気分は文化人?“新宿ゴールデン街”で飲んでみた

  by プレヤード  Tags :  

新宿駅東口、歌舞伎町と二丁目の間に挟まれた“新宿ゴールデン街”。5~10人も入ればいっぱいになってしまうような小さな店が所狭しと並び、店内では作家やジャーナリスト、演劇人など、いわゆる“文化人”が集い、激論を交わす、そんなイメージの場所だが、実際に行ったことのある方は少ないのではないだろうか?

今回、その“ゴールデン街”に初めて飲みに行ったので、レポートしたい。
お邪魔したのは、花園一番街にある『無銘喫茶』。ここは“一日店長”という制度をとっており、毎日違った店長がそれぞれ趣向を凝らした店を開いている。今回、私の好きなアーティストの関係者が店長をするとのことで「同じ好みの人が集まるのなら行きやすいのでは?」と思い、出かけて行った。

ホームページに書いてあった案内を頼りに、花園神社の手前の角を曲がって直進、少し進むと左手に『あかるい花園一番街』というアーチがあり、そこをくぐる。目の前には、ぎっしりと詰め込まれたような店と看板の数々。時刻は20時少し前、節電をしているのかどうかわからないが、ネオンが灯ってはいるもののどこか薄暗い。とはいえ、それがまた実にいい味を醸し出している。

少したじろぎながらも、店の前で知り合いと合流。黒い、固く閉ざされた扉をあけると、既にほぼ満席の状態。しばらくは立ち飲みすることとした。
ちなみに料金システムを説明しておくと、いわゆる「チャージ料」を設定している店がほとんどで、それプラス飲み物やおつまみの費用が加算されていく。
『無銘喫茶』は、店長によって料金体系が変わるのだが、私が行った日は\2,980で2.5時間飲み放題(チャージ料込み)と良心的なもの。モツ煮やらっきょう、サバ缶などのおつまみは数百円程度で供される。

そして肝心な店の雰囲気だが、一言で言うと“カオス”に尽きる。
音楽関係者が店長ということで、当然最初のうちはその手の話から始まったのだが、いつしかそれぞれの仕事の話や人には言えないような思い、悩みなどにも広がっていく。年齢も職業もばらばらの人たちが、狭い空間にいるというだけで不思議な一体感があり、ついつい饒舌になってしまった。

人数的にもお互いの距離的にも、誰かが話しているのを他のみんなが聞き、意見を言い合うようなスタイル。2~3人だけがかたまって、それぞれの話をするというようなことはまずない。そして、ゴールデン街という土地柄のせいか、みんな一筋縄ではいかない。同じ会社の人や学生時代の友人とはまた違った繋がりを感じた。
考えてみれば、会社にしても学校にしても、ある程度趣味や年代が近い人が集まっているし、その中でも自分と共通する部分が多い人と仲良くなるのは当然のことだろう。しかし、そこの中だけの繋がりは、どうしてもあまり広くない世界でクローズしてしまう。今回、ゴールデン街でご一緒した方々の話を聞いて、正直、ちょっと人生観の変わる思いだった。

これも長い時間をかけて培われてきたシステムと、その街の持つ土地の力のようなものによって生み出されているのではないかと思う。
正直、ゴールデン街の店は総じて古く、汚い。しかし、その汚さがあるからこそ、新宿という街は活気にあふれ、人間の営みを感じさせるのではないだろうか。
例えば、お台場や東京近郊のニュータウンが、きれいに作られてはいるものの、どこか生活のにおいを感じられないのは、汚い部分が見えないせいだと思う。人間、生きていればきれいな部分も汚い部分も出てくる、それの一方だけを隠してしまえば、どこかに歪みが生じていくものだ。

飲み始めて一時間半も経った頃だろうか。店の扉を開けて、老紳士が2人顔を出した。「○○ちゃんいる?」そう尋ねた紳士に、店長は答えた「先代ですか?もう引退しちゃったんですよ」。どうやら昔のこの店の常連だった方らしい。「そうか、引退しちゃったのか。40年ぶりに来てみたんだけどな」こともなげにそう言って二人は去っていった。我々にしてみれば“40年!?”である。40年経ってもなお、その店が残っていてその頃のマスターがいて常連がいて、そんなことを思わせるような力がこの街にはあるんだろう。
店にいた私たちは、「40年後の自分はどうなっているんだろうね」とか、「40年後またここで飲めたらいいね」とかそんな話をしながら、結局夜が明けるまで語り続けた。

アイドル&美少女系ライター。 アイドルファン歴ももう30年。新旧問わずアイドルの魅力や素晴らしさを伝えていければと思っています。 モットーは「生涯一アイドルヲタ」「人生で大切なことはアイドルから学んだ」。 夢は、世の中の「アイドル」と呼ばれる人たち全てが幸せになることです。

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