人類の敵“アルツハイマー病”を克服せよ!エクソソームで抑制可能か?

  by なみたかし  Tags :  

 エクソソームでアルツハイマー病抑制か

認知症800万人時代。 認知症に占める割合がおよそ7割と最も高いのがアルツハイマー病。近年発症者が急増している。 未だに完治させる方法は無い。

年齢別に認知症の人の割合をみると、65~69歳では1.5%だが、年齢が5歳上がるごとに約2倍になって、85歳以上では約4人に1人が認知症であるとされる。最近の研究では病が発症するまでに原因物質が増加し、25年もの年月をかけて発病することもわかってきた。

認知症の原因とされるのはアミロイドβタンパク質と、タウタンパク質の増加だ。症状が出始めるはるか前から薬を投与して予防する方法や、既に症状が出始めている場合でも、進行を食い止める新薬の開発が最終段階を迎えている。さらに運動不足や睡眠不足の解消が意外な効果を発揮することもわかってきた。

今回、神経培養細胞が分泌するナノ顆粒のエクソソームを投与すると、アルツハイマー病の発症原因とされる脳内アミロイドベータ(Aβ)濃度が低下してアミロイド斑の蓄積も減ることを、北海道大学大学の研究チームがマウスの実験で突き止めた。エクソソームがアルツハイマー病の発症に関わっている可能性を示すもので、新しい予防や治療につながりうる成果として注目される。 参考:サイエンスポータル → http://scienceportal.jp/news/newsflash_review/newsflash/2014/08/20140819_01.html

 エクソソームは、がんにも関係

エクソソームは細胞から分泌された脂質二重膜で形成される直径40nm~100nm程度の小胞。生体では唾液、血液、尿、羊水、悪性腹水等の体液中で観察され、培養細胞からも分泌されている。近年、エクソソームには様々なタンパク質やRNAが含まれている事が報告され、細胞間の情報を伝達する役割を担っている可能性が指摘されている。

最近では、がん細胞がつくるエクソソームが血液などの体液に出しており、乳がんや大腸がんのエクソソームには、それぞれ特有のマイクロRNAを含んでいることが確認されている。

エクソソーム中のマイクロRNA は22塩基ほどの小さなRNA 。ヒトのマイクロRNAは2500種以上知られているが、このうち、各種のがん特有のマイクロRNAは、がんの転移や病態変化などに関与しており、新しい疾病マーカーとして有望視されている。

8月18日、国立がん研究センター(東京・築地)で、たった1滴の血液に含まれるマイクロRNAを計測して、がんを簡単に早期診断できる画期的な次世代診断システムの開発を目指すことが発表された。

このプロジェクトでは、国立がん研究センターが患者の同意を得て収集したバイオバンクの膨大な血液試料から特異的なマイクロRNAを探し出す。そして、各臓器のがんごとに5000例以上、計6万5000例以上実施して絞り込み、マイクロRNAのデータベースを構築する計画だ。

 アルツハイマー病とその対策

これまで不治の病とされてきたアルツハイマー病だが、その原因が明らかになると同時に、少しずつ対策も講じられている。これまでの成果を見てみよう。

アルツハイマー病発症には様々な要因が関与しているが、脳内でのアミロイドβタンパク質と、タウタンパク質の増加と蓄積が主な原因と考えられおり、脳内のアミロイドß レベルを制御することが治療・予防戦略の一つとして有望視されている。

原因とされるアミロイドβタンパク質と、タウタンパク質については、これらを減少させる医薬品「LMTX」や「ガンテネルマブ」が臨床試験中である。

また、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)が開発したプログラムでは、有酸素運動をしながら簡単な計算練習をして脳をはたらかせる。すると、脳の神経細胞が再生。海馬の萎縮を防ぐことがわかっている。

これまでの調査で、魚(EPA・DHAなどの脂肪酸)の摂取、野菜果物[(ビタミンE・ビタミンC・βカロテンなど)の摂取、赤ワイン(ポリフェノール)の摂取などが本症の発症を抑えることが分かっている。

1日に1回以上魚を食べている人に比べ、ほとんど魚を食べない人は本症の危険が約5倍であるというデータがある。米国の加齢研究所は「精製された炭水化物(例えば白い砂糖)は問題を起こす可能性がある」と述べている。

また、「パプア・ニューギニアのキタバ島では、イモ、ココナッツ、魚を食べるが、空腹時のインスリン濃度は低く、認知症は見られない」とする報告がある。

運動習慣としては、有酸素運動で高血圧やコレステロールのレベルが下がり、脳血流量も増すため発症の危険が減少する。ある研究では、普通の歩行速度を超える運動強度で週3回以上運動している者は、全く運動しない者と比べて、発症の危険が半分になっていた。

今回、神経培養細胞が分泌するナノ顆粒のエクソソームの投与で、アルツハイマー病の発症原因とされる脳内アミロイドベータ(Aβ)濃度が低下することがわかった。やがてアルツハイマー病も人類は克服できるのではないだろうか。

画像:正常な脳とアルツハイマー患者の脳 – http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Alzheimer%27s_disease_brain_comparison.jpg#mediaviewer/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Alzheimer%27s_disease_brain_comparison.jpg

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