ウマは耳で意思疎通する?謎の多い動物の行動・コミュニケーション

  by なみたかし  Tags :  

 動物行動学

動物行動学(ethology)は、エソロジーや行動生物学とも言われる。動物の行動を研究することにより、行動の総合的な理解をめざすものである。

フォン・フリッシュは、ミツバチのコミュニケーションに関する研究で有名だ。彼はハチに印をつけて、その行動をガラスばりの特別な観察用箱を使って研究した。その結果、働きバチがなかまにえさ場の位置を、円形ダンスと8の字ダンスで知らせることを発見した。また、ミツバチが時間や色を学習できることも研究している。フォン・フリッシュは、これらの研究のほかに、ミツバチや魚類の視覚と化学感覚に関する研究も行っている。

ローレンツは、エソロジーの創始者と言われている。特に鳥類のコクマルガラスとハイイロガンについて研究を行った。彼の有名な「刷込み」の論文(1935年)の中で、「ヒナがふ化直後の短時間の間に最初に目にした動く物体を、同種の仲間と認め、その物体に刷込まれる。」ことを発表した。

ティンバーゲンの研究で有名なものは、イトヨ(トゲウオの一種)に関するものである。繁殖期の雄の求愛または攻撃行動がおこるメカニズムを実験を通して解明した。「セグロカモメの世界」(1953年)では、カモメのテリトリー行動などの社会行動を書いている。また、人間の攻撃行動について、“人の攻撃性は,植物食から、狩猟を行うようになってから発達した遺伝的本能である”と考えた。

これら3人は、その成果により、1973年にノーベル生理学・医学賞を受賞している。

最新の研究報告によると、 ウマは耳で意思疎通をしているという。イギリス、サセックス大学のジェニファー・ワーサン(Jennifer Wathan)氏は、「ウマは大きくてよく動く耳を使って仲間の注意を一定方向へ向かせることができ、食料のありかを教えたり、敵の居場所を知らせている。」という研究発表をした。

この研究は、例えば動く耳など、人間には備わっていない動物のコミュニケーション能力に焦点を当てた点としては草分けで、社会性動物がどのように意思疎通を図るのかを理解する上で重要なステップである。

 ウマは耳で意思疎通?

動物の意思疎通に関する過去の研究では、主にボディランゲージなど人間も持っている特性に焦点があてられてきた。ウマの目を通して世界を見てみれば、こうした動物たちがどのように情報を共有しているのかがより深く理解できるようになるだろうと、ワーサン氏は期待する。

人間と同じように、ウマも社会性動物である。同じ種同士の群れで暮らすことは、難しい面もあるが、利点も大きい。互いに助け合い、群れの一部が敵の見張り役をしている間、他の仲間は食べたり食料探しに専念できる。しかし、このシステムが機能するためには、同じ種の他のメンバーたちに情報を伝える手段を持っていなければならない。

そこでワーサン氏は、ウマたちが耳の向きを変えて仲間に方向を指し示したり、周囲に何か注意を払うべきものがあるかを知らせているのではないかと仮説を立てた。

この仮説を実証するために、ワーサン氏とそのアドバイザー、カレン・マコンム(Karen McComb)氏は、牧場で餌の入った2つのバケツを置き、そのうちの1つを覗き込むウマの姿を写真撮影した。

それらの写真をグループ分けし、第1グループの写真ではウマの耳をマスクで覆い、第2グループではウマの目をマスクで覆った。第3グループの写真は、頭のどの部分も隠されていない。次に、これらの写真を等身大に拡大し、別のウマに見せてから、餌のバケツ2つを選ばせた。

過去に行われた実験で、ウマは写真に写っている別のウマを認識できることが証明されている。

目と耳が覆われていない第3グループの写真を見せられた時、ウマは75%の確率で写真のウマが覗いていた方のバケツを選んだ。

目または耳のどちらかが覆われている写真を見せられた時、バケツの選び方は不規則だったが、耳が出ている写真を見た時の方が、目が出ている写真の時よりは少しだけ好成績を出した。(National Geographic news)

 動物のコミュニケーション

動物のコミュニケーションとは、ある動物個体の行動のうち、現在あるいは将来に他の動物個体に影響を与えるものを指す。動物のコミュニケーションの研究は動物行動学、社会生物学と動物の認知能力の解明に大きな役割を果たした。

動物のコミュニケーションのもっとも有名な形は、特徴的な体の部位の顕示や特徴的な動作である。このふたつはしばしば組み合わされ、特徴的な部位を協調する動作となってあらわれる。 動物行動学の歴史で重要だったのは、セグロカモメの親の巣のヒナに対するクチバシの顕示だった。

多くのカモメのように、セグロカモメは明るい色が付いたクチバシ(全体的に黄色く下クチバシの先端が赤い)を持つ。食物を持って巣に帰ったとき、ヒナを見つけるとクチバシで地面を軽く叩く。これは空腹のヒナから「物乞い行動」を引き出す。ヒナは親のクチバシをつつき、食物を吐き戻させる。完全な信号のやりとりは以下のようになる。特徴的な部位:赤い点の付いた嘴、特徴的な行動:嘴で地面を叩き嘴の先端を顕示する。

ニコ・ティンバーゲンと同僚たちによる調査はクチバシと先端の赤色のハイコントラストがヒナから適切な反応を引き出すために重要であることを明らかにした。ヒナは明るい色をした物体は何でもつつくが、そういった物体の中で常に報酬として食事を与えるのは親のクチバシだけである。この行動は古典動物行動学では本能行動に分類されるが、報酬によって行動が強化されているかも知れない。明るい色をしたプラスチックやガラスを飲み込むことがカモメのヒナの一般的な死因である。

他のコミュニケーションの例として鳥のさえずりがあげられる。一般的にはオスだけがさえずるが、一部の種では両性が交代でさえずる。これはデュエットと呼ばれている。鳥のさえずりは音声コミュニケーションの中でも代表的な例である。音声コミュニケーションの他の例には、多くのサルの警告の叫び、テナガザルの縄張りを主張する叫び、カエルなどの求愛のための鳴き声などがある。

嗅覚コミュニケーションはいくつかの例を除いてまだ明らかになっていない。多くの哺乳類では特徴的で長く残る匂いを出す線(臭線)があり、その匂いを彼らがいた場所に残す習性がある。また嗅覚コミュニケーションでは糞や尿、汗も利用される。例えばスナネズミには腹部に臭線があり、腹部をこすりつけて匂いを残す。

ゴールデンハムスターとネコは横腹に臭線があり、横腹をこすりつけて匂いを残す。ネコは額にも臭線を持つ。ミツバチやアリは匂いで巣の仲間を判断する。巣の入り口で匂いをかぎ、仲間と認められなければ巣に入ることができない。このようなコミュニケーションは異種間で用いられることもある。

「クジラの歌」は、コミュニケーションを目的としてクジラが発する一連の音である。特定の種に属するクジラ(代表的には、ザトウクジラ)が発する、反復的でパターンが予測可能な音で、その発声が、鯨学者に人間の歌唱を想起させるものを指すために「歌」とよばれる。(Wikipedia)

画像: Author Robin Müller http://free.gatag.net/2010/07/13/040000.html

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