冬にうってつけ! 昭和の大歌手が愛した「キヨ鍋」

2012年に惜しまれながらこの世を去った歌手、尾崎紀世彦さん。

自由を尊ぶ人がらでアウトドアライフと酒を愛したことで知られるが、彼が生前に執筆したエッセイ『ベーコン野外術』(マガジンハウス刊)では実に”尾崎紀世彦らしい”寒い季節にうってつけのオリジナル・レシピが紹介されている。

その名も『キヨ鍋』!!

尾崎とグルメを愛してやまない筆者が『ベーコン野外術』での記述をもとにできる限り忠実に再現してみた。

材料(2人前)
・日本酒4合(720ml) 玉乃光 純米吟醸(玉乃光酒造)
・豚バラ肉400g   5センチ幅、厚さ1ミリくらいの薄切り。 
・白菜1/4      5センチ幅くらいに切る。
・大根1/2      たっぷりおろして小鉢などに入れておく。
・醤油適量

調理
(1)中火で日本酒を沸かせ、ある程度アルコールを飛ばす。
(2)白菜の芯の部分、豚バラ肉、白菜の葉の部分の順で鍋に入れる。
(3)適度に煮えた豚バラ肉と白菜を、醤油をかけた大根おろしにからめて食べる。

キヨ鍋の要は日本酒。『ベーコン野外術』では”安酒の日本酒”と書かれているのだが、安すぎて失敗するのも悲しいので今回は4合1000円ほどでスーパーやコンビニなどにも流通している『玉乃光 純米吟醸』を使用した。派手さはないが米のやさしい味わいを感じることのできる酒だ。

飲んで美味しい酒を火にかけるのはすこし気が引けるがやむを得ない。ドボドボと鍋にそそぐ。

沸騰すると酒の風味が損なわれるので、塩梅を見ながら中火で10分ほど熱を加えてアルコールをとばす。
白菜と豚バラ肉を切り分け、大根をすりおろしているとちょうどいい時間だろう。

あっけなく準備の済んだキヨ鍋。
白菜の芯の固い部分、豚肉、白菜の葉の部分という順序で投入して、これまた中火で火を通すともう出来上がりだ。

この時点で日本酒のアルコール臭は消え、かわりに米の甘みと豚肉の甘みが絶妙にミックスされたなんとも芳醇な香りがたちあがっている。
もう我慢できない!あとはおもむろに具を醤油をまぶした大根おろしにつっこみ食するのみ!

「う、うまい!」

日本酒のおかげで旨みをまったく逃がさないまま……いや、むしろ旨みを増幅された豚肉と白菜がピリッとした大根おろしとからんで口内で味の四重奏を奏でだす。どこまでも純粋で、芳醇で、奥ゆかしい刺激に満ちた味!しかも汁はもう天界の飲物!

これまでさんざん山海の珍味をむさぼってきた筆者だが、このキヨ鍋に匹敵するほど美味い鍋料理はてっちり、スッポン鍋くらいのもの……それもそんじょそこらの店では不可能だ。

単品つつくのもよし、白ごはんとあわせるのもよし、酒とあわせるのもよし……と夢中でぱくついてる間にあっという間に空にしてしまった。
恐るべしキヨ鍋!

という具合で尾崎をしのぶため、彼のトレードマークだった蝶ネクタイを装着してキヨ鍋をいただいた筆者だった。これだけシンプル、お手頃な具材でここまで美味しい食べ物はそうそうないと思う。尾崎を知る人はもちろん、知らない若い方にもぜひぜひ試していただきたい一品だ。

※一部画像を『AMAZON』から引用しました

■シンガーソングライター、音楽・芸能評論家 ■奈良県奈良市出身 ■1984年3月8日生まれ ■関西学院大学文学部日本文学科中退 2005年、加賀テツヤ(ザ・リンド&リンダース)の誘いにより芸能活動をスタート。 2007年からは田中友直をサウンド・プロデューサーに迎えソロに転向。 代表曲に「だってしょうがないじゃん」(2011年)など。 近年はテレビ、新聞、ウェブメディアなどの媒体で音楽・芸能評論家としても活躍の幅を広げている。

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