【なでしこ×韓国戦をようやく振り返る】ゴールを奪う気迫がビハインドと引き換えなら、もはや世界王者ではない。

  by 香椎みるめ  Tags :  

 EAFF東アジアカップ2013決勝大会、サッカー日本女子代表対韓国女子代表の一戦が27日、蚕室(チャムシル)総合運動場で行われました。結果はご存知の通り、韓国のチ・ソヨンが素晴らしいフリーキックを含む2ゴールを68分までに奪いました。日本は大儀見のゴールが73分に生まれましたが、追い付くには至らず、1対2の敗戦。日本の通算成績は1勝1分け1敗となり、東アジア杯優勝を逃しました。かなり時間が経ちましたが、自分なりに振り返ってみたいと思います。

 2点リードされて、ようやく目を覚ました印象のなでしこ。2度のチャンスがあった序盤以降はノーチャンスの時間が長く続きました。マイボールのイージーなロスト、ラストパスの精度不足といった積み重ねの結果と言えるでしょう。チ・ソヨンが示したゴールを奪うという気迫も不足していた気がします。後半の選手交代と3バックへの変更も功を奏し、終盤はスコアを引っ繰り返す可能性すら感じさせる圧倒ぶり。なぜ前半から出来なかったのでしょうか。波に乗れない戦いぶりは中国戦でも感じたことです。

 今のなでしこは間違いなく宮間のチームです。彼女が好機を生み出せるのは分かっているのですから、後はどれだけ周囲が盛り立て、可能な限り少ないミスで済ませられるか。やはり別格なのは大儀見でした。中盤でキープし、宮間に渡して、サイドに展開するのは効果的な攻撃です。ゴール近くのコンビネーションも良く、細かい崩しからスペースを見つけた宮間のミドルから大儀見のゴールが生まれました。中盤以下に控えるフィードの上手い選手からのボールを大儀見が落とし、宮間がシュートを放つ形も良かったです。

 他の攻撃陣はどうだったでしょうか。宮間と長くプレーしている選手で言えば、川澄は珍しく精彩を欠いていました。安藤は何度となくサイドから仕掛け、惜しいシュートも放ちました。一方、代表のスタメン争いに食い込みたい岩渕は見せ場をあまりつくれず。ドリブルで相手を抜き切る、あるいは宮間・大儀見らともっと絡むプレーがあれば…。器用な大儀見と前線でコンビを組むのは、途中出場の大型ストライカーの菅澤優衣香の方が良いかもしれません。すんなりピッチ上のサッカーに馴染み、シュートも2度放ちました。

 他のポジションで言えば、レギュラー組を脅かす選手の台頭を期待したい両サイドバック。左を任された上尾野辺は時間が経つにつれてフィットしていた印象です。スローインの甘さが気になりますが、攻撃に加わると存在感を示していました。深刻なのは選手が定まらなかった右。攻守に不安定だった中島は本来のポジションではありません。その視点で考えると、中盤センターで起用された田中も便利屋的な起用が続きます。複数のポジションをこなせるのは重要ですが、パフォーマンスをフルに引き出せないのは問題です。

 ロンドン五輪以降のなでしこはどれだけの上積みがあったのか。目指しているのは多彩な攻撃だと思います。ただシュートパスをつなぐだけではなく、中距離以上のパスを織り交ぜながら、ゴールを目指す。しかし韓国戦で気になったのは、最後の部分のアクションが鈍かったことです。そして守備の粘りはどこへいったのでしょうか。韓国戦の2失点目は、右サイドを崩された後、諦めたようにチ・ソヨンをフリーにしてしまったのが全てでした。「もう世界女王などではない」と己の立ち位置を見直す大会にしなければなりません。

香椎みるめ: フリーのライター、英日翻訳者、校閲者の三刀流。平成生まれ。性別は秘密。ウェブマガジン「GIGAMEN」で10年、計1890本以上の記事を執筆。サッカーの観戦記から始まった物書き屋は、「Yahoo!ニュース」や「ガジェット通信」に掲載された経験も活かしつつ、今は日本市場へ参入する海外企業の皆さんとタッグを組みながら、ありとあらゆる「文字を書くお仕事」をこなす日々。

Twitter: GigaMirumeK