牛乳が無ければ給食ではない?突っ込みどころ満載な給食のガイドライン

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ご飯に牛乳、おかずがパン、味のないおかず…学校給食と言えば、奇抜なメニューや食べ合わせが話題に上がる。しかしながら、こうしたメニューは決して意図的なものではなく、給食に関するルールに厳密に従った結果なのだ。

学校給食にまつわるルールとしては、文科省が給食の基本的なあり方を定めた『学校給食法』と『学校給食法施行規則』、そしてメニューの栄養素や調理室の構造、設備の規格など具体的なルールを規定する『学校給食実施基準』などがある。それではまず、給食とは何なのか。『学校給食法施行規則』の第一条二項はこう規定している。

完全給食とは、給食内容がパン又は米飯(これらに準ずる小麦粉食品、米加工食品その他の食品を含む。)、ミルク及びおかずである給食をいう。

ここに言う完全給食とは、主食、おかず、飲み物などが一通り揃った、通常のメニューの給食である。つまり、給食とは、飲み物が牛乳でなければならないのだ。ちなみに、ご飯やパンなど主食のみを家から持参する『補助給食』や、弁当など食事をまるごと家から持ってくる『ミルク給食』でも、飲み物は牛乳と規定されている。

さらに見ていくと、『学校給食実施基準』にはメニューの栄養価について詳細に規定している。例えば、一般的な中学一年生に出す給食については、年齢や地域などの条件によって変化するものの、おおむね以下の栄養価を満たさなければいけない。

・エネルギー 820キロカロリー

・タンパク質 32グラム

・脂質 摂取エネルギー全体の25%~30%=205~246グラム

・カルシウム 430ミリグラム

・鉄分 4グラム

・ビタミンA 0.264ミリグラム

・ビタミンB1 0.51ミリグラム

・ビタミンB2 0.7ミリグラム

・ビタミンC 27ミリグラム

・食物繊維 8.2グラム

・ナトリウム(食塩)4グラム以下(困難であれば6グラム以下でも可)

これら全ての基準を満たそうとする場合、曲者となるのはカルシウム、そして意外にもエネルギーだ。牛乳無しで430ミリグラムのカルシウムを摂取しようとする場合、豆腐なら3.5丁、ししゃもなら7匹、小松菜なら4分の3束をもりもり食べなければならない。ところが牛乳を一本飲むだけで、一気に220ミリグラムのカルシウムを稼ぐことができる。

エネルギーについては、ご飯茶碗に一杯もしくは食パン(6枚切)で約160キロカロリーだが、給食は一人分の量や品数が限られているため、肉や油など高カロリーの食品をを積極的に使用しない限り、800キロカロリーを摂取することは意外にも難しいのだ。そこで主食が焼きそばでおかずが菓子パンといった炭水化物コンビが登場、というわけだ。これについても、牛乳を一本飲めば約140キロカロリーを摂取できる。要するに、牛乳は栄養素の基準を満たすための簡単な方法でもあるのだ。

『学校給食実施基準』には、上に挙げた以外の栄養についての基準もなければ、栄養バランスや野菜や果物の摂取量についての記載もない。つまり、上記の栄養素さえ満たしてしまえば、あとはどれだけヘンテコなメニューであろうと、ルール上は問題がないのである。そのため、手軽に基準を満たすことのできるメニューに偏りがちなのは、当然とも言える。

 

『食育』を推し進めるなら、まずは給食のルールを変える必要がありそうだ。

興味関心は政治、地方自治、日本文化(和食・特産物・郷土料理・伝統工芸・無形文化)など。 連載を通じて皆さんに日本文化を知ってもらい、その地域の活性化につなげられればと思います。