杉浦茂が描いた『モヒカン族の最後』の英語版が4月30日に発売

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19世紀アメリカの小説家、ジェイムズ・フェモニア・クーパー(1789 – 1851)の著書で1826年に初版が刊行された『モヒカン族の最後』はこれまでに何度も映画化されており、ビル・クリントン元大統領の愛読書としても知られています。本作は1953年に集英社『おもしろ漫画文庫』の1点として戦中戦後の漫画界をリードして来た立役者の1人である杉浦茂(1908 – 2000)により漫画化されていますが、この杉浦版『モヒカン族の最後』が英訳されてニューヨークに本社を置くPictureBox社の“10セントマンガ”レーベルより4月30日に発売されることになりました。

この『モヒカン族の最後』は杉浦が集英社を拠点に代表作『猿飛佐助』や『弾丸トミー』など冒険活劇や西部劇を精力的に描いていた時期に発表されたタイトルで、多くの人が杉浦の名前を聞いて思い浮かべる「丸顔でドングリ目」のキャラクターと劇画調で写実的なキャラクターが同じコマに混在している点が大きな特徴です。また、シリアスなストーリーに合わせて杉浦が得意としていたシュールギャグが控えめになっているアクションシーンは高いデッサン力を感じさせ、それまで「低年齢層の娯楽」とみなされていた漫画から幅広い年齢層を対象にした劇画へとジャンルが拡大して行く過程を感じさせる点でも興味深く読める内容となっています。

本書のレーベル名“10セントマンガ”は戦後の貸本が1冊10円を相場としていたことに由来しますが、本書の価格は10セントでなく22ドル95セント(4月11日現在の為替相場換算で約2280円)となっています。同レーベルでは本作以降のラインナップとして、今年の秋に手塚治虫(1928 – 1989)の『地底国の怪人』を刊行する予定が発表されていますが、同作はドイツのSF作家ベルンハルト・ケラーマン(1879 – 1951)の代表作で1933年に発表された『トンネル』に強い影響を受けていると手塚自身が生前にインタビューで回答していました。PictureBox社では『モヒカン族の最後』や『地底国の怪人』の他にも、アメリカやヨーロッパで発表された作品を原作ないしそれらにインスパイアされた日本の漫画作品を今後も紹介して行きたいとしています。

なお、小説『モヒカン族の最後』が余りにも有名になりすぎたせいで「アメリカ・インディアンのモヒカン族(「マヒカン族」とも)は19世紀に絶滅してしまった」と言う誤解が現在に至るまで日本はもとよりアメリカ国内でも広まり続けていますが、モヒカン族が絶滅した事実はなく現在もウィスコンシン州やニューヨーク州郊外の居留地を中心に数千人が暮らしているそうです。

画像:PictureBox社公式サイトの作品紹介より

1975年、兵庫県姫路市生まれ。商工組合事務局勤務を経て2012年よりウェブライター活動を開始。興味のある分野は主にエンターテインメント、アーカイビング、知的財産関係。プライベートでは在野の立場で細々と文学研究を行っている。

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