紅茶にまつわるトリビア

  by ニコ・トスカーニ  Tags :  

寒い。とにかく寒いです。こんな時期に飲む物の選択肢といえば、熱燗、ホットウィスキー、アイリッシュコーヒー、ホットワインなんかがあがると思いますが仕事中となるとそうもいきません。
紅茶かコーヒーが妥当な選択肢でしょう。
私はコーヒーも好きですが、どちらかというと紅茶のほうが好きです。紅茶に含まれる紅茶ポリフェノールは風やウィルスに対する有効性があることでも知られ寒いこの時期に熱い紅茶はぴったりと言えるでしょう。
ところで、一人当たりの紅茶消費量が最も多い国をご存知でしょうか?イギリス……というのは、

ビールの消費量世界一がドイツじゃなくてチェコだとか、オーストラリアの首都がシドニーでもメルボルンでもなくキャンベラだとかいうのと同じ世間でよくありがちな間違いで、

正解はそのお隣の島国、アイルランド共和国です。
じゃあ、アイルランドではすごく凝った紅茶の入れ方をするのか、なんてことはなく、一般的な紅茶の入れ方はすごくシンプル。
マグカップにティーバッグを放り込んでお湯を注ぎ、その辺にあるお皿で蓋をして3-4分蒸らして完成。

ティーバッグを引き上げるときは揺らさず、静かに引き上げます。


簡単ですがこれですごくおいしい紅茶の完成です。

アイルランドでシェアナンバーワンを誇るバリーズというブランドがありますが、安くておいしいので是非お試しを。日本では一か所だけ直輸入している代理店があり、通販で手に入ります。
http://www.hot-drop.com/BARRYS/BARRYS.htm
筆者は一度だけアイルランドに行ったことがありますが、ダブリンのホテルに用意されていたものもこのバリーズティーで、その後、バリーズティーのファンになってしまい、たびたび購入して楽しんでいます。一番スタンダードなゴールドブレンドがお勧めです。
ところで、「アール・グレイ」の名前の由来をご存知でしょうか?
「アール」とは「伯爵」つまり爵位のこと。アール・グレイとはつまり、グレイ伯爵という人物のことなのです。

アール・グレイは19世紀前半に首相を務めたチャールズ・グレイ伯爵が紅茶商のトワイニングに作らせたブレンドティーです。
紅茶の名前は主に、人の名前か産地名に由来します。

前述の例は人の名前、「ダージリン」「アッサム」「ウバ」などは紅茶の産地名に由来するものです。
それらは言うまでもなく、イギリス植民地であったインド、スリランカの地名ですが、もともと、紅茶は中国から輸入されていました。ヨーロッパへの伝来は17世紀初頭で、ポルトガル、オランダの貿易商人が中国から輸入したのが始まりです。
その後、中国との紅茶による貿易不均衡がアヘン戦争の遠因になったのは世界史を学んだ人にとっては常識だと思います。
19世紀に入るとインドでの紅茶栽培に成功し、ヴィクトリア女王が即位した19世紀後半になると、紅茶は国民的習慣になります。この時に生まれたのが「アフタヌーンティー」の習慣です。
アフタヌーンティーは1800年代初頭に7代目ベッドフォード侯爵夫人アンナによって発明されたものですがその後、

アフタヌーンティーの習慣が一般化すると階級による差異が生まれました。

労働者階級のアフタヌーンティーhigh teaと呼ばれ、これは肉やパンとともにしっかり食べる事実上の夕食。

一方、中産階級の人々にとっては、昼食と夕食のあいだに、サンドイッチ、ケーキ、スコーンなどを食べるいわばおやつ。

なお、このころの貴族の間で、サンドイッチの流行はキュウリのサンドイッチでした。

キュウリは当時大変珍しい植物で、これを温室で育てていることは貴族にとっての一種のステータスだったそうです。
現代において、アフターヌーンティーといえば、後者のほうを指すのが一般的で、フォートナム&メイソンやハロッズのティーサロンで供されているのはこちらです。ちなみに写真はフォートナム&メイソンのティーサロンで撮ったもので、

3段重ねのトレーは下から順にフィンガーサンドイッチ、スコーン、ケーキが並んでいます。

不味いという悪評高いイギリス料理ですが、ここのサンドイッチは絶品でした。
アフタヌーンティーの文化は、黄金期におけるイギリスの海外進出により、海外領土にも広まっていきました。

現在でも、旧イギリス植民地のオーストラリアのメルボルンや香港にはアフターヌーンティーの習慣が残っているといわれています。
と、こんなことを朝の電車のなかで考えていたら5分ぐらい時間が潰せたので大したものだなと思いました。

ひどくとりとめのない内容でしたが、皆様も楽しいティーライフをお過ごしください。
(画像・筆者撮影。フォーナム&メイソンのアフタヌーンティー)

青山学院大学大学院博士前期課程修了(英文学)、ネットワーク専門のエンジニアとしてIT商社勤務 双子の弟との共同制作、共同脚本、共同演出として自主映画数本を制作。近作で福岡インディペンデント映画祭の審査員特別賞を受賞 映画全般、日本アニメ、クラシック音楽、ジャズ、野球(観戦オンリー)が好き 学部生時代にイングランドに短期留学。英語がそこそこ話せる(旅行に行っても困らない程度)

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