《短編小説:怪談》睨みつける羽根のついた子供たち

天使の存在を信じますか? 神の使者である、神々と人間の中間の霊的存在といわれているが、貴方にとっての天使はどういったものであろう? ここに、ある者の体験がある。

日が沈みつつある夕暮れが一息つき、後ろ髪を引かれるかのように薄く赤い光が目に残る。静かに訪れる闇の時間を待っていたかのように外では虫の鳴き声が涼しく、綺麗なハーモニーを響かせて鳴いている。この都会の町のなかの存在であることを忘れさせてくれるばかりか、自然を少しでも感じさせてくれる。虫たちの合唱が気を緩めてくれるような囁きに似ており、僕の見えないことに対する緊張をいくらかほぐしてくれた。

ここちよい春過ぎの暖かさと涼しい空気。モダンなカサにつつまれた黄色いランプが安らぎとやさしさを演出をする。天使がヒョイと現れるならこのような空間だろう。続け様に天使の存在についての話を思い出ださせる。

古い話では天使を見たという報告がいくつかあると言われている。天使は人に白い羽が生えており、頭には輪っかが特徴的である。その中でも、特にイメージするのは無邪気な赤ん坊の姿をしていることだ。西洋の天使の絵はラッパを吹いている姿をすぐに思い浮かべる。そんなイメージだろうか? また、よくクリスマスに天使が描かれていることも多いだろうから、子供の姿のかわいい天使を想像するだろう。そして、赤ん坊の様な天使たちは、いたずら小僧のようにどこからともなくあらわれ、そして人が気が付いた時には跡かたもなく消えているとされる。

そして、僕がインターネットで見かけた物は、昔話として天使を見かけたという話だった。深夜の遅い時間にロウソクの光だけの薄暗い部屋。あるエンジニアが遅くまで仕事をしているためか疲れてウトウトと眠りかけていた。なんとなく気配を感じたので目をゆっくりと開けた先には、ロウソクの炎の先より光の塊のようなものが産まれるように分裂。部屋のまわりには多数の光の塊達があちらこちらに自由に飛び交うように広がっていた。その光の塊を静かに凝視すると、子供のような姿をし背中には白い羽のようなものをつけた生物だった。気がつくとそのエンジニアのまわりを子供の様な天使たちがいたずら小僧を思い出させるかのようにあちらこちらに飛び交っていたとのことだ。エンジニアは目の前の天使の姿に驚いたためか、大きな音をたててしまった。その天使たちはその物音に驚き、あっという間に消えてしまったという話だ。

僕はなんとなく天使というモノを気にしているわけでは無かった。ゆっくりと何も考えずに横になってランプを見つめていた。それだけのことであった。確かにウトウトしていていたことは認める。ランプのやわらかい光を見つめながら考え事をしていただけなのに。気のせいか一瞬だけ目の前が揺れた気がした。しかし、視界は目の前にあるランプが変わりなく柔らかい光を出し、部屋を柔らかく照らし出しているだけであった。何事もなかったかのように、ただ目の前の明かりを何も考えずに見つめていた。

どれだけの時間が経ったのだろうか? しばらくするとランプの光がゆっくりとゆらぎだす。いや光の塊がなんだか歪んで見えた。光は時間をかけながら、まわりを警戒しているかのごとく時間をかけて分裂しては離れていく。いくつかの光が分裂からは弾みがついたためか、何かが新たに生まてくるがごとく分裂した光が分裂を繰り返していくのである。気が付けば部屋の中はあっという間に光の塊がたくさん飛んでいる状態であった。飛び交う光達は、何らかの意思を持つがごとく楽しそうに飛び回っている。あちらでは追っかけっこ。こちらではゆらゆらと。そっちではマイペースに。ここにいる僕の存在なのお構いなくである。

僕は状況を把握するべく静かに飛び回っている光を凝視しようと試みた。しかし、なかなかまぶしくて目が慣れるまでには時間がかかったような気がしていた。なんとなくゆっくりとゆらゆらしていた光が一つだけおり、そいつは行動がとろいようだった。狙ってそいつを凝視してみることにした。なにか中にいることがわかったが、注意深くみると背中に小さいかわいい羽が付いているモノであった。まさかと思いつつ、さらによく見ようと凝視を続けると、なんとなく赤ん坊のような形をしており頭がまるかった。そして、頭の上には独特の輪っかが見られた。そう、これが噂に聞く天使なんだろうと認識した。そのとたん、僕が凝視している事に、その物体は気が付かれてしまった。そして、こちらを睨みつけた。まるでバッタのような虫の様な頭をしているような睨み方であった。何らかの事線に触れてしまったような気がした。そして、何かがぱちーんとはじけるような音がした気がした。

部屋には何事もなかったかのように目の前に白熱電球のランプが照らされているだけである。左腕を立てて、横になっている僕がいる。外には何事もなかったかのように虫の鳴き声が静かな夜にささやかなる合唱を聞かせてくれている。天使という存在を見る前の状況とは変わってない。もちろん、視野にある風景は変わっていない。いったい何が起こっていたのかもわからないくらいにだ。僕は単なる疲れすぎだとおもった。そういえば、どこかで聞いた話も、音を立ててしまい天使に気が付かれてしまったということだ。そのとたん、天使たちは存在していたような気配すら無い、何事もない風景が目の前をあっただけであったということだ。

《了》
※フィクションです。

ASEAN諸国をたまにふらふら。中国語や英語、タイ語を勉強中 神出鬼没な気まぐれネコ属性の割には、独創暴走の激しい「B」型そのもの。 趣味は音楽作成「DTM」。そして、ヘタレ文を突っ込まれながらも、ラノベ屋の希望と野望を捨てきれない者でございます。 よろしくお願いします。

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