JUST A WAY~どの道へ

  by アルナオ  Tags :  

ディープインパクトに日本調教馬で唯一先着したハーツクライを父に持つジャスタウェイが世界のトップに立った。父と同じく4歳秋から本格化し、ドバイで世界を制したが天皇賞春を回避する馬が増えたのは悲しくもある。

 

馬だけではなく、野球・サッカーなど世界で活躍する日本人が増えた。トップクラスが海外に活躍の場を求めると、国内が空洞化してくる。その対策として世界大会が開催され、世界各地で活躍する自国出身のプレイヤーが一堂に会するドリームチームを結成するなどメインコンテンツとなっている。

スポーツの世界では移民問題を世界大会を中心にすえることで一応の解決はしていると考えられるが、労働市場における移民は各国で失敗しており、少子高齢化に悩む日本は移民に解決を求めることができなくなっている。

 

移民賛成派は、減りつつある労働力を移民によって確保し、移民が出産することで少子化を食い止めることができるという主張をしている。一方移民反対派は治安の悪化や賃金の低下、社会保障費の増大を懸念する。賛成派と反対派がかみ合っていないので、一つずつ分析する必要がある。

まず、労働力の問題。日本の一人当たりの労働コストは世界18位で、GDPが世界3位ということと比較するとかなり割安になっている。これは購買力平価換算されたもので、物価が高い日本では賃金が安く感じられるということである。日本に出稼ぎに来て短期間で稼いで帰るなら魅力はあるが、日本で結婚して子供を育てるという長期滞在を考えると魅力はない。労働コストが高くなくても、仕事が多く、望めば早朝から深夜まで働くことが出来るなら自国で失業しているよりましと考えることは出来る。しかし、技術の進歩で仕事が減るスピードと、少子化で労働人口が減少するスピードのどちらが速いかは不明である。アベノミクスで雇用が増えたが、条件が若くて優秀から若くて普通程度に緩和されたくらいで、ロストジェネレーション世代が恩恵に預かったと言う話は聞かない。現時点では少子化より仕事が減少するスピードの方が大きいのではなかろうか。労働力が本格的に不足する状況になっても、エネルギー不足による技術革新のように労働力を補完する技術革新がある可能性もある。海外でも可能な仕事は海外に全て移してから移民を考えるべきであろう。

次に少子化対策としての移民について。労働コストが高くない日本では、子供を育てる誘引が低い。年収と出産には相関関係があり、縦軸を出産数、横軸を年収とするとUの字のような曲線を描くことになる。年収が極めて低いと子供は労働力として期待されるから多産になり、ある程度以上の年収があれば子育てを楽しむためと後継者としての必要に駆られて子供をもうけるようになる。移民に低賃金を求めるなら後者の出産はありえない。移民で出生率を上げるなら前者になるのだが、日本では子供を働かせることに大きな制限がある。さらに日本の最低賃金法に従えば多産にならざるを得ない収入にすることが不可能になるため、移民に限って最低賃金法を適用除外にするか、最低賃金を引き下げる必要が出てくるが、生活保護水準と大差ない現状から引き下げれば人権問題になり、憲法違反の疑いが出て来る。移民に子供をもうけてもらうのは非常に難しいと言える。

最後に反対派の主張を分析する。移民に任せる労働は海外移転できない労働ということになる。飲食店や小売店の店員などになるが、コミュニケーション能力が必要になる。移民が日本でコミュニケーション出来るレベルになるのは相当大変であろう。コミュニケーション不要な仕事で、物質が介在していなければネットを通じて海外に仕事を移転すれば済む。コミュニケーション不要で物質が介在するもの、つまり、海外で製作した場合に日本に輸送するコストが高いものに関する仕事しか移民に任せることができるものはなさそうだ。こういった仕事はオートメーション化が進めばなくなってしまう。完全に機械化された場合、主な生産費用は原材料費のほかは地代と電気代になる。日本で地代と電気代が外国より割安になることはありえないだろう。自由貿易推進の中で、移民のために保護貿易を継続するのは非合理的過ぎる。結局コミュニケーション能力が低くても何とかなるところに配置することになるが、言い換えれば日常会話が可能で、日本の文化に慣れ親しんでいる人が移民になるということである。日本文化に憧れて日本語を学び賃金的には魅力のない日本にやってくるなら、治安悪化の可能性は日本人に比べて高くなるとは言えないだろう。

移民による賃金の低下を予想するところが多いが、合法的な移民は最低賃金法を逸脱できない。つまり、移民の中で最も生産性の低いところに最低賃金を設定せざるを得なくなる。移民の中に日常会話も出来ない人たちがいれば、日常会話が出来るだけで最低賃金からいくらかプラスしなければならない。日本語が流暢で大学を出ているとなれば最低賃金の倍は出す必要があるかもしれない。労働市場である以上、差があるものには価格差をつけなければならない。賃金が安くても働くといった日本的慣習が崩れればGDPに見合った賃金まで上昇する余地はある。

社会保障費の増大は生活保護や年金に移民が加わることで負担が増大するということのようだが、逆に維持可能なシステムになるのではなかろうか。国民負担率が4割を超えている現状では、現在のシステムを痛みをこらえながらもたせているとしか言えないが、これが5割に近付くようなら破綻せざるを得ない。

 

移民問題の最大の問題は、考え得る問題の対処法を構築してから受け入れるという発想がなく、考えなしに入れるだけ入れて、得しようが損しようが自己責任というギャンブル好きな発想と、問題がありそうなら例えWinWinの関係が構築できるとしても否定したいというギャンブル嫌悪的発想の両極端に分かれてかみ合っていないところにある。

日本競馬は外国に追いつき凱旋門賞で勝つという目標を持ち、ジャスタウェイという世界一の馬を走らせる道を作ってきた。一方で伝統のある天皇賞が春秋ともにトップホースがいない状況になり、ジャパンカップダートがその歴史を終えるなどちぐはぐな運営のイメージが強い。現実の問題に対処していくのは大切なことではあるが、根底に走る道がないと空中分解してしまう。政権が悪いから他の党に入れようではなく、細かい政策を比較するのでもなく、これからどういう道を歩んでいくのかを示してくれると議論がかみ合うのではなかろうか。

(画像はJRAのHPより)

 

 

何でもかんでも競馬に例えてしまうのが悪い癖なので、競馬は門外漢という皆様には読みにくいかもしれません。逆に競馬好きの皆様は法律経済のあたりがわかりやすくなるかも?