インドア派のチキンが自転車に乗ったら

  by マユゾノ  Tags :  

初めまして、マユゾノと申します。無職故に時間だけはありますので、ちょくちょく書いていけたらと思います。以後、お見知りおきを。

突然ですが皆さん、自転車に乗るのはお好きでしょうか。もしくは、自転車自体がお好きでしょうか。
僕はどちらも好きで、ビアンキ社のロードバイクを1台とクロスバイクを1台所持しております。インドア派のクセに。

このビアンキと言う会社は『チェレスティカラー』と呼ばれるエメラルドグリーンの車体が特徴でして、この色は社のあるイタリアの空の色をイメージしているそうです。確かに、オリーブの木が生い茂る丘と空の色が混じったら、あんな色に見えるのかも知れません。

愛着のある自転車を持っていると、天気のいい日にはiPodでQueenの『Bycycle Ride』を聴きながらサイクリング、なんてしたくなるものです。

がしかし、現実はそう甘くはありません。

自転車に乗りながらイヤホンなんか耳に突っ込んでいたら、周りの音がほとんど聞こえません。
となると、先に潜む危険を音で察知することが出来なくなります。類い希なる第六感でも持っていれば話は別ですが、現実的ではありませんね。周りからはイタイ子だと思われること必至。

『車は急に止まれない』とはよく言ったものでして、自転車も急には止まれません。
突然現れた車とぶつかり被害者になるか、突然現れた歩行者とぶつかり加害者になるか……一瞬にして、あなたの人生と事故に関わった方の人生に影を落とすことになり兼ねません。

なので、自分自身と周りの人の安全、延いては明るいの未来のためにも、自転車に乗りながらイヤホンやヘッドホンで音楽を聴くのはやめましょう。
(但し、イヤホンをしないで自転車に乗っているからと言って明るい未来が保証されるわけではありませんので、悪しからず。現に僕は無職です。)

教訓めいた前置きはここまでと致しまして。
(そもそも僕のiPodにはQueenの『Bycycle Ride』は入っていませんし、持ってるのはiPodではなくSONYのWALKMANでした。)

おまわりさんが言うことにゃ、自転車は軽車両に含まれるそうです。車両なので、車道を走らなくてはなりません。歩道を走っていたら即刻逮捕、とまではいかなくても、事実を知ったからには無視出来ません。無職とは言っても僕はもういい大人ですから。それに、罪悪感を抱えながらサイクリングをしていては、心から楽しむことが出来ませんからね。

さぁ、気持ちの準備は整いました。
ロードバイクに跨り、いざサイクリングへ!

けれど実際に車道を走っていると、常に命が危険に晒されることになります。
と言うのも、僕の住む千葉の道路は路肩が狭く、自転車の走るスペースなど無いに等しいのです。自動車はお構い無しに僕のすぐ横を猛スピードですり抜けて行きます。素人が頑張ってペダルを廻して自転車を走らせても、車から見たら中途半端な速度で車道を走ってる邪魔なヤツとしか写りません。
そうこうしている内に、不安と恐怖からくる精神的なストレスに依って、サイクリングがまるで苦行の様に思えてきます。

「このままでは身も心も危ない」
と、おまわりさんの言いつけを守らずに歩道に入ると、今度は歩行者や他の自転車乗り達がいるためスピードを出すワケにいきません。

そんな時、周りからは
「格好付けた自転車乗ってるクセして歩道走ってんじゃねぇよ」
「昼間っから何やってんだよ、無職がよ」
と呪詛の念を込めた視線を感じずにはいられません。

さらに、歩道が途切れる度に段差があり、段差に弱いロードバイクは痛んでしまいます。
さらにさらに、サドルが臀部の割れ目にグイグイ食い込んで来るのも堪りません。
(自転車用のレーシングパンツにはパットが入っておりますが、痛いものはやはり痛いです。)
開発する必要の無いところを開発される苦しみは、さながら人間達の無意味で無計画な乱開発に依って傷付けられている地球の様です。

そして結局、気分爽快なサイクリングに出た筈が、妙に気疲れして家路に着くのがいつものことでした。

こんなことを繰り返している内に徐々にサイクリングに赴く回数は減り、せっかくのビアンキのロードバイクも、室内で飼い殺し状態となってしまいました。

「こんな昼に、オマエに乗れないなんて」

そう思う日々もありましたが、今では、洗濯物を干すときに活躍しております。チェレスティカラーの自転車に洗濯物を干せば、部屋干しでもイタリアのお日様のいい香りがする……ような気もしましたが、やはり部屋干しをすると臭いです。

こうして僕は、益々インドア派となりました。今の一番の楽しみは、撮り溜めた『午後のロードショー』をチビチビ観ることです。洋画の吹き替えには、やはりタレントよりも声優さんが相応しいですね。

『脚本を勉強中のフリーター』という危うい肩書きを持ちながら、どっこい生きてます。