三本の矢

  by アルナオ  Tags :  

春のG1最終戦宝塚記念はオルフェーヴルの回避で3強対決になりました。

昨年の年度代表馬ジェンティルドンナ、皐月賞菊花賞有馬記念を制したゴールドシップ、天皇賞春勝ち馬フェノーメノがどんなレースをするのか楽しみです。

 

3強対決というのは今年の皐月賞のように本命サイドで決着する方が多いように思えます。『三本の矢』は競馬以外でも安定感の象徴でしょう。

 

アベノミクスの『三本の矢』は金融緩和・財政出動・成長戦略の3つですが、金融緩和と財政出動は目新しくはないですし、今までも散々やってきたことなので、成長戦略に金融緩和と財政出動並みの力がなければ『三本の矢』になりませんし、安定感もなくなります。

 

金融緩和で市場にお金が出回っても、それに見合うだけの財・サービスの供給がなければインフレになるだけで終わります。財政出動で公共事業を増やして市場の財・サービスを増やしてインフレを抑制しても限界があります。しかし、成長戦略に目新しいものがないのが問題になります。

 

経済成長とはそれまでになかった何かが生じることで、規制緩和によって生み出すことは困難になります。規制緩和を中心にした小泉改革では家計の貯蓄が企業の貯蓄に移っただけで、直接経済成長には繋がりませんでした。本来規制は市場の失敗を解消するためのルールとして作られるはずなので、緩和すれば市場が動くことは動きますが、市場の財・サービスの総量は減少してしまいます。パイが小さくなっているにもかかわらず所得が増える人がいるなら格差は拡大してしまいます。そして、この格差は潜在的な経済成長力を奪ってしまいます。

 

『貧の共有』という言葉があります。貧しい村があったとして、何とか日々の生活は出来ているとします。するとその村では誰かが儲けないように調整するようになります。出る杭は打たれるという感じで、その村に優秀な若者がいたとしてもその将来を奪ってしまうことが正当であるとされてしまうのです。同じような現象として不公平感というのもあります。何らかの損失がある時にみんなで公平に分担すれば負担を受け入れやすくなりますが、負担に差をつけると多目に負担する人の不満が大きくなります。こういった社会にある調整法は潜在的な成長力を奪い、その社会の生産力を低下させることになります。

 

成長戦略にある項目で、規制緩和でないものは見当たらない気はしますが、強いて言えば『限定正社員制度』でしょうか。日本では正社員を解雇することが非常に難しくなっていますが、逆に言えば正社員の運用方法については企業の裁量が大きいということになります。具体的には、ある事業所を閉鎖するなら正社員は他で運用する、つまり遠隔地への転勤は当然の運用方法になりますし、閑散期と繁忙期がある場合は閑散期に仕事がなくても賃金を払う代わりに繁忙期は残業してでも仕事を進めることになります。世界的にはILO条約で1日8時間労働制が定められていますが、日本が批准できないのは正社員の雇用を保護するためということになります。

 

『限定正社員制度』は解雇規制の緩和という側面がありますが、ILO条約を批准出来る土台ができるので新たなルール設定という側面も出てきます。労使関係はどうしても労働者が不利になりますので、労働条件などの交渉では雇用側の意見が通りやすくなります。就職難の世の中では、労働条件の交渉すらせずに雇用契約を結ぶことも多いと思われます。契約の交渉で力関係の差が大きいと、対等な契約を成立させることができないので、その契約は社会的にみれば適切でない契約になることが多くなります。労働条件の交渉がなければ労働者はなるべく仕事をしないように努力するでしょうし、使用者は働かせるために強硬手段すらとらざるを得なくなることもあるでしょう。奴隷制度は古代ローマで成熟しましたが、生産力は低いままでした。やらされている仕事より納得して打ち込む仕事の方が生産力が高いのはお分かり頂けると思います。

 

日本では使用者の裁量が大きいので、『限定正社員制度』を導入すれば首切りが自由になると思われてしまうのは仕方ないところです。しかし、『限定正社員制度』を導入する一方で雇用契約作成時に弁護士を同席させるといった新しいルールを作り、労使が対等に交渉することができるようになれば生産力の向上といった形で社会に還元されることもありそうです。プロ野球選手でも代理人を契約交渉に同席させることができるようになったのはつい最近のことですし、一般の労働者が代理人を同席させるには強いリーダーシップを持った指導者が理論武装した上で政治生命をかけて法律を作らないとダメな感じはしますが・・・。

 

金融政策は王道ですし、ジェンティルドンナが該当しそうです。財政出動は嵌れば効果が高くても失敗すれば借金が増えるという脆さがあるのでゴールドシップでしょう。ということで成長戦略は実績で劣るフェノーメノということになりますが、フェノーメノが宝塚記念で好走できるかどうかでアベノミクスの将来を占うことが出来るかもしれません。同じグランプリの有馬記念がその年の世相を反映することで有名ですし。

 

 

何でもかんでも競馬に例えてしまうのが悪い癖なので、競馬は門外漢という皆様には読みにくいかもしれません。逆に競馬好きの皆様は法律経済のあたりがわかりやすくなるかも?