日本人的ツボおされまくり―映画『パシフィック・リム』の魅力

  by nnk  Tags :  

現在公開中の映画『パシフィック・リム』。

海の底の裂け目から突如現れた”怪獣”と戦うべく,人類は巨大ロボ”イェーガー”を作った。人が乗って操作するロボット,イェーガーと怪獣との戦いを描いたSF作品である。

監督ギレルモ・デル・トロは自ら語っているように,大の日本の特撮ファンだ。そんな彼が作ったこの作品は,一言でいうなら「日本人のツボてんこもりの処理落ち映画(ほめてます)」だろう。

 

まず,巨大ロボである。

マジンガーZや鉄人28号の時代からガンダム,エヴァにいたるまで,日本人は正義の巨大ロボが大好きだ。その多くは,遠隔操作ではなくヒトがロボットの頭部や胸部に乗って操縦するタイプのものである。本作の巨大ロボ”イェーガー”も,ヒトが乗って操縦するタイプ。しかも1体に2人の人間が搭乗し,2人の脳をシンクロさせることで力を合わせて操縦するのだ。「以心伝心」や「協力」―このツボを「巨大ロボ」のツボとともに押されたら,日本人はひとたまりもないのである。

 

そしてもちろん,怪獣だ。

作品中でも通して「kaiju」と呼ばれており,あえて「monster」とはしなかったところがニクいではないか。本作の怪獣は,なんというか,誤解を恐れずに言うと,あまりカッコよくない。最新鋭のCG技術を駆使して描かれてはいるが,全体的に造形がもっさりしており,その姿はまさにゴジラやウルトラマンでおなじみの,”着ぐるみ”のそれである。CG全盛のこの時代に,あえて着ぐるみっぽい怪獣を描く。これらの怪獣の姿は,多くの日本人に「あの頃,夏休みの午前中にテレビをつけたときのこと」を思い出させるだろう。

 

作品の大きな見どころのひとつは,ド派手な戦闘シーンだ。

筆者の浅薄な知識のなかではあるが,これまで見た映画のなかで最高に派手と言っても過言ではない。何せ怪獣は小さいものでも全長50メートル程度,大きなものになるとゆうに150メートルを超すのである。それに対するイェーガーもまた巨大。平均して80メートルほどだろうか。そんなデカブツどうしが何体も同時に出てきてドンパチやるのだ。海だって陸だって,街だってひとたまりもない。圧巻なのはその破壊される街の描写である。吹き飛ぶ窓ガラスや飛び散る波しぶき,踏まれて陥没する道路まで,過去に例がないほど精密に描き込まれている。これはまさに日本の特撮への敬意がなせる業だろう。特撮ではミニチュアの模型を作り,格闘シーンではそれを実際に爆破して撮影していた。したがって本作のCG映像も,「まるで特撮のように」リアルで精密なものとなっているのだ。こんなに容量の大きな動画を型落ちの機器で再生しようものなら,きっと処理落ちするに違いないと思うほどの格闘シーンには,ただただ圧倒される。

 

ほかにも,ツボを押されるポイントは多々ある。

過去に傷持つ主人公や,冷酷なようで実は人情味あふれる上官,やっぱりあった「奥の手」がなんと「ソード(剣)」であることなど,日本的テッパンがそこかしこにちりばめられている。本当はもっともっとあるのだが,これ以上はネタバレになるので控えておく。あとは各自劇場で確かめてほしい。

 

ちなみに筆者がいちばんグっときたのは,いちばん大きな怪獣が登場するシーンの音楽。怪獣といえばだれもが思い浮かべるあの超有名怪獣に想いを馳せずにはいられない仕上がりだった。日本の映画館は上映中の私語厳禁であるが,思わず「おおーっ」とうなってしまった。

 

公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/pacificrim/#

 

2013年6月に編プロを退職。現在は個人事業主というものをやっているが、それが何なのか本人にもよくわかっていない。 絵画・彫刻・音楽・舞踏・映画・漫画・旅行・英語などが得意。

Twitter: ynanoka

Facebook: 100004104701690