大曲の花火

  by 九尾信貴  Tags :  

夏の夜空を彩る花火。

今年の夏も暑かった。例年、年毎に暑くなっているような気がする。
だが、東北の今年の夏は短そうだ。太陽が沈むと、途端に涼しくなる。

8月24日

秋田大仙市にある大曲の花火大会を観て来た。
今年の大きな花火大会は、全国至るところで悪天候に見舞われていたので危惧していた。

案の定、当日を挟み、前後の日は雨模様だった。
ところが奇跡的に大会当日は、天気予報は曇りで雨は降らないとのこと。

気を良くして、前泊した旅館で朝を迎えた。
窓外を見ると、なるほど、曇ってはいるものの降りそうにもない。

行く前から、大袈裟な誇張とは思っていたが、半ば脅されていた。
物凄い混雑するから、できるだけ現場には早く行っておく必要があると。おまけに、旅館の方にも発破を掛けられた。

旅館で朝食を済ませると、旅館がある小安峡を出て、うどんで有名な稲庭を過ぎ、湯沢市に入る。
だが、道路の渋滞など、どこにもない。少し交通量が多いくらいだ。

今年は花火大会で悪天候や事故が多かったので、人が少ないのかと勘繰るが、まだ油断はしない。これから、これから。そのうち、大混雑、渋滞で動けなくなると気を張る。

時折、雲間から太陽が顔を覗かせ、真昼に向け、気温はぐんぐんと上昇した。
気温は30℃に迫る。秋田でも暑いものだと妙に関心する。

ゆっくりと走らせても、お昼には大曲の花火現場に着いた。いささか拍子抜けした。
河川敷の土手には、観客が各々シートを広げ、場所取りに余念がない。

なにも詳細を知らずに出掛けたもので、人々の動きに注目する。地元らしき人と話しをする。
土手の上は、花火が絶好のビューポイントなのだという。

地元の方も、一年に一度の花火大会を楽しみにしている。
東北の小さな町が、その日ばかりは人でごった返す。

それにしても、早く着き過ぎた。
第一部の開演は、5時半とのこと。そのまま、5時間半もの時間があり、時間を持て余す。

その間に車を走らせ、花火を打ち上げるだろう現場を遠巻きに、もっと良いビューポイントがないか散策した。そうやって、時間をつぶす。屋台も色々出ていたが、歩いてあまり近づきたくなかったからだ。

たっぷりの時間があったので、周囲を完全に把握した。
元々、小さな町なので、範囲は知れている。地元の方々は、こぞって土地を開放し駐車場にしていた。

年1回の稼ぎ時である。
もう皆、躍起になっていた。だが、秋田県人の奥ゆかしさか、強引な誘導はない。

そうこうしている内に、やっと、5時半になって、第一部が開演した。
土手の上で群集に混じって、見物をきめこむ。

日は大きく傾き、山に掛かる大きな雲に翳っていた。
土手の上は秋の涼風が吹き、昼間のうだる暑さはどこにもなかった。

まだ明るい空に向け、花火が打ちあがる。
よりカラー鮮やかな花火を上げるのが主になるらしい。

確かに明るい空の花火も一興だが、やはり風流ではない。
夜空の暗闇に閃光が走り、鮮やかに彩り、爆発音と衝撃波に酔いしれるのが良いものだ。

幸い、上空には風が流れていた。
花火が打ちあがるたびに、煙をきれいに掻き消してくれた。

これは第二部の本番も期待できるだろう。
第一部は40分ほどで終わった。第二部は7時からだ。また、50分ほど間が空く。

普段であれば、それほど感じないのだろうが、5時間半待っての50分なので、しんどい。
どうして、もっとテンポ良くいかないのかと思う。6時半も過ぎると日は山の向こうに落ち、もう夜空になっていた。

待ちくたびれて、第二部開演。
堰を切ったように次々と花火が打ちあがった。

素晴らしい。
全国の花火師の技の競演は目を見張るものがあった。

だが、第二部を開始して30分ほどで、急に肌寒いほどの風になり、顔にぽつぽつと水滴が当たった。
そして、それは次第に大きな粒になり、驟雨となった。

やはり、降るのか。
どうも、今年のジンクスのようだ。

誰も降るとは、大会関係者も思っていなかっただろう。
雨はすぐにやんだが、道に水溜りができるほどの量だった。

もう少し早めに始めれば良いものを。
長時間待った疲れからか、もう折れた。周りには帰るものも大勢いた。

短い時間だったが、充分観た。
帰りの混雑を避け、早めに撤退した。

また、大曲に来るかもしれないが、次はもっとゆっくり来ようと思う。
ブラフに騙されないように。

遊神と危道の探求を信条に。ただ迷想も間々あり。 あらゆる分野のリーディングカンパニーでSEとして従事という特異な経歴を持つ。旅・歴史探訪・テーブルゲームをこよなく愛し、古き良き日本を探すことに生甲斐を覚える。

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