三本の矢のゆくえ

  by アルナオ  Tags :  

総大将が抜けたものの『三本の矢』が初対決を迎えた宝塚記念はゴールドシップの復活で幕を閉じました。

昨年の年度代表馬ジェンティルドンナは3着、天皇賞春を制したフェノーメノは4着で、『三本の矢』のうち2本が失敗してしまったことになります。

前回ジェンティルドンナは金融政策、フェノーメノは成長戦略に例えましたが、金融政策は何とか成功・成長戦略は失敗となるのでしょうか。

 

金融政策と成長戦略を阻止するのは2着になったダノンバラードを象徴するものでしょう。悩みましたが、ダノンバラードは日本を代表するサラブレッドディープインパクトの初年度産駒で、ディープインパクト産駒として初重賞を飾った馬でもあることがポイントだと結論付けました。

日本を代表する世代は団塊の世代でしょう。その子供世代である団塊ジュニアは現在40歳前後で、この世代は受験戦争が過熱したにもかかわらずバブル崩壊から就職氷河期を経験して努力が実を結ばなかった人が多い世代になっています。非正規社員が多いことから、金融緩和で市場に出回るお金が増えてもその恩恵が回ってくる可能性は低いですが、相続でまとまったお金を手にする人もいるはずですし、期待通りの成果はなくても多少の効果はありそうです。

 

成長戦略は団塊ジュニアによって潰される可能性が高いのは間違いないでしょう。

成長戦略は民間投資と規制緩和で成長分野を作り、女性の社会進出を促しながら若者と高齢者が働けるようにする・・・ということで、団塊ジュニアの男性に対しては何の戦略もありません。女性の社会進出がさらに進めば、当然男性の雇用が失われる結果になりますので、ただでさえ少ない団塊ジュニア男性の雇用がさらに減ることになります。

今までは若さで耐えてきた団塊ジュニアも、40歳を過ぎれば体に不調も出てきますし、精神的にも健康を保つことが難しくなってきます。引退することを遅らせることで団塊ジュニアを支えてきた団塊世代が引退すれば団塊ジュニアは生活保護に流れるしかなくなる人が増えます。それを先に生活保護抑制で対応しようとしていますが、親族の扶養強化と言っても、兄弟姉妹は同じ団塊ジュニアでしょうし、子供世代はまだ未成年かそもそも子供がいないケースも多く、ほとんど無意味でしょう。結局、新たな成長分野を作り出して、2%程度の経済成長を実現できたとしても団塊ジュニアが生活保護に回ることでその分を食いつぶすことになります。

団塊ジュニアの問題として奨学金があります。最近日本学生支援機構が滞納している人に対し裁判を仕掛けているという記事を見かけますが、今後さらに増加すると予想されます。日本学生支援機構は2010年から回収を強化し、返済が困難な人は5年間の返済猶予を申請していると思われます。5年を超える返済猶予は生活保護を除けばどんな状況でも認められないので、2015年から裁判が極端に増加するはずです。民事裁判は出頭しなければ負けますが、出席しても勝ち目は無く、非正規社員の場合は生活保護に流れざるを得ません。日本学生支援機構には借りた本人が死んだ場合は連帯保証人の責任を免除すると記されていますので、自殺を選択する人も増えるでしょうが、同様の状況の人が多いため自殺よりも暴動に流れていく可能性もあります。

成長戦略では世界で活躍できる若者を育てるとありますが、団塊の世代に団塊ジュニアの社会保障費を背負う上、社会不安まであるなら国籍を変えて活躍しようとする人が増えるだけなのではないでしょうか。

 

このような奨学金の問題は『三本の矢』で唯一評価できる財政出動を追い詰めることにもなります。

財政出動は、政府支出を増やすことで国民所得を大きくふやすことができるという乗数効果を期待するものです。簡単に言えば、政府が道路を作ると雇用が増え、賃金を貰った人が消費することでモノが売れて企業が設備投資をするというように経済が良い方向に循環することです。乗数効果の最大の敵は貯蓄です。こども手当の大半が貯蓄に回ったため乗数効果が期待できないという報道を思い出した方もいらっしゃるでしょう。同じように奨学金が怖いため、子供のために貯金せざるを得ず、子供のいる世帯では乗数効果が極めて低くなります。アンケートでは消費税アップでも子供のための貯金を減らす人は珍しく、食費などの消費をさらに切り詰める人が多くなっています。団塊ジュニアを追い詰めるほど団塊ジュニアで成功した人は貯蓄に走り、他の世代もそれに追随するため、財政出動もばら撒き程度の効果にしかならない可能性まであります。

 

世相をあらわすと言われる有馬記念。有馬記念と同じグランプリ宝塚記念でも世相をあらわすのではないかと分析してみましたが、アベノミクスにはかなり厳しい結果になってしまいました。

限定正社員や死亡消費税といった使い方次第では団塊ジュニアを救済する制度も提案されているので、このあたりが正念場になりそうです。限定正社員は正社員になったことがない人に限って適用できることにすれば現在正社員の人には影響ないし、正社員経験者で非正規社員の人には正社員登用補助金があれば良いでしょう。死亡消費税は名前を変えて、政府が国民に奨学金や資格取得のための資金などで投資し、その清算を死亡時にするというものにすれば奨学金返済困難で生活保護や破産になって財政を圧迫するより、就職しやすくして税金を払ってもらった方が良いし、相続財産で清算するなら相続人が相続財産を期待することも減って争いが起こりにくくなるかもしれません。

 

今回の敗戦でジェンティルドンナの凱旋門賞遠征は微妙になってしまいましたが、日本馬による凱旋門賞初制覇への期待は持ち続けたいと思います。国内専念を宣言したゴールドシップが一番勝てそうな気はしますが。

 

何でもかんでも競馬に例えてしまうのが悪い癖なので、競馬は門外漢という皆様には読みにくいかもしれません。逆に競馬好きの皆様は法律経済のあたりがわかりやすくなるかも?