あの世の仏教辞典 アイ(愛)

  by 睡魔太郎  Tags :  

マイケル・リー アートワーク

 仏教で愛という場合、愛情の意味で使われることはありません。愛情の意味であれば、慈悲といったりします。仏教で愛とはパーリ語でタンハーといいまして、渇きの極限状態で水を求めるような渇望、愛着を指しています。

 ブッダは輪廻転生を説くのですが、バラモン教(後のヒンドゥ教)やジャイナ教のように恒常不変の霊魂(アートマン)を説きません。すると、なにが輪廻するのだということになります。そこでブッダは無明(無智)や愛(激しい渇きのような愛着)といった条件によって人は輪廻すると説きました。それが縁起の教えです。

 縁起とは条件により生起するという意味です。 

①無明 煩悩の本となる無智
②行  身体、言葉、意識による行為
③識  認識作用
④名色 身体と心作用
⑤六処 眼、耳、鼻、舌、身、意の六つの能力
⑥触  接触
⑦受  苦、楽などの感受作用
⑧愛  激しい渇きのような愛着
⑨取  激しい欲望
⑩有  存在させる力
⑪生  生じさせる力
⑫老死 老死に向かわせる力

 無明を条件として行が生じ、行を条件として識が生じるというふうに、つぎつぎと条件が重なっていきます。もっともこれらは単独で直線的に存在するものではなく、繭のように生命存在を幾重にも覆っています。その中心が無明です。無明が無くならない限り、生死はなんどでも繰り返されるというのです。

漢訳:愛、渇愛
Skt.:tṛṣṇā pali:taṇhā
仏教語大辞典 中村元著 p14b.
The practical Sanskrit-English dictionary
http://dsal.uchicago.edu/dictionaries/apte/
The Pali Text Society’s Pali-English dictionary
http://dsal.uchicago.edu/dictionaries/pali/

仏教ネタはおもしろい! エンターテイメントな仏教アドベンチャーを目指します。 仏教学修士課程修了、日本印度学仏教学会所属

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