本木ベルファーレ跡地に設置されたライブ会場で、ニコニコ動画との連携に力を入れているイベント施設だ。

今回、残念ながら会場のチケットはとれなかったが、良い機会だと思い、ネットチケットを購入してモニター越しにたのしむことにした。
ネットチケットの料金は1500円。これを高いと思うか安いと思うかは個人差があるだろうが個人的にはいままでに行った神聖かまってちゃんのライブの中でも、最上級の出来だった。

19時50分。チケットに書かれた暗証番号を入力して、アクセスする。
会場を埋め尽くす観客たちの姿が画面に映るなか、「まだか」「はやくはじめろ」「音が入ってないぞ」というカラフルなコメントが次々とモニターに映しだされる。
やがて、開演時間の20時から10分程遅れてかまってちゃんのメンバーが会場に現れる。
一曲目は「白いたまご」。多面体LEDスクリーンに映し出された映像と、パソコンのモニターにうつる無数のコメントが見る者を圧倒していく。

ニコ生のコメントと会場のレスポンスにこたえながら、一曲一曲グダグダと進行していくボーカルのの子。グダグダが溜めになるためか曲に入ると会場は一気に盛り上がり、終わるとすぐにクールダウンし、また元のグダグダに戻る。

ライブという祝祭の場で、彼等は必要以上にミュージシャンであることを演じようとしない。自然体というには、あまりに隙だらけのスタンスをライブで見るたびに「ここはお前らの家じゃねーんだぞw」とツッコミを入れたくなる。観客の側も、そんな気さくさを好んでいて、気軽に声援を送り、メンバーたちも即座にこたえる。まるでネットのオフ会みたいだ。もちろんの子くんは何度もカッコいいロックンローラー的なことを言うのだが、それはある種、お笑い芸人のボケのようにファンは受け取っている。もちろん中にはストレートに感動している人もいるかもしれないだろうが、それはきっと、言葉ではなく、の子がまき散らす存在感に圧倒されているのだろう。

そして、そんな彼等の意図とは別にモニター上のコメントがツッコミを入れていく。

配信を見てあらためて思ったのだが、今は優れたクリエイター程、ボケに徹して、ツッコミは視聴者に預けている。そして書き込まれた無数のコメントを通して視聴者を参加させ、レスポンス自体を作品の一部にしてしまうのだ。

それを繰り返すうちにバンドと観客と、そしてモニター越しにみている僕たちネット視聴者との距離がかぎりなくゼロに近づいていく。そしてライブだからこそ実感できる、何が起こるかわからない緊張感が常にかまってちゃんのライブには存在する。

セットリストは決めていないし、歌詞もの子が即興でガンガンかえていく。もはや曲の体をなしていない状態で、の子の怨念がこもったマントラのように連呼する言葉がまた、異様な迫力がこもっている。
そういう言葉に触れると今日はいいもの見たなと、いいおみやげをもらったような気分になり、またライブにいきたくなる。

神聖かまってちゃんの魅力を、音楽性というだろうし、の子の書く歌詞だという人もいるだろうが、僕が感じる最大の魅力は、常に存在する「オレの家」感と、何が起こるかわからないライブ感だ。そしてそれを、ニコニコ生放送という配信メディアが倍増していく。

僕が以前みたライブの中でもっとも印象に残っているのは
去年の9月19日に渋谷のSHIBUYA-AXでのライブだ。
このときにはステージのバックにLEDスクリーンが設置され、同時配信されたニコニコ生放送の無数のコメントが表示され、ライブ中に「バンドメンバーの中で誰を坊主にするのか」というアンケートがとられた。

演奏は必ずしもうまくはないし、曲と曲の間はグダグダで、演奏できた曲も少なかった。一目かまってちゃんを見たいと思った古参のロックファンからは「真面目にやれ!」と罵声が飛び、ライブが終わった帰り道では「オレの見たかったものはこれだったのかなか?」とぼやく声も聞こえた。

その後、かまってちゃんの演奏はうまくなり、盛り上がったライブも何度も体験したが、かまってちゃんのことを考えると、いつも思い出すのはあのライブだ。

たぶんあのライブに違和感を感じた人は、神聖かまってちゃんの音楽を聴くために会場に向かったのだろう。しかし神聖かまってちゃんは上手いミュージシャンであることよりも、「何かをやらかす人たち」であろうとしていた。
ボーカルのの子は「音楽なんて終わっている。配信の方が面白い」とよく口にしていたが、それは今日のニコファーレのライブも含めて一貫している。そして、そういった音楽を踏みにじるような行為を経由することで、逆説的にかつてロックと言われたものを体現しているのが彼らなのだと思う。

その後、ライブは盛り上がり続け、22時で本来終了のはずが、の子が延長を申請。運営の粋なはからいで30分程延長された。

アンコール以降は神聖かまってちゃんのキラーチューンである「23才の夏休み」「ロックンロールは鳴り止まないっ」「学校に行きたくない」「ぺんてる」の5連コンポで終了と思わせながら、最後はまさかの「26才の夏休み」。少し泣き顔になりながら歌うの子の姿が、しっとりとした余韻を残しライブは幕を閉じた。自分の確認した限りでは、終了した時点で入場者数は69803人に達していた。

 

おそらくスクリーンに映るコメントを利用してライブを盛り上げる手法自体はこれから一つのスタイルとして定着していくだろう。しかし神聖かまってちゃんのように上手く使うためには、悪意も含めたコメントのすべてを受け入れる懐の深さが求められる。いや、むしろ神聖かまってちゃんは、ネットの向こう側から流れてくる悪意それ自体を積極的に求めて自分たちの中にとりこんでいるのだろう。それが今現在、彼らが他の追随を許さない理由なのだと思う。

 

セットリスト

1.白いたまご
2.レッツゴー武道館っ
3.大島宇宙人
4.自分らしく
5.天使じゃ地上じゃちっそく死
6.夕方のピアノ
7.コンクリートの向こう側へ
8.ねこラジ
9.スピード
10.いかれたNEET
11.グロい花
12.黒いたまご
13.ベイビーレイニーデイリー
14.美ちなる方へ
15.男はロマンだぜ!たけだ君っ
16.ちりとり

アンコール

17.23才の夏休み
18.ロックンロールは鳴り止まないっ
19.学校に行きたくない
20.ぺんてる
21.26才の夏休み

成馬零一名義でライターの仕事をしています。 得意ジャンルは、マンガ、アニメ、ドラマ、映画といった物語コンテンツのレビューで、最近はアイドルにも興味を持っています。  一応、テレビドラマ関係の書籍も出しているので、ドラマ感じの記事(例えば、放送中の作品についての紹介やレビュー)を得意としています。もちろん、それ以外のジャンルの記事も可能です。  以下は執筆した媒体や書籍です。ご参考ください。  著作 TVドラマはジャニーズものだけ見ろ!(宝島社新書)      共著 ジャニドラの嵐 平成ジャニーズ・ドラマ完全ファイル!(宝島社) ライターとして参加した本・雑誌  クリティカル・ゼロ コードギアス反逆のルルーシュ(樹想社)  雑誌サイゾー 月刊カルチャー時評、クロスレビュー(ドラマ)他に参加。  幕末の陰謀(双葉社)  音楽誌が書かないJ・POP批評(SMAP、嵐ほか)(宝島社) CDジャーナル(音楽出版) アニメCDジャーナル(アニメレビュー)

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