《短編小説:怪談》終バス「」行き

  by つっちぃー  Tags :  

いつの間にか7月となり、今年の後半に突入するこの季節。そろそろ、夏へと本番に向かうためか、暑い日が続いているところもあるようです。夏といえば肝試しということで怪談がちまたで話題になるかと思います。こちらも便乗組として短編小説みたいなものを書いてみました。いつまで続けられるかわかりませんが、多数のネタを公開できればとおもいます。以上、よろしくお願いします。

※写真はイメージです。

「飲んだ、飲んだ」

日頃のグチを吐き出す変わりに、アルコールで心地良くなった気分で勢い良く出すセリフ。
本日の残業の仕事もなんとか一息がついたことも手伝ってか、少しだけ奮発していいお酒を口にしていた。とても上機嫌で過ごせたためか、気がついたときにはかなり長居していた。
酒を飲み始めた時には、いつはいるかわからない連絡を気にしていたため、見える位置に携帯電話を置いていた。メールがいつ届いてもいいよう念のためゆっくりと飲んでいたが、途中から何か吹っ切れたかのようにお酒が進んでいた。
気分がよくなったころ、多少の心配もあってかメールの受信を確認したが「待ってます」と書かれたspamメールがあったぐらいだった。仕事の問題に関するメールがこなかったこともあり、その安心感も手伝ってか、気がついたら飲みすぎていたという状況であった。
そろそろというところ、終バスには余裕で間に合いそうな時間であったため、ゆっくりと会計を済まして店を出た。
人通りが少ない場所に通りかかった時、どうしても尿意のためにちょっとした用を足すものだとと思って辺りを見回した。ふと、人気のない手頃な横道が見えてきたので、ちょうどイイという考えがよぎり、無意識に足がその露路に向かっていた。
念のため、周辺をサラッと誰もいないことを確認すると、体を適当な壁に向けて気を抜き用を過ごそうかと思った。

「ガサッ!?」

一瞬の音にビックリをし、辺りを見まわすがそれらしい気配が無い。気のせいかと思い、再度身体を壁の方に向けるも何らかの視線があるような気がしていた。

「ゴト、ゴト!?」

ちょうどゴミ箱が置かれているエリアに何かいるようで、気になって目に力を入れて問題の場所へユックリと視線を向けてみた。
先程は何も居なかったと思っていたが、よくよく見てみると何らか動いているモノに気がついた。それは猫か犬と言った小動物のようであると認識したので、「やれやれ」というため息が安心感と混ざるかのように吐き出された。

「なんじゃ、人間か!?」

一瞬、何か空耳かと思った。しかし、イキナリの認識可能な言葉のラレツが自分以外の人影が無い場所から聞こえたこと。自分自身を納得させる理由としてお酒の飲みすぎで気のせいであると結論づける。
小動物がこちらに気がついているのか、ゆっくりとあるいてくるのが見える。人懐こい犬だろうと思って、その小動物がユックリとこちら側にあるいてくるのを目で追っている。薄暗い電灯がその動物の姿がわかるぐらいに照らし始めると、違和感の正体が明確に自分自身の真実への疑問に悲鳴を上げていることに、動揺を抑えきれなくなってきていることを理解する。
犬だろうと思われたその小動物の顔が人の顔であること。そして、その人の顔をした犬がこちらの方を見上げ、人の言葉をしゃべっていることである。

「ああ、人型か!?」

訳がわからず混乱していたため、その人面犬を凝視しながら固まっていた。すると、意味不明の言葉をはいた人面犬は何も無かったようにプイとそれまでこちらに向けていた視線を外すと、そのままユックリと去って行った。ハッとして、その人面犬が去った方へ慌てて向かい、今までの出来事の真実性を確認するべく表通りにその動物を追いかけてみたがそれらしき姿は無かった。

「気のせいだよな……」

今までの止まっていた時間が流れ出したかのように周辺からの雑音が聞こえ出す。街の雑踏が今まで起きていたことをかき消し過去の出来事として意識の奥へと追い出される。そして、気がついたように慌てて今の時間を確認すると終バスの時間が近いことを認識し、急いで駅近くの目的のバス停に向かった。
慌てて着いたバス停には、いつもなら多数の人が最終バスに乗るべく列を作っている。本日中に限りなのか、珍しく左手の指だけでも余るくらいの人しか並んでいなかった。ちょうどバス停に着いたと共に雨がポツポツ落ちてきたため、台風が近づいてきていることを朝のニュースで言っていたことを思い出し、金曜日の深夜にもかかわらず乗客が少ない理由を勝手に想像しながらやって来たバスに乗り込んだ。バスには最終であることを示すように血のように赤く行きが表示されていた。
落ち着いてバスのセンターにある降車口のそばにある二人がけのシートに座ったころ、雨が強くなったためかドアを叩きつけるような強い音が乗客が少ない車内に響き渡った。そろそろ発車するようで、静かな車内をドアの閉まるブザーと発車するというアナウンスが響き渡る。そして、バスはゆっくりと発車した。
途中では降車を希望するお客はいなかったためか、ほとんど降車の意思を示すブザーを押す者は居なかった。しかし、運転手は途中のバス停に律儀に停車し、必ず降車口のドアを開いては降車する者がいない事を確認をしながらゆっくりとバスを発車させていた。みんな終点の住宅地まで降りるためなのか、誰も停止ボタンを押さない状況が続いていた。静かな車内には雨の音がある一定のリズムを刻むかのようであったためか、何となく眠気を誘うようでウトウトしていた。ちょうどトンネルに入ったころどこからともなくヒソヒソ話が聞こえてくる。どうやら私の後ろで老夫婦が想い出を懐かしむかのような話をしているようだが、なぜか明瞭に耳に入ってくる。

「おじいさん、もうすぐですよね」
「そうだな。確かここだよな?」
「ええ」
「熱くて、苦しかったよな」
「あなたのところまで行きたかったけど、足が何かに挟まれていて動けなかったからね」
「ぼくも何か重いものの下敷きになっていて、腕も足もぼろぼろだったからね。ごめんよ」
「いいのよ。それに、孫が私達をともらいに来てくれて嬉しかったもの」
「そうだね、こうして二人が一緒にいれるのも」
「こうして、あの世であえることも……」
「青い縁のメガネの運転手さんは大変だよね」

理解し難い会話に心を落ち着かせようと焦りだしたことも手伝ってか一気に酔いと目がさめたようで、いまのこの時を理解しようと神経を集中する。静かに深呼吸をし、おそるおそる目を開けて声の聞こえた方にゆっくりと振り返ってみるも、老夫婦らしき姿は見られなかった。車内には自分以外は誰もお客は居なかった。夢だったのかもしれないと思い自分を納得させたいと何度も強く心の中でくりかえした。ふと、思い出したかのように、数年前に事故があったことを思い出させるかのように記憶が映像のごとく鮮明に頭に浮かんでくることに気がついた。このトンネルでバスの衝突事故があって、立ち往生したバスが引火したため、乗っていた老人夫婦と青い縁のメガネをかけていた運転手が亡くなったという話だ。
背筋が寒くなって、早く帰宅したい欲求にかられ周りを見回すも誰も人影がない。そして、いま確認できるには青い縁のメガネをした運転手だ。何となく不安が増大するので、おそるおそる運転手の方に近づき、行き先を確認する。
「この最終バスの終点は次ですよね?」
「ええ。人生の終点です」

ASEAN諸国をたまにふらふら。中国語や英語、タイ語を勉強中 神出鬼没な気まぐれネコ属性の割には、独創暴走の激しい「B」型そのもの。 趣味は音楽作成「DTM」。そして、ヘタレ文を突っ込まれながらも、ラノベ屋の希望と野望を捨てきれない者でございます。 よろしくお願いします。

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