完全試合はやってくるものではなく、起こるもの-A.J.ピアジンスキーの言葉

  by 香椎みるめ  Tags :  

完全試合達成まであと一人だった投手のロッカーへ向かう。その足取りはゆっくり。なんとも言えない表情で思わず天を仰ぐ。「マジか…」と言いたげな表情。投手の姿を見かけると、肩を軽く叩き、わずかばかりの言葉を交わした。「残念だったな」。

以上のやり取りはMLBテキサス・レンジャーズのオフィシャルサイトで明かされているものである。主体は新加入のベテラン捕手のA.J.ピアジンスキー。ダルビッシュ有と公式戦で初めてコンビを組んだピアジンスキーは「俺、アイツ、皆が望んだ結果(27人目の打者に初安打を許す)ではなかった。日本の人たちもそうだと思う」と答えている。

試合後のクラブハウスは、いつもと変わらなかったそうだ。音楽が鳴り響き、選手のおしゃべりも花が咲き、典型的な勝利後の良い雰囲気。ヒューストン・アストロズに7対0で快勝し、今シーズン初勝利を挙げたレンジャーズ。ダルビッシュは自己最多の14奪三振を奪い、エルビス・アンドラスは三塁打を2本放ち、ランス・バークマンは猛打賞をマークした。

「誰もが完全試合を達成すると思っていたはずだ」と語るピアジンスキー。ミニッツ・メイド・パークの客入りは22,673人と収容人数の半分ほどだったが、アウェーチームの一方的な終盤でも多くのファンが残っていた。憎たらしいほどの投球を続けるダルビッシュへのブーイングをかき消すほどの大歓声。しかし、27人目の打者であるマーウィン・ゴンザレスに投じた初球は、ダルビッシュの脚の間を抜けてセンター前へ転がってしまった。

数多くの球種で圧巻の奪三振ショーを披露したダルビッシュだったが、三振数の多さは球数の多さ(111球)にも繋がった。ロン・ワシントン監督は、ランナーを一人出した直後にマウンドへ向かった。投手のスタンディングオベーションを受けさせるだけでなく、長いシーズンも考慮したに違いない。実際、終盤は背中や指が万全ではなかったようだ。

2007年にノーヒット・ノーラン、昨年には完全試合達成を女房役として支えたピアジンスキーは最後にこう述べた。「打線爆発(12安打7得点)で2安打完封。喜んで家に帰った奴もいるだろう。だが、俺にとっては“ほろ苦い”結果だ。完全試合はワールドシリーズを制するのとは別物。やってくるものじゃない、一夜限りで起こるものなのさ」。

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香椎みるめ: フリーのライター、英日翻訳者、校閲者の三刀流。平成生まれ。性別は秘密。ウェブマガジン「GIGAMEN」で10年、計1890本以上の記事を執筆。サッカーの観戦記から始まった物書き屋は、「Yahoo!ニュース」や「ガジェット通信」に掲載された経験も活かしつつ、今は日本市場へ参入する海外企業の皆さんとタッグを組みながら、ありとあらゆる「文字を書くお仕事」をこなす日々。

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